試験管やビーカーでお酒を飲んで、アルコールランプでイカをあぶる理系バー「INCUBATOR」に行ってきた

リトマス紙でお酒のpHも調べられます。

» 2016年01月18日 09時00分 公開
[朝井麻由美ねとらぼ]

 文系の私にとって、理系科目はいつだっていけ好かない存在だった。マイナス×マイナスのせいで、モルのせいで、サインコサインタンジェントのせいで、恨みつらみを挙げればキリがない。けれど、私ももう良い大人である。そろそろ理系科目と和解したい。

 そこで、東京・四谷にある「INCUBATOR(科学を楽しむサイエンスBar)」に単身乗り込むことにした。「理系バー」とも呼ばれるこの店は、お皿はシャーレ、グラスはビーカー、アルコールランプでおつまみのイカなどをあぶって食べる仕組みになっている。2年前のオープン以来、理系のお客さん以上に、文系のお客さんに親しまれているのだという。この店なら私も、理系のことを愛せるようになるはず。

 入口に飾られている理科の実験器具を横目に、店の中へ。棚には普通のグラスの中に、当たり前のような顔をしてビーカーが並んでいる。


画像 入口の近くに置かれている実験器具

画像 グラスやビーカーが並ぶ棚

 店の奥には理系関連の本や雑誌が置かれ、そのさらに奥には本格的な顕微鏡とプレパラートが。プレパラートはカエルの骨・筋肉、マウスの組織などが用意されており、顕微鏡で自由にのぞける。


画像画像 ソファ席には理系書籍。その奥にあるのは顕微鏡

 席に着いた。カウンターの前には試験管にシャーレなどの“食器類”が並び、よく見たら、おしぼりや紙ナプキンの入れ物までビーカーである。


画像画像 ビーカーにおしぼりや紙ナプキンが入っている

 カウンター席のすぐ後ろには白衣がかかっていた。これはなんと自由に着ていいとのこと。さっそく注文する前に白衣を着用してみた。さすが「理系バー」、これからお酒やおつまみを注文するとは到底思えない状況が整った。


画像 誰でも自由に着ていい白衣

 なお、呼びやすさから「理系バー」の通称のほうがネットを中心に広まってしまったが、この店がテーマにしているのは、あくまでも理系の中の一部である理学や自然科学などサイエンス分野。「“理系”だと、サイエンス以外の理系分野(工学など)も包括することになるため、店側では自称していません」と店長の野村卓史さんは言う。自身も元研究者である野村さんは、研究者現役だった当時「専門分野が異なる研究者の話を聞ける場を作ることと、サイエンス分野に興味を持たなかった人たちが研究者と交流しやすくなれば」とお店をオープンしたとのこと。


画像 店長の野村卓史さん

 さて、さっそくビーカーでお酒を飲みたい。まずは、生ビールの注文から。中ジョッキではなく、中ビーカーに入った生ビールが運ばれてきた。ご丁寧にも“中サイズ”のビーカーを使っているため、「生中」と頼んでもおそらく通じる。運ばれてきた“生中”は、確かに生ビールは生ビール、なのだが、なんだろう、そういうことじゃないんだよ、と言いたい気持ちでいっぱいになる。


画像 生ビール 中ビーカー(650円)


画像 お通しのイチジク。「遠沈管」に入っている

 次に、フリーズド・サングリアを頼んでみた。メニューには「凍結により細胞壁を破壊したフルーツを使用したサングリア」と記載されている。なるほど、分からん。


画像 フリーズド・サングリア(800円)


画像 いただきます

 少し飲んだところで、テーブルに何か置いてあることに気づいた。リトマス試験紙である。「ご自由にお使い下さい」と書いてある。これは……、注文したお酒が酸性かアルカリ性かを調べるために置いてあるのだろうか……。なぜお酒のpH(ペーハー)を調べなければならないのだろう、という気持ちを抑えつつ、リトマス紙をサングリアに浸してみる。酸性だった。


画像 なぜかリトマス紙が


画像 酸性だった

 次に頼んだのは、テキーラ。シャーレに塩とレモンが添えてある。こちらもせっかくなのでpHを調べてみよう。


画像 テキーラ(800円)

 酸性だった。


画像 酸性だった

 おつまみには「アルコールランプ炙りセット」を注文。スルメイカ、ほたて貝ひも、エイヒレ、をピンセットで掴み、アルコールランプで自分であぶるのだ。ピンセットとアルコールランプの視覚効果も手伝ってか、おいしいのかおいしくないのかよく分からない気持ちで黙々とあぶり続ける。


画像画像 「アルコールランプ炙りセット」(1200円)


画像 実験中に見えるかもしれませんが、食事中です

 そして、この店に来たら、必ず味わっておきたいのが「試験管 赤・白 8種飲みくらべ」。あの試験管を並べて立てる装置(?)に注がれた8種類のワインを少しずつ楽しめるのだ。


画像 「試験管 赤・白 8種飲みくらべ」(1800円)。赤のみ、白のみの4種飲みくらべもある


画像


画像 試験管から小さなビーカーにワインを注いで飲む

 いよいよ食事をしているのか実験しているのか分からなくなってきたが、口に含んだり、たまにリトマス紙をワインに浸してみたりして、飲みくらべる。


画像 今回飲んだお酒類


画像 細胞を採取してドーパミンとセロトニンの量を調べてくれる「遺伝子占い」(2000円)もやっている

 理系バーで食べるものや飲むものがおいしいかどうかと聞かれたら、即答はできないのが正直なところだ。人が視覚的に「おいしい」と思う部分をすべて取り去って、ビーカーなどの理系器具を使用しているのがこの店だからである。だが、慣れ親しんだ食べ物や飲み物と、理系の実験器具を用いて触れ合う体験は、いけ好かなかった理系科目を少し、赦(ゆる)せたのだった。

朝井麻由美(@moyomoyomoyo)。フリーライター・編集者・コラムニスト。ジャンルは、女子カルチャー/サブカルチャーなど。ROLa、日刊サイゾー、マイナビ、COLOR、ぐるなび、等コラム連載多数。一風変わったスポットに潜入&体験する体当たり取材が得意。近著に『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。構成書籍に『女子校ルール』(中経出版)。ゲーム音楽と人狼とコスプレが好き。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”
  2. 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  3. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  4. 「なぜ今になって……」 TikTokで“15年前”の曲が大流行 すでに解散の人気バンド…… ファン驚き 「戸惑いが隠せない」
  5. どういう意味……? 高橋一生&飯豊まりえの結婚発表文、“まさかのタイトル”に「ジワる」「笑ってしまう」
  6. サーティワンが“よくばりフェス”の「カップの品切れ」謝罪…… 連日大人気で「予想を大幅に上回る販売」
  7. “世界一美しいザリガニ”を入手→開封して見ると…… 絶句を避けられない姿と異変に「びっくり」「草間彌生作のザリガニみたい」
  8. 「誰かと思った」 楽天・田中将大の“激変した風貌”にファン驚き…… 「一瞬わからなかった」
  9. 複数逮捕&服役の小向美奈子、“クスリ”に手を出した理由が壮絶すぎ……交際相手の暴力で逃亡も命の危機 「バレてバルコニー伝って入られて」
  10. 耐火金庫に“溶岩”を垂らしてみたら…… “衝撃の結果”に実験者も思わず「なんだって!!!」と驚愕【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評