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» 2016年03月11日 10時00分 公開

「1999年が近づいてきてヤバいと思った」 伝説の漫画「MMR」を作った男たち タナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー(後編)(2/4 ページ)

[多根清史(インタビュー)・池谷勇人(構成),ねとらぼ]

1999年が近づいてきてヤバいと思った

イケダ ただ「X-ファイル」の事情も、僕らはよく分かるんですよ。やってるうちにだんだんインフレして、そこまで行かざるを得ない。はじめは大学で起きた事件とか小さい話を扱っていたのに「南極にUFO」になっちゃったんでしょうね。

―― その意味で、ブレーキをかけてくれるレジデント・オブ・サンはありがたいですね。

タナカ さすがにネタに詰まったときには「レジデント・オブ・サンのキャラを実際に出そうか」って話も出ましたね。アノニマス(仮面を被ったハッカー集団)みたいな感じで姿を現して、諸君! と呼びかける。でもそれじゃ仮面ライダーの悪の組織だろう、ということで却下になったんです。頭が飽和状態になるとそういう案に流れがちになりますね。

イケダ もう1つやりにくくなったのは、小さい話ができなくなっちゃった。あまりにもノストラダムスが受けちゃったから、地味な話をやると読者にそっぽを向かれてしまう。コンパクトにまとめられないし、飛躍にも限度があるし、その幅の中で作るのが厳しかったです。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー ノストラダムスが受けすぎたせいでハードルがあがってしまった側面も

―― 今さらミステリーサークルや金縛りを調べても、読者は満足しないですよね。

イケダ 雪男とかネッシーとか釧路湖のクッシー(恐竜)とかやっても、やはり難しいなと。「そこにクッシーがいるかいないか分からない」で終わると消化不良になっちゃうので。

―― ムー大陸は、あるかないか分からないことがロマンですもんね。

イケダ 本当は、昔話ものをやりたかったんですよ。日本の昔話に実は怖い謎があるとか、「かごめかごめ」の歌に恐ろしい意味が隠されているとか。でも、話を作っても地味になっちゃうんですね。あと財宝伝説をやろうと思ったんですが、ダメでしたね。結局のところ財宝を陰謀によるDNA操作につなげてしまって、ただの宝探しがなかなかできなくて。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー 最初はソロモン王の財宝を追っていたはずが……(3巻94、95ページ)

―― 後半はいくつもの理論や仮説を組み立てて、人類滅亡やノストラダムスにパスを繋ぐまでが大変そうでしたよね。

イケダ だから、打ち合わせも長くなっちゃったんですね。もっと地味なことで読者が満足してくれたなら、やりようはあったかもしれませんが。

―― ノストラダムスが人類滅亡を予告しているのが1999年だったので、そこがタイムリミットですよね。連載を続けるうち、どんどん近づいてくるのをどう感じました?

イケダ それはヤバいなと思いました(笑)。黙って時が過ぎるのを待つか、片を付けにいくか、すごい悩んだんですよ。キバヤシさんは「どっちでもいいよ」と話されていたんですが、カウントダウン連載にして、終わる形を選びました。そこでレジデント・オブ・サンを立てながら、最後のあの話にして。MMR解散の報を知った読者からのハガキに励まされて「人間の可能性は無限大なんだ」と前向きに終わる形にしたんです。でも、あのやり方が中途半端ゆえに終わってないって捉え方もできるので、こうして復活しやすかったのかもしれませんね。



予言が当たってしまった狂牛病のプリオン

―― お話を作るうえで、オカルト雑誌の「ムー」などは意識されてました?

タナカ 僕は学生のころ、読んでた時期がありましたね。ただ、漫画作りのときは参考にはしなかった。やっぱり、転載許可を取らなきゃいけなくなりますし。

イケダ 私は読んでました、好きだったので。ただ「MMR」の考え方はオリジナルにこだわりました。

―― やはりお話の原型を作られたのはキバヤシさんだった?

イケダ 私が入ったころは、キバヤシさんとタナカさんがやっていて。作り方としては、フィクションなので最後は大きな仮説を立てる。そこに至るまでになるべく本当のことを並べていくのが、仮説を面白くするコツであると。ただ、話が飛躍する段階では本当のことだけでは無理なので、いくつか小さな仮説を入れていく。その仮説を本物っぽくするために、リアルな情報も混ぜていく感じが多かったですね。

―― さっきの「時々、本物の写真を放り込む」ですよね。

イケダ 「ムー」の話が出ましたが、あっちの世界は昔から確立されていて、オカルト的な論理もある程度できあがってるんですね。それに乗っかると同じような話ができちゃうので、こちらはまったく違った論理を組み立てて行って、あえて違うようにしていましたね。「これこれこういう形で人類が滅亡する」という定石があるなら、もっと違った論理を寄せ集めて滅亡まで持って行ったり(笑)。

―― 詰将棋ですよね。それに「MMR」は最新の学説を取り入れてました。

タナカ 例えば「ネオテニー(幼形成熟)を人工的に起こしてネオ・ヒューマノイドを造り上げる」とか飛躍はするんですが(第8巻)、そこでウイルス進化説をそのまま漫画の中に生かしたんです。すると、学者の方から電話がかかってきまして。怒られるかなと思ったら、「ありがとうございます、私のウイルス進化論を取り上げてくれて」と感謝されましたね。

イケダ 今ではウイルス進化説って有力とされてますけど、昔はあまりメジャーじゃなかったんでしょうね。それを広めたことで、喜んでいただけたと。

―― 予言を連発している「MMR」ですが、実は当たったものもありますよね。

トマル 狂牛病(BSE)のプリオン(DNAを持たないのに感染する、特殊なタンパク質。第8巻)のときもそうでしたね。

イケダ まだ日本で報告例がなくて、イギリスではじめて発見されたぐらいのころでした。

―― 「MMR」のほうが先だったんですね(日本でBSEの疑いがある牛が発見されたのが2001年)。

イケダ 時期的には、狂牛病の原因がプリオンだと断定される前ですよね。「一部の学者がそう分析している」というタイミングで、タナカさんがネタを持ってきて。僕らはプリオンって言葉に熱中して、響きがいいねって。プリオンっていいな、面白いということで使ったら、その後に日本に入ってきたんですね。

―― 「MMR」が日本にプリオンの警鐘を鳴らしていたという。

イケダ それが本当かウソか分からない段階で引っ張ってきた情報がたくさんあるので、中には当たったものがあるんでしょうね。「電磁波で人間のDNAが破壊される」(第9巻)話のときも色々調べていくなかで、(電磁波は)危ない派と大丈夫派がいて、ネタにしてみました。当時、電磁波で医療機械が暴走するって話があって。その後、政府が公式に「医療機器やペースメーカーの近くで携帯電話を使わないように」と発表してました。そういう「少しだけ先を行く」は「MMR」ではすごく大事なんですね。


MMRタナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー いち早く「プリオン」の危険性を指摘していたMMR(8巻36ページ)


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