南極大陸のアデリーペンギンが2099年までに60パーセント減少の見通し  米デラウェア大学の研究チームが発表

衛星写真技術の向上などにより正確な調査が可能となりました。

» 2016年07月08日 09時00分 公開
[福田瑠千代ねとらぼ]

  米デラウェア大学の研究チームが、地球温暖化の影響により南極のアデリーペンギンの数が2060年までに約30パーセント減少し、2099年までに約60パーセント減少するとの見通しを発表しました。同研究をまとめた論文が英科学誌ネイチャーのWebサイトに公開されています。


 アデリーペンギンは南極大陸全域に生息していますが、現在特に減少数が顕著なのが南極大陸西部に位置する「南極半島」です。南極半島は現在、地球上で他に類を見ないほど温暖化が進行中。同論文では2099年までにかけて、「アデア岬」をはじめとする温暖化が比較的緩やかな場所がペンギンの減少を抑える「レフュジア(退避地)」として重要な役割を果たすだろうとしています。

 研究に参加した米ストーニーブルック大学のHeather J. Lynch助教授は、過去数十年の間にペンギンの生態研究が進歩を遂げた大きな理由として、衛星写真によってペンギンの生息の有無や、コロニー(生息地)の存在の有無が正確に把握できるようになったことを挙げています。同研究チームはNASAのBiodiversity programから出資を受け、衛星写真に加え、1981年から2010年の海面温度、海氷や岩肌の位置情報を元にした全球気候モデル(流体力学・物理学・生物学などの方程式を用いておおまかな気象現象を再現したモデル)を組み合わせて、将来の南極大陸におけるアデリーペンギンの数を算出しました。

 ペンギンのコロニーは寒冷化が進みすぎた場合にも失われてしまうため、かつて温暖化で氷河が溶けたのはペンギンたちにとってむしろ好都合だったとする説があります。しかし同論文では温暖化がペンギンたちに悪影響を及ぼすまでに進行してしまっていると指摘。論文の筆頭筆者であるMegan Cimino博士は同研究の意義について、「こうした研究に価値があるのは、環境変化に対して生物が最も対応困難な地域に着目しているためです。ここで得られた成果は同環境下にいる他の生物にだけでなく、他の地域の生態系のあり方について考える上でも参考となるのです」としています。

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