「猫付きマンション」はなぜ生まれたのか 新しい猫保護の形を探る1冊「猫を助ける仕事」ねとらぼレビュー

不動産ビジネスにまで踏み込んだ、猫保護の新しい形とは。

» 2015年12月01日 10時00分 公開
[姫野ケイねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 NPO法人東京キャットガーディアン(TCG)の代表、山本葉子氏と、ニッセイ基礎研究所不動産研究部長の松村徹氏による共著「猫を助ける仕事 保護猫カフェ、猫付きシェアハウス」(光文社新書)が11月17日に上梓されました。


画像 「猫を助ける仕事 保護猫カフェ、猫付きシェアハウス」光文社新書/780円(税別)


「猫付きマンション」という新しい試み

 TCGとは、東京を中心に活動する、猫の保護や譲渡活動を行う動物愛護団体。常時100匹以上の猫を保護しており、大塚と府中市西国分寺にある開放型シェルターでは、保護猫カフェとして実際に猫たちと触れ合うこともできます(関連記事)。面談を受ければ保護猫の里親になることも可能。実は筆者が今飼っている猫もTCGから譲り受けた子です。

 また最近では「猫付きマンション」や「猫付きシェアハウス」などの不動産ビジネスも運営しており(関連記事)、そのユニークな取り組みでメディアへの露出も増えてきています。本書はこうしたTCGの活動について、代表自らが解説した1冊となっています。

 「猫付きマンション」とは、猫飼育可の物件に、TCGで保護されている成猫を貸し出し、その猫と一緒に生活できるというもの。猫は貸し出し制なので、物件解約時に返却するのが基本ですが、飼い主が気に入った場合は正式に引き取ることも可能です。というか、実は今まで猫が返却された例はなく、どの猫も貸し出しが継続されたり、正式に引き取られたりと、幸せに暮らしているそうです。

 「猫付きシェアハウス」はそのシェアハウス版で、やはり猫飼育可物件で、シェアハウスのメンバーとともにTCGの成猫と生活をします。子猫と比べ、成猫は引き取られにくいため、成猫もおうちの子になってもらいたいという、山本氏の狙いなのだとか。成猫は子猫に比べて体調が安定しており、またシェアハウスならば世話をみんなで協力しながらできるというのも、猫飼い初心者には心強いようです。猫付きマンションや猫付きシェアハウスは日本では初の試みですが、現在、常に満室という人気ぶりです。



ペットと不動産は切っても切れない関係

 猫の保護活動・譲渡活動を行っている団体は他にもありますが、TCGのように不動産事業にまで踏み込んでいる保護団体は他に聞いたことがありません。本書内に掲載されている、一般社団法人ペットフード協会「犬猫飼育率全国調査(平成26年)」の調査結果によると、ペットを飼えない理由の1位は「集合住宅に住んでいて禁止されているから」であり、ペットと不動産の関係は切っても切れません。

 ただでさえペット飼育可物件が少ないのに、犬はOKだけど猫はダメという物件も多いです。それは、大家さんが猫の習性や飼育に関して誤解をしている点にあるそうです。猫飼育NGの理由として、猫は壁やふすまを爪でボロボロにすることや、トイレが臭うことなどが挙げられますが、壁紙やふすまは取り替えればすむため、猫を飼う際は修繕費を多くとればいいですし、猫のトイレには、消臭効果のある猫砂を使い、こまめに掃除や換気をすれば臭うことはありません。それに、元来猫はきれい好きで、決められた場所以外でトイレをしません。このように、いくらでも対策はあるのに大家さんがそれを知らず、猫の飼育を不可としているのだと山本氏は述べています。

 猫の保護活動だけでなく、猫を助けることにつながる不動産ビジネスにまで踏み込んだ内容の書籍は珍しいのではないでしょうか。また、マイナビニュースで漫画「猫にありがちなこと」を連載中の猫マンガ家のうだまさんによる挿絵や、写真家の桐島ナオさんが撮影した、TCGで暮らすかわいらしい猫たちの写真にも思わず頬がゆるみます。今まで以上に猫に愛情を注ぎたくなる、そんな1冊です。


画像

画像

画像


姫野ケイ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/10/news163.jpg 「えーー」「衝撃!」「食べれるんですか!?」 大沢たかお、“まさかの食事風景”にファンびっくり 「明日は雪かな」
  2. /nl/articles/2412/09/news077.jpg 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. /nl/articles/2412/09/news063.jpg 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  4. /nl/articles/2412/11/news042.jpg 「脳がバグるw」 妹の結婚式で乾杯音頭をとる兄、二度見必至の“完璧な正装”に「なんでやねんwww」「良いお兄さん」
  5. /nl/articles/2412/11/news006.jpg 毛糸でポコポコ模様を編んでいくと……「私史上いちばん可愛い!」完成品に称賛の声殺到! センス爆発のおしゃれアイテムが「目を奪われました」と話題
  6. /nl/articles/2412/11/news133.jpg ゴミ収集所をあさっていた保護猫、今でもギュウギュウだった首輪の跡が残り…… やす子が溺愛する猫の“衝撃のご褒美”に反響
  7. /nl/articles/2412/11/news074.jpg 「最新のガンダムです」→円熟味あふれるガンプラの登場に笑い 「ある意味うそは言ってないw」
  8. /nl/articles/2412/11/news014.jpg 初心者「ぶどうは紫で丸いっぱい描いとけば完成でしょ!」→“絵の先生”がちゃんと描いたら…… “段違いのクオリティー”になるコツが目からウロコ
  9. /nl/articles/2412/11/news012.jpg 「破格ですね!」 セカストで9900円→即買いした“メーカー不明品”に「超掘り出し物……!」と驚きの声
  10. /nl/articles/2412/10/news042.jpg えっ、これのどこが……? 「オシャレに見せかけたオタク部屋」の写真が「理想」「住みたい」と喝采浴びる 投稿者に話を聞いた
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」