奈良県に金魚の入った電話ボックスがある! 誕生秘話を聞いてみた
ちゃんと生きている金魚です【追記】
奈良県大和郡山市「やなぎまち商店街」の一角には、金魚が入った電話ボックスがあるという。それはオブジェではなく、本物の金魚。電話ボックスの形をした水槽に、たくさんの金魚がゆらゆらと泳いでいるのだ。
場所は、ガソリンスタンドの跡地のよう。なぜここに金魚が? それも、電話ボックスの中に? そんな疑問が浮上してくる人も多いだろう。そこでさっそく調べてみると、敷地の奥にガソリンスタンドの事務所だったと見える建物がある。そこには「K COFFEE」の文字。あ、カフェだ。ということは、この水槽はカフェのものなのか? 話を伺ったのは「K COFFEE」オーナー・森和也さん。
森さんによると、電話ボックスの金魚水槽はカフェのものではなく、商店街に属しているものなんだとか。この元ガソリンスタンド跡地の建物以外の部分は地域の共有の場で、以前ここで地域活性のためのアートイベントが開催された。「電話ボックスの金魚水槽は、その時の展示品です。イベントが終了するころ、ボックスの保管や撤去をイベント担当者が検討していたのを知ったんですね。それで、同じ敷地内でコーヒー屋を開こうとしていた僕が金魚の世話をしてみようと思い、そのまま置いてもらいました」。
これだけの数の金魚の世話をしてみようなんて、なかなか度胸のいること。イベント展示の短期間管理とは違い、通年管理なのだから、かわいい、かわいいとエサをあげてるだけじゃないはずだ。そこで、さらに詳しく話を聞くと、森さんは当時を振り返り話してくれた。「最初はたいへんでしたね(笑)。イベント時はエサも少量だったし、時間も短かったので水も汚れなかったのですが、長く置けば、当たり前ですが日光で水槽の中に藻が発生し、毎日エサをあげれば糞で水が汚れる。だから、掃除。水槽の水を全部変えると、水質が突然変わり金魚が弱ってしまうため、半分だけ水を交換。しかし、すぐに水が濁ってしまってね。掃除をしてもすぐ濁る……の繰り返し。でも今は商店街が購入してくれたろ過器のおかげで、水が安定して透明になっています。濾過器の威力はすごいです。とても助かりました」。
やはり、生物の世話にはそれなりの苦労はつきものだったようだ。だが、掃除は、どんな風に行うのか? 尋ねたところ、まず金魚屋さんにトロ箱を借り、そこに水と金魚を移して、電話ボックスの中に入る。下に排水溝があるので、風呂掃除の時のようにゴシゴシと豪快に洗浄!
「洗いにくい箇所では手をひっかけたり、水槽内が臭かったり、冬場は寒かったりと、まぁ、最初のうちは労力を要しましたが、今は慣れました」と笑いながら話す森さん。
これだけ丹念に清掃しているとは、金魚もさぞかしうれしいはず。その甲斐あって金魚もなつき、エサはあげるときに上のフタを開けると、上の方に寄ってくるとか。
そんな電話ボックスの金魚水槽は、赤ちゃんを連れて毎日立ち寄る方などの地元の人々や、ツーリングなどの遠方からの人々にも徐々に人気を博し、やなぎまち商店街の日常に溶け込んでいる。見た人は、「金魚の街、郡山らしい」「電話でけへんのかい」「入れると思っていたわー」「もーきたななってるわ」とさまざまな感想を教えてくれるのだそう。
ところで、「K COFFEE」は、森さんの愛する豆で入れたコーヒーが自慢の店。しかし、森さんはもともとコーヒーを飲まない人だったそうだ。
「たまたま飲んだコーヒーが飲めて、コーヒー教室に行ってみたんです。徐々にコーヒーについて知るようになり、コーヒー単体で甘さがあるコーヒーに興味が湧きました。そこで店では、ほどよい酸味で飲んだ後に甘さが残る、そんなコーヒーが好きで、販売をしています」
特に店で焙煎した豆で作った「K COFFEEオリジナルのドリップバック」や、それと豆をセットにした商品は、自分使いにもプレゼントにも最適と喜ばれているそうだ。
電話ボックスで優雅に泳ぐ金魚を眺めながらコーヒーでホッとくつろぐ、――そんな至福のひとときを送れる場所が、やなぎまち商店街のこの一角。奈良県に行ったら、ぜひ立ち寄りたいスポットである。
【追記:2018年4月12日】
金魚電話ボックスは、福島県の現代美術作家の作品と似ているとの指摘を受け、商店街が撤去する方針を固めた。4月12日現在、金魚電話ボックスの水は抜かれた状態となっている。
【追記:2021年1月14日】
福島県の現代美術作家の男性が記事の金魚電話ボックスが自作の著作権侵害にあたるとして、奈良県の商店街側に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は1月14日、請求を棄却した一審・奈良地裁判決を変更し、商店街側に55万円の支払いを命じた。作家の逆転勝訴となる。
商店街側に損害賠償を求めたが奈良地裁は請求を棄却。現代美術作家の男性は大阪高裁に控訴していた。金魚電話ボックスは作家からの抗議を受け2018年に撤去されている。
(茂木宏美/LOCOMO&COMO)
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