「2020年には世界で最も多くのオリジナルコンテンツを手掛ける制作者に」 Netflixの最高コンテンツ責任者、野望を語る

「品質」と「編成力」を重視しているとNetflix。

» 2016年08月18日 11時00分 公開
[西尾泰三ねとらぼ]

 2015年9月に日本でサービスインし、ストリーミングサービスの認知度を一気に引き上げたNetflix。「テラスハウス」の新シーズンや、芥川賞受賞作「火花」のドラマなど日本オリジナルのコンテンツも用意するなど、コンテンツ制作の視点でも注目すべきプレーヤーとなりつつあります。

 Netflix躍進の秘密はどこにあるのでしょうか。NetflixでCCO(最高コンテンツ責任者)を務めるテッド・サランドスに疑問をぶつけてみました。

Netflixのテッド・サランドスCCO Netflixのテッド・サランドスCCO。6月末にはサランドス氏のほかNetflixの経営幹部が来日

「従来のテレビで期待されている内容より、大規模に、またよいものを」

―― 最近のNetflixに向けられる興味は、サービスからコンテンツに移っているように感じます。日本だと、先日Netflixが独占配信した「火花」が象徴的ですが、サービスインしている国々のオリジナルコンテンツを制作し、それをグローバルで配信するアプローチを見せるプレーヤーは例えばHuluやAmazonプライム・ビデオ(Amazon.com)が挙げられますが、差別化のポイントは?

テッド Netflixが重視している「品質」と「編成力」で差別化できていると思う。

 他の事業者のオリジナルコンテンツというと、従来のテレビで見られるような内容が多いように感じる。われわれは、従来のテレビで期待されている内容より、さらに大規模に、またよいものを作り上げることを志している。「火花」も各方面から高い評価を頂き、制作にも手応えを感じている。

Netflixオリジナルドラマ「火花」キャスト陣 「火花」キャスト陣。左から好井まさおさん(山下役)、林遣都さん(徳永役)、波岡一喜さん(神谷役)、村田秀亮さん(大林役)

―― ストリーミングサービスが人気ですが、従来のテレビ放送からトレンドが変化していると感じる?

テッド 一過性のトレンドではなく、完全に構造が変わったように思う。それによって消費者も、いつでもどこでもどのような形でも、見たいコンテンツを楽しめる。もう以前には戻れない状況ではないか。

 これはよいことだと思うし、従来のテレビ放送も今後、オンラインでコンテンツを提供するようになるだろう。この流れに至るまでは、想像されていたよりも少し長く掛かったかなと思う。

より複雑な工程を追加するのではなく、極力複雑さを省く

―― 「火花」が芥川賞を受賞したのは2015年7月で、Netflixでオリジナルドラマの配信が始まったのは2016年6月、決定から制作を経て世界同時配信するまで1年掛かっていません。このスピードを可能にしているNetflixの制作体制に興味があります。

テッド 私の視点で行っていることで言えば、「より複雑な工程を追加するのではなく、極力複雑さを省く」ことに努めている。Netflixでは何百人もの言語スペシャリストを雇っていて、翻訳も方言などのニュアンスまで含め正確に対応できる。「火花」もそうだが、全話を一挙配信していることから分かるよう、毎週毎週限られた時間で慌てて制作する従来のテレビのコンテンツと比べると、(制作)時間はあるものだ。

―― クオリティーを保ちながらそのスピードで制作できるんですね。ところで、「シドニアの騎士」「亜人」「BLAME!」など、厳選した日本のアニメをグローバルで独占配信しているのも興味深いです。最近だと、Netflixがハリウッド版「デスノート」の制作を発表すれば、Huluも最新映画につながるオリジナルドラマ3作の配信を発表するなどしていますが、日本のアニメはグローバルでどんなニーズがあると見ている?

テッド アニメは日本以外にも大きな需要がある。われわれが考えるのは「最高のものを提供したい」ということに尽きる。現在も複数のスタジオと制作が進行しており、多くの方に楽しんでいただけるものが提供できるだろう。

―― そもそもNetflixは自前の制作スタジオなどを持っている? それともパートナーと?

テッド 両方ある。Netflixが物理的なスタジオを所有しているわけではないが、スタジオ部門はあって、スタジオをレンタルして制作することもあれば、パートナーとともに制作することもある。

マイク・コルターウゾ・アドゥーバ、ルビー・ローズ 「Marvel ルーク・ケイジ」のマイク・コルターや「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」のウゾ・アドゥーバ、ルビー・ローズなどキャスト陣も来日し、存在感を見せつけた

メジャータイトルとオリジナルコンテンツのバランスは?

―― 少し別視点から。NetflixとMarvelとの共同製作ドラマは「デアデビル」「ジェシカ・ジョーンズ」ときて、9月30日には第3弾となる「ルーク・ケイジ」の世界同時配信も始まります。また9月以降、米国ではディズニーやピクサーの最新映画を独占配信していく計画もお持ちですよね。メジャータイトルとオリジナルコンテンツのバランスはどう見ていますか?

テッド オリジナルコンテンツも、トータルの編成も成長していくということ。その中で、スタジオや他の放送局とのパートナーシップも拡大したい。映画、ドラマ、ドキュメンタリー、スタンドアップコメディーなどの拡充を進め、2017年度はコンテンツを今の倍にすることを目標にしており、2020年には世界で最も多くのオリジナルコンテンツを手掛ける制作者になることを願っている。クリエイターの皆さんには味方がいるのだと思ってほしい。

―― 従来のテレビ的なコンテンツを増やす考えは?

テッド あくまで消費者が見たいものを増やしていきたい。最近だと、スポーツエンタテインメント「Ultimate Beast Master」や、トークショー「チェルシー」などの配信もある。4年前はオリジナルコンテンツを全く持っていなかったが、今はここまで増やすことができた。消費者が望むならそうなっていくだろう。

―― ユーザーが望むならライブ的な生放送も視野に入る?

テッド 需要があればそうしない理由はないと思う。ただ、われわれが持っている価値は、“オンデマンド”だと考えている。そうした意味では、見る時間が固定されるライブストリーミングはそれと矛盾する気もしている。

Netflixのテッド・サランドスCCO サランドス、答えてくれてありがとう!

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた