漫画家の孤独とは? 伊藤黒介さんが2本の連載を終了する理由がチリチリと心にくる
「この仕事の先に展望がなくなりました。想像以上に漫画家というのは孤独な職業でありました」。
漫画家の伊藤黒介さんが自身のブログで「まんがライフオリジナル」(竹書房)で連載中の「ベルとふたりで」と、「まんがライフMOMO」(竹書房)で連載中の「イヴ愛してる」の4コマ漫画2作品を終了することを発表。漫画家やファンらが“漫画家の孤独”についてネットで話題にしていました。
「自分で決めました。理由はいろいろありますが、この仕事の先に展望がなくなりました。想像以上に漫画家というのは孤独な職業でありました」との伊藤さんの絞り出すような告白に「こんなに追い詰められてるなんて知りもしなかった」「我々読者がもっと支持(あるいは不支持あるいはそれ以外でも)の声を届けないとあかんのや、と痛感」と反応を寄せています。
伊藤さんは「普通の仕事であれば職場には仕事を指示する上司がいて、段取りを教えたり不手際を叱る先輩がいて、相談したり愚痴を言い合ったりする同僚などいたりするもの」だが、漫画家にはそういうものはなく、新人であってもデビューしてしまえばすべて1人で考えなくてはならず、「その孤独さへの準備ができていなかったし結局潰れたということ」と説明。一切他人と会うことがなくなるにつれて見識が広がらず、増えない知識量でひねり出すネタも枯れ果てたと連載終了の理由を明かしています。
これには、編集者が唯一の外との接点となってしまうことの弊害や、誰にも会わずに話さない日々が続くことによる漫画家の追い詰められていく精神状態に言及するコメントもありました。また、商業誌だけでなく同人活動であったり、イベントへ参加することによる読者からの反応がモチベーションを保つ術になっているとも。
読者がどう思っているのか、他人からの反応もなく相談相手もおらず、漫画がウケているのか、どこをいじればよくなるのかの見当もつかず、「一人で描いてはデータを送っているだけの独り相撲の状況を自覚したとたん、わーっと嫌になって、衝動的に全部ぶん投げたというのが実情です」と伊藤さんはつづっています。
「いまは仕事以前に、人間として他人と関わりたい」と伊藤さん。デビューしたら「漫画家なりの生活や交友関係が自然にできるものだと思って、漠然と描いてきたけどつくづく甘く見てました」「知識も経験も全く学べないこの環境にこれ以上いると、作家として人としてますます取り返しがつかなくなってしまうという恐怖感もあった」と自身の現状を鑑みて、「ちゃんと自分で縁を探さなきゃいけなかった」と分析しています。
「漫画家をやるために環境を整える時間というものをとる」ことにした伊藤さんは今後、そうしたことを再構築することに注力するとしています。「漫画家というのを舐めてたので、今度はちゃんと準備する。それでダメならそれまででしょう」(伊藤さん)
「イヴ愛してる」は10月発売号で、「ベルとふたりで」は11月発売号で最終回を迎えます。
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