焦げてる……!? やっちゃった感ある真っ黒なトーストが名物のカフェは、こだわりがこんがり焼き付いていた

真っ黒だけど、ちゃんと食べられます。

» 2016年02月06日 13時00分 公開

 昭和の面影を残す下町風情が魅力の谷根千エリア。外国人観光客も多く、ブームになってから時が経った今でもたくさんの人で賑わっています。そのひとつの千駄木は文化やアートの雰囲気が漂う街。そこに、真っ黒に焦げてしまったようなトーストが名物というカフェがあると聞き、足を運んでみました。

 千駄木駅から数分、不忍通り沿いにある「角ぱん専門店カフェ&マルシェルブ」。ここが“焦げトースト”を食べられるお店です。到着すると、ガラス張りの店頭には何やらトルソーらしきものが見えます。あれ、ブティックなの? 一瞬入るのをためらったが、ドアにも看板にも「カフェ」の文字が。いざ!


画像 カフェなのになぜか入口付近にトルソーが見える


画像 「角ぱん専門店」ってなんだろう?

 中へ入ると、品よくディズプレイされたトルソーが出迎えてくれました。そして、その後ろにはテーブル席が並び、カフェスペースが広がります。


画像 レンガの壁が異国情緒を醸し出す店内

 席について、少しキョロキョロ。辺りを見回すと黒板に“焦げトースト”の写真を発見! コレだコレだとワクワクしながら、「アレください」と指さすと、「何味がよろしいですか?」との返答が。意外な答えにポカンとしていたのか、店のマダムが「エスプレッソ、ほうじ茶、アールグレイの3種類があります」と説明してくれました。そうは言われても、正直どれがいいか分からないのでおオススメをお願いしました。


画像 やはり、名物なんだ! 「シナモントースト」というらしい

 出来上がるまでは店内を一周。入った時にチラッと見えた店の奥はブティックになっており、「マルシェルブ」という名前だとか。だから「角ぱん専門店カフェ&マルシェルブ」なんだと思いながら物色していると、なかなか上品なテイストの服や小物ばかり。下町といえど、千駄木は洗練された街でもあるようです。


画像 SALE開催中でした

 カフェに戻る途中のレジ横には、JAZZライブのチラシが。どうやら2月にN.Y.のコットンクラブ専属ピアニストがライブ演奏を繰り広げるらしいです。


画像 コットンクラブで活躍するサックス演奏者も登場するみたい

 そして、厨房の棚に目をやると、銀座にある老舗の喫茶店「カフェーパウリスタ」のカン。店先の黒板に「ジョン・レノンにも愛されたパウリスタのコーヒーとともに」とあったなと思い出し、尋ねるとビンゴでした。


画像 ここでは、人気商品「森のコーヒー」の豆でいれたコーヒーが飲めます。

 席に着くと、テーブルの上にビーカーが! よく見たら、アメリカのアンカーホッキンググラス社のメジャーグラスでした。温かみのある耐熱ガラス・ファイヤーキングが有名な会社ですね。このグラスといい、コーヒーといい、この店、なんだかこだわりがありそうです。


画像 小さめのサイズ感がちょうどいい

 そうこうしているうちに、シナモンの香りが鼻をくすぐり出し、目の前に例の“焦げトースト”が運ばれてきました! 本当に黒いぞ!


画像 やっちゃった……的な焦がし方に見えます。「シナモントースト 黒糖アールグレイ」は森のコーヒーとセットで1050円

 さて、どんな味なのでしょう? 興味は高まるばかりで、勢いよくガブリ。あれ? ちょっと甘い。でも、ほろ苦い。でも、う、う、うまいよー! このトーストはなんなんだ!? さっそく調査を開始しました。 

 「どうしてこんなに焦げてるのですか?」思わず率直に聞いてしまいましたが、「皆さん、そうおっしゃいますよ」と笑顔で答えてくれたマダム。「これは特製の黒糖とシナモン、そしてアールグレイの茶葉でできたパウダーを振りかけて焼いているんです」。すると厨房から「パウダーをお見せしますよ」とマスター。そこで、工程を見せてもらうことに。パウダーの段階では、茶色の粉末ですが、焼くとあの色! ほかの2種類の味、ほうじ茶とエスプレッソの場合もこうしたパウダーで、焼くとほぼ同じ色になるとか。味は、ほうじ茶バージョンは甘みが強めで、エスプレッソバージョンは苦味が強めだそうです。


画像 バターを塗ったパンにパウダーを振りかけます。調理はマスターが


画像 これでもか! というくらい、ふんだんにかけ終わりました


画像 そして、焼き上がると真っくろくろ!

 しかし、なぜこのようなメニューを考案したのか? 「ここは角ぱん専門店なので、このパンに合うようにメニューが作られているんですよ」と、マダムがその角ぱんを見せてくれました。


画像 トーストすることでおいしさが出るパンだそう

 原料は小麦ふすまや玄米、オリーブオイル、黒糖といった天然素材。白神こだま酵母を使用し、16〜20時間かけて熟成させているそうです。


画像 見た目でも素材がぎっしり詰まっているのが分かります

 持ってみると、ズッシリと重い。確かに、食べた時のモッチリ感が半端ないと思っていました。これだけギュッと素材が詰まったパンだと、その味が際立ってしまうのでは? と思う方も多いでしょう。しかし、この“焦げトースト”ならぬシナモントーストは、パンの味が黒糖&シナモン&アールグレイ茶葉のコクを引き立て、しっかりと苦みと甘みを口の中に行き渡らせるのです。まさにベストマッチ!

 ほかのメニューも気になります。マダムに問うと「どれも角ぱんと一緒に食べるとおいしいですが、とりわけオススメはビーフシチューですね」。もちろん、オーダー。角ぱんのバタートーストと野菜盛り合わせが、セットになっているぜいたくメニューです。では、いただきまーす。


画像 バタートーストだけでも一気に食べてしまいそう。和牛スネ肉がゴロッと入っています


画像 カラフルな季節野菜がズラリ。カラダにも見た目にも優しい一皿です

 ビーフシチューの甘みとバタートーストの塩気が絡んで、絶妙な味わい! 彩り豊かな蒸し野菜の中央に置かれたバジルソースをつけてもグッド!  ここでも、角ぱんは主張しすぎず、具材を引き立てていました。なんて素晴らしい縁の下の力持ちでしょうか。いい仕事してくれます。このほか、チーズやソーセージ、肉、野菜を使ったサンドやトーストなどの定番メニュー、そしてコーヒーとカフェオレも角ぱんと合わせてベストなものをセレクトしています。ずいぶん愛されたパンですが、それだけの価値はあるかもしれません。

 ちなみに角パンは、ココだけのオリジナルパン。通販は行っていないので、気さくなご夫妻が切り盛りするこの店でしか味わえません。“真っ黒になったトースト”もぜひ試していただきたい逸品ですが、さまざまなメニューで角パンの仕事ぶりを味わってみるのもオススメです。


画像 マダムと呼んでいた女性は店長(左)、そのご主人であるとマスター(右)

(茂木宏美/LOCOMO&COMO)

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