伝説の格ゲー「エアガイツ」の世界大会(17年ぶり2回目)が開催! 全国から猛者集結:1000人が見守った?(3/4 ページ)
「参加費ゼロ、参加者ゼロ」からのスタート
約1000人が中継を視聴するなど、大盛況で幕を閉じたエアガイツ第2次世界大会。長年日陰者として扱われてきたこのゲームが17年ぶりに注目を浴びた理由には、エアガイツを愛してやまない、あ〜る・滝さんの存在がある。現在ミカドで月1回のエアガイツ対戦会を主催している人物だ。なぜ対戦会を開催しようと思ったのか。エアガイツに対する異常なまでの情熱の理由と合わせて話を聞いた。
滝さんは、1998年に渋谷で初めてエアガイツに触れた。「新しいゲームは慣れるまでやってみる」という主義で、斬新なゲームシステムを取り入れたエアガイツをすぐに気に入ったという。しかし、鉄拳がブームになる一方で、エアガイツが日の目を見ることはなく、対戦相手がいないまま新宿や代々木のゲームセンターをふらふらとさまよっていた。
ここまでプレイヤーが少ないとゲーセンからエアガイツが消えるのも時間の問題だと察した滝さんは「何かあった時のために」とエアガイツの基板を購入。数万円はするものだが、滝さんは特にちゅうちょすることもなかった。
その後、自宅を中心にほそぼそとエアガイツをプレイしていた滝さんがミカドで対戦会を開こうと思ったきっかけは、主に2つある。
1つは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だ。毎日続いていた日常が脅かされる出来事が起き、「自分に残せるものは何だろう」と真剣に考えた結果、それはエアガイツだという結論になった。そして翌年の2012年3月、大阪で西のエアガイツ仮面がエアガイツの対戦会を開催したことを聞きつけ、自分も実際に行動を起こすことを決めた。しかし、対戦会での人集めは予想以上に難航することになる。
まず滝さんは、2012年頃から通い始めたミカドで対戦会を始めたいと思い、ミカドスタッフに相談。長年自宅の片隅で温めてきた基板を持ち込み、自腹を切ってエアガイツの筐体1セット(2台)を無料でプレイできるように設置してもらった。しかし、当時世間の人気を得られないまま人知れず姿を消していったタイトルだけあって、玄人客ぞろいのミカドですら誰もプレイしてくれない。若い人は、そもそもエアガイツを知らない人だっているだろう。時折立ち止まってくれる人はいたが、「あ、これFFのキャラクターが出てたやつじゃない?」「何でこんなマイナーなゲームがあるんだ?」などの声がむなしく響き、対戦台の前に座ってくれることはなかった。
しかも、当初の対戦会は満足に告知もデキておらず、無料プレイである旨も、どこにも記載されていない。何も知らない人が見ると当然無料プレイかどうかなど分からないし、ましてや今目の前で主催者による1人対戦会が開催されているとはつゆほども思わないだろう。案の定、初回の対戦会の相手はCPU(コンピューター)のみで、「参加費ゼロ、参加者ゼロ」からのスタートとなった。
しかし、滝さんの心は折れない。第2回の対戦会では、かつてエアガイツをプレイしていた古参プレイヤー2人が参戦。その後、東のエアガイツ仮面が彗星(すいせい)のごとく現れ、「これはすごいプレイヤーが来た」と衝撃を受けたという。めげずに月1ペースで続けた対戦会は徐々に規模を大きくし、3年を経て約20人にまでエアガイツァーが増加。新旧のプレイヤーが入り交じって親交を深めた。
その後、ミカドで30人以上が参加する大規模な大会が実施されたり、大会前には5セット(10台)の筐体が稼働したりと異例の事態が次々と巻き起こった。ここまでエアガイツが盛り上がっているのは全世界を見渡しても高田馬場だけだろう。
先述のように、筆者もこの対戦会でエアガイツに再会した“出戻り組”の1人。滝さん、東のエアガイツ仮面、悪のエアガイツ仮面(MOPさん)といった強豪プレイヤーに基本操作や立ち回りを教えてもらい、再びエアガイツの魅力に引き込まれていくこととなった。プレイ中感じた疑問についてその場で的確な答えをくれるだけでなく、自作した基本操作やコマンド方法をプリントアウトして参加者に配るなど、とにかくエアガイツを好きになってほしい一心でエアガイツァーたちが懇切丁寧に指導してくれるのだ。
自腹でフリープレイの対戦会を主催する思い切りのよさや、ダッシャー猪場というプロレスラーを操るということから、滝さんを「豪快な大男」とイメージする人がいるかもしれないが、実際は非常に腰が低く、温厚な性格の持ち主。第2次世界大会を実現させた功労者であるにもかかわらず、「あまり表舞台に出るのは好きではないので、東のエアガイツ仮面など、プレイヤーをフィーチャーしてほしい」と語る。そんな滝さんに対するエアガイツァーの信頼は厚い。大会当日に誰もが滝さんへ感謝の意を述べていたことからもその人望の厚さがうかがえた。今後の野望を聞くと、「今後もほそぼそと対戦会を続けていきますので、興味があればぜひ参加してください」とあくまで控えめだった。
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