「戦利品の忘れ物にお気をつけを」 コミケ向けアナウンスが話題の都営バス運転手、その謎に迫る
都営バスがコミケで運行している会場直行便――ここには参加者向けのアナウンスが秀逸だと名物化している運転手がいた。
「お客様――このバスにより多くの方に乗っていただくためにも、コミケカタログ1冊分だけでも良いのでお詰めください」
3日間で約55万人が参加するイベント「コミックマーケット」。会場までの数ある交通手段のうち、「車内アナウンスがおもしろすぎる」と一部参加者で名物になっている乗り物がある。コミケ開催日に東京都交通局の都営バスが運行している、会場の東京ビッグサイトと東京駅八重洲口間を直行する臨時バスだ。
このコミケ臨時便には数人、コミケに参加する乗客に向けてユニークな車内アナウンスを行う運転手がいるのだという。たまたま居合わせた乗客がおもしろがってアナウンスの内容をTwitterに投稿するようになったため、ここ2年ほどはコミケが開催されるたびにネットにまとめ記事がつくられるほどアナウンスの存在が定番化している。
行きのバスでは「神秘と欲望の逆三角形、東京ビッグサイトが近づいて参りました」、帰りは「これから東京駅という現実へ向けて出発いたします」。ほかにも「私も参加したかったです。有給が取れずこのような形での参加になりました!」「皆様、本日は心ぴょんぴょんできましたでしょうか?」などなど、見かけるアナウンスはくすりと笑える粋な一言ばかり。実際、バスが目的地に着くと運転手に対して拍手が起こることもあるそうだ。
ネットではこの運転手たちを、2013年ワールドカップで話題になった「DJポリス」をもじって「DJ都バス」と呼ぶ人もいる。しかし彼らの活動は都営バスが全体の方針のもと行なっているのか、運転手が独自のサービスとして行っているのか、実際に参加者向けアナウンスをするのは何人くらいなのか――「DJ都バス」の実態は不明なところが多い。
コミックマーケットで生まれる数々の交流のなか、このコミケ臨時バスにおける運転手と参加者の熱い空間は一体どのようにして作られてきたのか。ユニークな車内アナウンスを実施している運転手の1人、Nさん(42歳/男性)に直接話をうかがってきた。
Nさんは2007年4月から都営バスの運転手として勤務。2011年夏のコミケ(C80)で初めて臨時便の運転を務めた。以降も不定期に担当しており、今夏のC88でも1日だけ運行したという。
―― これまでコミケ参加者を意識してどのようなアナウンスをしてきましたか?
Nさん: 例えば出発の際は1台になるべく多くのお客様に乗ってもらいたいので、「コミケカタログ1冊分だけでもいいのでお詰めください」と案内したことがあります。それでももっと詰めて欲しい場合は「薄い本1冊分だけでも……!」と。
―― 薄い本(笑)
Nさん: ありがたいことにお客様も協力して詰めてくださいます。車内に笑い声が起こったときは、出発前からみなさんにリラックスしていただけているのかなぁとうれしくなりますね。
―― 帰りのアナウンスはまた違ったりするのでしょうか?
Nさん: 忘れ物の注意喚起で、「車内にうちわを忘れたりしないよう……あ、今回は冬コミでした」とわざとボケてみたり。「何よりも会場で手に入れたお品物……いわゆる戦利品をお忘れにならぬようお気をつけ下さい」は、よくみなさんドッと笑ってくださいますね。ほかに「いわゆる薄い本を忘れた場合は営業所にまで取りに来ていただくのですが、お引き渡しの際はお互い照れますのでくれぐれもご注意ください」と言ったりも。
―― バリエーションが豊富ですね。これだけ事情を知っているということはもともとコミケ参加者だったのでは。
Nさん: それが、臨時便を初めて運行したときはまったくコミケに詳しくなかったんです。一般参加もしたことなかったですし、本を買いに行く人たちはおろか“参加者”という呼び名すら知りませんでした。
―― えっ!? ではなぜこんなコミケに精通したアナウンスに。
Nさん: 初めて運行したC80は2011年の夏。東日本大震災後の自粛ムードが世間に漂っていました。被災者の気持ちを汲むことも大切にする一方、こういう時だからこそお祭りの場へ行くバス車内の雰囲気が少しでも明るくなればと、自分なりにあれこれ車内アナウンスに工夫を凝らしてみたんです。そこからより良いアナウンスができればと、どんどんコミケのことが知りたくなって。
―― 乗客へのエンターテイメント精神から始まったわけなんですね。
Nさん: はい。2012年冬(C83)にはとうとう一般参加してしまいました。
―― なんと……!
Nさん: 参加した次の日は普通に業務として臨時バスを運転して。「実は昨日初めてコミケに一般参加したのですが、右も左もわからぬところ、献血に並んでみたら4時間かかってしまいました」とアナウンスしたところ、お客様もどっと笑ってくださいました(笑) 照れくさい気持ちもあれば、お客さんの喜んでいる様子がうれしかったですね。
―― 距離が一気に縮まった瞬間ですね。実際、コミケに参加したり車内アナウンスをしたりして、参加者たちへの印象は変わりましたか?
Nさん: もともとエッセイなど文章を書くのが趣味だったので、ブースで創作物を売っているクリエイターたちの情熱に心が打たれました。自分もこうありたいなという尊敬の念といいますか。バスに乗られる参加者のみなさんも最初は得体が知れなくて不安も感じてはいたんです。フタを開けてみれば礼儀正しい人ばかりで。
―― 礼儀正しい、と言いますと。
Nさん: 到着してバスを降りながら、満面の笑みで「ありがとうございました!」と言うお客さんが多いんです。こちらとしてはお客様からお金をいただいているので、お客様側にはお礼をいう義務は無いんです。なのに過剰なほどあいさつをされるところに、運んでくれたことについ感謝の言葉が出てしまうほどコミケに行きたい気持ちが強かったんだなと、熱い思いを感じてしまいます。その分、期待感を運んでいる感覚が濃く、お客様を安全・快適に輸送することへの責任にあらためて気付かされます。
―― コミケへの思いが乗客の態度に表れているんですね。
Nさん: あとはやはり、全員コミケ参加者だからこその一体感でしょうか。こちらの車内アナウンスに笑ったりと反応を返してくださるので、こちらも普段と違って交流を求めて話しかけてしまいます。
―― 反応というと、ネットでの反響もご存知なのでしょうか。
Nさん: はい(笑) おおむね温かい感想が多いのでありがたいです。ただし「眠りたいのにうるさい」といった厳しい意見もあるので、真摯に受け止めて次に生かしていこうと思っています。実際、最初でお客様に話しかけてみて反応が薄かったら、今回のお客様は疲れているかもしれないので黙って運転してみるなど、場の雰囲気に応じてアナウンスを変えるよう心がけています。
―― いろんな参加の形があるのがコミケですしね。今後も臨時バスに乗る機会があればどのような運転に努めたいですか?
Nさん: とにかくアナウンスに力を入れすぎて、お客様に運転を不安に思わせてはいけません。安全・快適に参加者たちを会場へ送り届けることを第一に運転しながら、みなさんとバス車内の時間を楽しめていけたら幸いです。
東京都交通局の広報担当によると、東京駅と東京ビッグサイト間の臨時直行バスは1996年から運行を開始した。現在は、1日ごとに都内の各営業所から運転手30人以上とバス30台以上を集め、100本以上の便を走らせている。
そのなかで“DJ都バス”は運転手がそれぞれ独自に始めたサービスで、その存在は交通局でも知る人ぞ知るといったところ。いつごろから何人の運転手が実施しているか、具体的なことは分からない。Nさんが人づてに聞いた話だと、帰りがけに「また夏/冬に会いましょう」と語りかけるくらいのアナウンスは10年ほど前には存在していたらしく、コミケ参加者との交流の歴史は意外にも長そうだ。現在も参加者を意識したアナウンスをするのは、少なくとも3、4人はいるのではとNさんは推測していた。
業務の都合上、1日ごとに運転手らの顔ぶれは異なり、3日間でDJ都バスらしき人が1便も運転しない可能性もある。話題の名物アナウンスを狙って乗るのはなかなか難しく、あくまでコミケへ行く途中で遭遇したらラッキーに思うくらいがちょうどいいだろう。
2015年12月29日からまた有明でコミックマーケットが始まる。多くの参加者が期待を胸に会場へ向かい思い出とともに家路に着くなか、今回もまた都営バスではユニークなアナウンスと笑い声が響いているかもしれない。
(黒木貴啓)
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