「完全なファン目線で、どこまで凝れるか」 別次元のクオリティで『HiGH&LOW』世界を再現した「ハイローランド」誕生の秘密(2/4 ページ)

» 2017年09月03日 11時00分 公開
[しげるねとらぼ]

“普通のお兄ちゃん”が作った感を追求したTHE LAND

――山門から入ったところにTHE LANDがある、という設計でしたね。

 本来はTHE LANDへの入り口はよみうりランドさん側から脇の細いルートを使ってほしいということで。だったらこの山門を通さないとダメだろうと。じゃあ山門の額も「達磨一家」に変えなきゃということになったんだけど、この山門自体は本物なんですね。だからよみうりランドの人からは「クギは打たないでほしい」と言われたので……さて、クギを打たずにどうやって固定しようって頭を抱えました(笑)。

――山門の色ももともとあの赤色だったんですか?

 そうです。狙ったかのようなカラーリングですよね。ただ、山門だけだと唐突なんで、あれの周りをいかに達磨一家っぽい雰囲気にしていくかっていうのを練っていった感じですね。山門の前に巨大な太鼓が置いてあったじゃないですか。あれはPVの撮影で使ったもので、それが倉庫に残ってたんです。バカバカしくていいなあと思って、「何に使えるか分かんないけど、なんか使おうよ」ということで持ってきてた。で、お客さんが並ぶところにはインパクトがほしいから、ここに置いちゃおうと。あれ、実際はスチロールでできていて軽いんですよ。雨ざらしにして耐えられるものじゃないんで、ちょっと丈夫になるように加工して、ワイヤーで引っ張って固定してます。


「この門、どうやって作ったんだろう……」と誰もが思ったであろう山門。正解は「元からここにあった」でした
順路に沿って進むと現れる巨大な太鼓。インパクト抜群

――道を歩いてたらいきなり巨大な太鼓が出て来るのはすごいインパクトでしたよ!

 「山門の脇の太鼓」っていうのは当初のプランからずっと入れたかったんです。本当はお客さんが入るたびにドーン! って鳴らしてほしかったんですけど(笑)。スタッフが達磨の法被を着てるのも最初から決まってましたね。夜は篝火(かがりび)だろってことで「絶対無理だね……」って言いながら当初のスケッチには篝籠とかも描いてたんですけど、これはやっぱり無理でした。

――火を使うのはダメでしょうねえ……。あの山門の前で篝火が燃えてるのは見たかったですけど。

 あと山門の横に板塀があるんですけど、あれも自分たちがいつも番組のセットを作るときに使ってるものです。でもそんなに何枚もないので、和風に見えてコストも圧迫しない素材……って考えたときに、木製のフォークリフト用パレットを使おうと。他の番組向けのセットでも、パレットってよく使うんですよ。安くて見た目も面白いんで。木にプラスチックに金属と、素材も選べますし。

――あのパレットにはびっくりしました。


パッと見では分からないけど、よく見るとフォークリフトが荷物乗せて運んでるアレです

 ああいう素材を使うのも、もともとのコンセプトに沿って「若い連中が誰かを頼って資材を集めて会場を作った」っていうことの表現なんですよね。板塀が足りないときに彼らはどうするだろうかって考えたときに、近所の資材置き場に行って、そこのおっちゃんに「これくれよ」って話をつけたりとか、そうやって集めてきたんじゃないかと。山王街のステージにしても、ダン・テッツ・チハルの三人が近所の建設会社を回って鋼板とかを集めて作ったというテイストですね。

――ダンさんやテッツやチハルがやっていそうなことをトレースしたわけですね。

 夏祭りだからステージの周りを紅白で飾るんだけど、山王の連中がやってることなんだから、これは紅白の幕ではないだろうと。提灯はいいとして、鋼板で作った壁にペンキで紅白の模様を描いたほうが絶対に面白い。それで実際に塗るんですけど、これもきれいに描いちゃダメだと。このへんは協力会社の人たちに塗ってもらったんですけど、職人さんだからやっぱりきれいに描こうとするわけです。だから「ローラー貸して!」って自分でバーン! ベシャー! って雑に塗って見せて。ペンキもダラダラ垂れてくるような仕上がりで「それでいいんですか!?」っていわれるんですけど、「こうじゃなきゃダメ!」って押し通しました。

――いい話ですねえ……!


ステージの横にはあえて雑に塗られた紅白の鋼板が。ちなみにステージ上のトラス状フレームは実際に鉄でできてます

 自分たちはきれいに塗れちゃうけど、彼らの立場になって考えるわけです。20代前半くらいの特に何か勉強しているわけでもない連中が好きにやってる作業なんだから、それなりの仕上げになっていないとリアリティが出ない。当然自分たちの好きなポスターやフライヤーを貼ったりとかは自由にやるだろうっていう、連想ゲーム的な作業ですよね。きっとこのへんでタバコを吸うだろうっていうところがあればそこには灰皿がわりの缶を置いてみたりとか、ストーリー性がないと面白くない。それをお客さんがどこまで気がついてくれるかとは別問題ですけど。

――見てる側も試されてるような感じだったんで、目を皿のようにして見てしまいました。

 ありがとうございます(笑)。ステージ部分のグラフィティも自分たちで描こうということになって、THE MUSEUMのコンテナの落書きも含めてデザイナーがみんなで描きました。コストの問題もあるんですけど、「せっかくだから自分たちで描いたほうが楽しくない?」っていう方が理由としては大きかったんです。でもこれも専用のスプレーじゃないと描けない。普通の塗装用スプレーだと塗料が楕円に広がっちゃって、細かいところが描けないんです。ちゃんとグラフィティ用スプレーというのがあって、現場に入ってから慌てて調べたら、袖ヶ浦に扱ってるところがあって。車で60本くらい買ってきて、みんなで「おっ! 描きやすい描きやすい! やっぱこれだよ!」とか言いながら描きました(笑)。グラフィティ用のスプレーって一般の塗装用スプレーより低圧なんですよ。だからゆっくりノズルを動かしても塗料が一箇所に付きすぎない。あと乾燥が早くて隠蔽力が強いですね。

――けっこう性能が違うんですねえ。そういえばステージ奥の壁にもグラフィティがありました。

 奥の壁に関しては、キャンプ座間とか沖縄とかで見られるような、ちょっと日本風でしょっぱい感じのアメリカっぽさを意識してます。『HiGH&LOW』らしいムードってそこだなと思ってて。完全に昭和っぽいディティールだけだと単に鄙(ひな)びた雰囲気になっちゃうんで、要所要所にアメリカっぽい雰囲気を入れつつ、でも日本の商店街に見えるようにアレンジしてます。

――確かに、普通の店舗についてるような分電盤とか、ディティールは日本風なんですよね。

 あの売店の脇の分電盤も、実際によみうりランドに入ってる電気屋さんの配電ボックスなんです。自分たちがいろいろ工事をしてると、「これも飾る?」って持ってきてくれるんですよ。「えっ! いいんすか!」って(笑)。他の部品も「あれもいいっすか?」って聞いたら「いいよいいよ!」ってくれるから、若い奴が電ドリ持ってってウィ〜ンってすぐくっつけて。「小池電機商会」って入ってるのはいいけど、電話番号はまずいかなってはがしたりとかして。こういう作業をやってると意外に楽しんで乗っかってくれる人がいるんです。


実物を電気屋さんからもらった分電盤。妙にリアルだと思ったらそういうことだったのね

――その場でくれたものを即取り付けたんですか……!貸店舗の看板とかもありましたよね。

 ああいう汎用性のある看板は、もともと小道具として持ってるんです。看板自体はイベントのために作ったものではないんですけど、日本の商店街っぽいディティールをつけたいから、そういうテイストの道具を集めてくれっていう指示をして集めました。「山王街振興組合」とか、地域特定した看板は全部新規で作ったものです。そのへんは今回最年少のデザイナーの女子がこだわってやってくれた仕事です。大から小まで、現場で思い付いたことはどんどん取り入れてますね。


これまたリアルな貸店舗の看板。こういうの、よく見ますよね……。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/06/news042.jpg ハードオフに1650円で売られていた“まさかの掘り出し物”→修理すると…… 見事な復活劇に「相場が上がってしまうw」
  2. /nl/articles/2501/06/news014.jpg 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら……3年半後、目を疑う結果に大反響 2024年に読まれた植物、家庭菜園記事トップ5
  3. /nl/articles/2501/05/news001.jpg 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は……斜め上のキュートな活用術に大反響 2024年に読まれた面白記事トップ5
  4. /nl/articles/2501/06/news043.jpg 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  5. /nl/articles/2501/06/news090.jpg 【編み物】10年前祖母が教えてくれた編み物、まさかの作品を生み出して…… 二度見必至の完成品に「信じられない」
  6. /nl/articles/2501/05/news006.jpg 目からウロコな“ビニール袋のたたみ方”が100万再生 超便利な“裏技”に「こっちの方が絶対いい」
  7. /nl/articles/2501/05/news033.jpg 「昔はモテた」と話す母→全然信じていない息子だったが…… 当時の“異彩を放つ姿”に驚き「わぁ!」「とても魅力的」【海外】
  8. /nl/articles/2412/27/news137.jpg 男性に「きみの友だちを紹介してよ」と言われてきた女性、40キロの減量に成功し…… 人生激変した姿が120万再生「自信がついてさらに輝いている!」【独】
  9. /nl/articles/2501/06/news046.jpg 北海道の用水路で“巨大な外来魚”を捕獲→さばいてみると…… 中から出てきた“ヤバすぎる物体”に大興奮「ずっと釘付け」
  10. /nl/articles/2501/05/news015.jpg 【編み物】白と黒の毛糸をひたすら編んでいくと…… “あの人気キャラ”の完成に「あなたは魔法使いですか?」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  2. 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
  3. 「すごい漢字!」 YouTuberゆたぼん、運転免許証公開 「本名の漢字」に衝撃の声続々
  4. 「麻央さんにそっくり……」 市川團十郎の11歳息子・勸玄の成長ぶりに驚きの声 「大きくなってる!」「すでに貫禄がある」
  5. チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
  6. 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
  7. 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
  8. 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  9. 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  10. 「デコピンを抱き寄せたのはもしかして」 妻・真美子さん第1子妊娠発表で大谷翔平の発言と行動に再注目 「“もう帰る?”は気遣っていたのかも」
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」