活字鋳造を残したい 平成生まれが「活字」を産み出す「自動活字鋳造機」に心奪われたいまだからこそ(1/2 ページ)

新宿の佐々木活字店で“鋳造見学”してきた!

» 2014年11月03日 13時20分 公開
[與座ひかる,ねとらぼ]

 突然ですが皆さんは「活字」と聞いて何を思い出しますか? 平成生まれ幼少期ガラケーピポパポ世代の私は、「若者の活字離れ」「活字を読む」など文章一般のことだと認識しておりました。それも間違いではないのですが、「ん? 違うよ!」「活版印刷の時組むアレのことでは?」とお気づきの方、その通りです。

活版印刷

 上の写真が「活字」。初めて見た時に「わ! お正月スタンプだぁ」と思ったゆとり世代をお許しください。知らない同胞のために説明いたしますと、かつて「活版印刷」という印刷方法が主流だった時代、世の中の印刷物のほとんどは1文字1文字作られたこの「活字」を並べて(組んで)、インクをつけて、紙に刷って印刷されていました。う……ウソだと思うでしょ……本当なんだよ……。

 時代が進むごとに見かけることが少なくなった活版印刷、そして「活字」。その活字を作り続けているお店が東京・新宿にあります。大正6年創業の「佐々木活字店」です。

いざ! 鋳造見学会へ

 月に一度「鋳造見学会」を開催しているという佐々木活字店さん。活字について学んだところで、「じゃあ新聞とかだと何千個使ってたの!?」「それを1文字1文字つくるってどういうこと!?」という疑問が湧きに湧いたので、実際に見学会へ参加してきました。

活版印刷 早稲田駅と神楽坂駅の間にあります

 この日の見学者は5人。説明してくださるのは佐々木活字店の佐々木勝之さんです。何やら棚が立ち並ぶ1階から、鋳造工場のある2階へと案内されます。ステキな雰囲気にすでにワクワクが止まりません。

活版印刷 未体験ゾーン

「活字」が産まれる現場

 2階に到着すると、昔の映画のような光景が目の前に広がりました。

活版印刷 ぎゃーーーー!!(興奮)

 並んでいる機械は「自動活字鋳造機」と呼ばれる機械です。佐々木活字店では全部で12基所有しています、と佐々木さん。実際に機械を動かしていただき、活字が出来る仕組みを学びます。

昭和35年(1960年)から動き続ける「自動活字鋳造機」

 鋳造機の電源をいれて、活字作りスタート! カタンカタンとリズミカルな音が聞こえてきました。

活版印刷 18pt以上の文字を鋳造する通称「大台」。作る活字の大きさによって機械を使い分けます

 活字の原料となるのは鉛・すず・アンチモンの合金です。これが釜で溶かされ、「鋳型」と呼ばれる型に流しこまれます。

活版印刷活版印刷 左:これから溶かされる合金のみなさん、右:これが元の型となる「鋳型」です

 流し込まれた合金はすぐに固まり、活字の形となってぞろぞろ出て来ました。

活版印刷 「口」がたくさんでてきた!!!!

 溶けた合金の温度は350度。鋳造機の周りには熱気が立ちこめます。作る活字のサイズによって、流しこむ鉛の量が異なるため、より大きい活字は時間がかかるとのこと。「最近、ひらがな1文字1000本ずつ欲しいという発注を受けました。大きい活字だったので1日ずっと動かしても2文字しか終わらないんですよ(笑)。機械もびっくりしたのか、傷みが激しかった」と佐々木さん。

 鋳造機は昭和35年(1960年)製で、現在は生産終了。壊れてしまうと修理するエンジニアももういないため、日々のメンテナンスは欠かせないと説明してくれました。また、それでも壊れてしまった機械は、現状動く機械の部品交換用として保存しておくそうです。部品が壊れても、取り換え用の部品はもう販売されていないのです。

 鋳造機の他に、活字作りに欠かせないのは元の型となる母型ですが、母型を作る職人さんももういないとのこと。自店で持っている母型が消耗してしまったら、他の活字店へ注文し合うなど、活字店同士協力して作り続けているそうです。

活版印刷活版印刷 左:「花形活字」を作る母型、右:印刷するとこうなります。ステキ!!(写真は佐々木活字店 Facebookページより)

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2408/31/news036.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほどの変貌が379万表示「そこだけボッ!ってw」 半年後の現在について聞いた
  2. /nl/articles/2408/30/news121.jpg 「地獄絵図」「えぐすぎやろ……」 静岡・焼津市の地下歩道が冠水 “信じられない光景”にネットあぜん
  3. /nl/articles/2408/31/news073.jpg 「よくこんなものが……」 米不足でメルカリに米出品→疑問の声も 運営は“禁止出品物”に「然るべき対応」
  4. /nl/articles/2408/31/news025.jpg 次男に塩対応の柴犬、いよいよ次男の帰省最終日を迎え…… 本音が出た瞬間に「不意に泣かせるのやめて欲しい」と感動の声
  5. /nl/articles/2408/30/news017.jpg 最上位グレードのハイエースを“50万円の底値”で購入したら…… 驚きの実物に「ある意味最強」「正直、羨ましい」
  6. /nl/articles/2408/30/news188.jpg 実写「着せ恋」、キャストに物議 海夢の再現度が高すぎるタレントを推す声あがる 「逆になんであかせあかりさん以外の人……」
  7. /nl/articles/2408/29/news193.jpg 「なんで欲しいと思ったんですか?」 酔った勢いで購入 → 後日届いた“まさかの商品”に反響 「理性あったら買わないw」
  8. /nl/articles/2408/28/news142.jpg 明石家さんま、69歳バースデー迎え長男から幸せ呼ぶ“輝かしいプレゼント” 同席した元妻・大竹しのぶは「最高の笑顔でした」
  9. /nl/articles/2408/31/news084.jpg 仕事早いな! 大谷翔平の愛犬“デコピン”、大反響の始球式がさっそくTシャツ化 「こ、これは……」「欲しい!」と爆売れの予感
  10. /nl/articles/2408/30/news113.jpg 「これ600円なの?」 大谷翔平が長く愛用しているデコピンの“おやつ入れ”、始球式で注目「おそろだった」「真美子さんが選んだのかな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  2. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  3. 「苦手な芸能人は誰?」 あのちゃん、女性芸能人を“実名で即答” 「ここ最近で一番笑った」「強すぎる」
  4. ホテルでチェックアウト、忘れ物で多いのは? ホテル従業員が教える「圧倒的に多い忘れ物」
  5. 乳がん闘病中の梅宮アンナ、抗がん剤治療で「髪の毛ほとんどなくなっています」 帽子かぶり「ああ、来たか」
  6. 「キティちゃんのお面だと思ったら……」 ひっくり返すと“まさかの正体”に11万いいね
  7. 「凄すぎる…」「ガチで滝」 “市ケ谷駅の冠水”が衝撃与える 階段に大量の水が流れる様子も…… 東京メトロに経緯を取材
  8. 「早すぎます」「一体なにが」 52歳ボディービルダー、訃報1週間前に最期の投稿で“人生初の試み” 恋人は「亡くなる数時間前まで普通にお出かけも」
  9. お盆で帰省した次男に、柴犬も猫もまさかの反応→どちらも豹変して爆笑 「涙出てきました」「おもろ可愛過ぎ(笑)」
  10. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」