十日戎に行く前に! “二次創作”された神「エビス様」誕生の秘密(2/3 ページ)

» 2019年01月10日 11時30分 公開
[植田麦ねとらぼ]

かわいそうなヒルコ

 まずは、ヒルコを見ることにしましょう。この神は『古事記』でも『日本書紀』でも、「流される神」です。とくに『日本書紀』では、アマテラス・スサノオ・ツクヨミと同時に誕生しているにもかかわらず、「三年の間、一人で立つことができなかったため、船に乗せて流した」とあります。ほかの三柱(神を数えるときは、「○柱」とします)が有名なだけに、哀れさが際立ちます。

 平安時代になると、「ヒルコかわいそうブーム」がおこります。きっかけは、大江朝綱の詠んだ歌でした。

 かそいろは 哀れと見ずや 蛭の児は 三歳(みとせ)になりぬ 脚立たずして
(両親はあわれと思わなかったのだろうか。ヒルコは三歳になっても、一人で立ち上がることもできなかったのに)


 この歌を詠んだ大江朝綱は、「天皇の命により、三年の間、出仕を差し止められていた」と『俊頼髄脳』にあります。つまり大江朝綱は、「三年で捨てられたヒルコかわいそう」と歌うことで、「三年もほったらかしの自分もかわいそう」と、ヒルコに我が身をなぞらえた、と理解されたのです。

 この歌と朝綱の境遇についてのエピソードは、ほかの文学作品にも影響します。例えば『源氏物語』でも、中央で失脚し、三年の間、須磨で隠居していた光源氏が再び中央に復帰する段で、天皇に歌を送ります。

 わたつ海に しなえうらぶれ 蛭の児の 脚立たざりし 年は経にけり(光源氏)


 この場面は、先にみた朝綱のエピソードが下敷きになっています。つまり、ヒルコが「三年の間、一人で立つことができなかった」ことと「三年の間、須磨で隠居していた自分」が重ね合わされているのです。

 こうして、『日本書紀』では捨てられた子、流されるだけの存在であったヒルコについて、二次創作の生まれる素地が整いました。


二次創作されるヒルコ

 ヒルコかわいそうブームの結果、「海に流されたヒルコが龍神に拾われて、エビスになった」という二次創作が行われます。例えば、鎌倉時代末期から南北朝期にかけての歴史を描いた『太平記』の中にも、「蛭子と申すは、今の西宮の大明神にてまします」と、ヒルコが今の西宮神社にまつられる神であることが示されます。『神道集』という書物にも、

 此ノ御子ハ三歳マデ身打ナヘテ、蛭ノ如クシテ在ス。此ヲ成長テ何カハセントテ、楠椌船ニ入リテ、大海ニ流ケリ。此ノ船浪ニ漂ハサレ、自然ニ龍宮ニ下ダリテ、龍神此ヲ取テ養フ程ニ……(中略)……今ノ代ニ西宮ト申スハ是ナリ。海人共ガ大ニ営ミ秋ノ祭ヲ成ス、即恵美酒トハ申是ナリ。
 (このヒルコという御子は、三歳まで身体が成長せず、まるで蛭のような姿形であった。そのため、成長の見込みもなく、船に乗せて海に流した。その船は波にただよい、ついに龍神の宮にたどりついた。龍神がこのヒルコを養い、(中略)いまの西宮にまつられているのが、この神である。漁師たちが秋の祭りで崇めるのが、このエビスという神である。)


 とあります。

 こうして、流されたヒルコは海の神である龍神に養育されて、成長したのでした。海の神の養子ですから、海の幸を保証する神としてお祭りされることになります。こうして、福の神としてのエビス=ヒルコが誕生します。


西宮神社に残されている「蛭子(ヒルコ)宮御宝前」と書かれた灯籠

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