「シェイプ・オブ・ウォーター」が描く抑圧と解放 モンスターの一撃は何を救済したか?(1/3 ページ)
ネタバレ注意。
劇場公開から2週間。US版Blu-rayが到着し、「シェイプ・オブ・ウォーター」米国公開版を見ることができた(関連記事)。本作は監督協会賞、金獅子賞のみならず第90回アカデミー賞監督賞、作品賞含む4部門を受賞した彼の現時点でのマスターピースであり、疑いの余地もない傑作だ。
以下、公開から時間が空いた話題作ということもあり、内容には多量にネタバレを含む。また、本記事の大半は作品を見たうえでないと理解できない内容になっていることをあらかじめご了承いただきたい。
全面に押し出された"抑圧への反対"
「刀を鳥に加へて鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず。聲ある者は幸福也」……といえば、映画「イノセンス」に引用された斎藤緑雨の「半文銭」だ。声をあげられない魚を模した怪物に、唖者であるイライザ(サリー・ホーキンス)は自分と同じものを見る。
時代は冷戦期。それはデル・トロが語るように、アメリカが再び偉大な大国となるよう動き始め、生活は豊かになり、夢と希望にあふれた時代――アングロ・サクソン系プロテスタント男性にとっては――でありながら、同時に古い時代の規範がいまだ根強く存在し、それに縛られている者たちの苦しみは続いている。
その混沌の時勢の中、声をあげられない者たちは抑圧され、虐げられる。例えばそれはイライザ同様の唖者であり、南米からの移民を象徴するモンスター。ゼルダのような黒人たち。さらにはジャイルズに象徴される同性愛者、といった人々である。
本作にはこれまでデル・トロが描いてきたファンタジーの絶対肯定のほか、受賞スピーチ最初の一声を「私は移民です」とした彼の考える、はっきりとした抑圧への反対論、さらには相互理解の重要性が見てとれる。
確かにメインプロットは異境から現れた怪物であるモンスターとイライザのラブストーリーだ。だが本作は「美女と野獣」、ならびに「大アマゾンの半魚人」のラストシーンに端を発する。真実の愛を知った野獣は美しい王子に姿を変え、半魚人はヒロインと結ばれることなく死んでしまう(※)。つまり、物語の中ですら“社会ののけもの”は幸せになれないのか、という少年期のデル・トロの疑問が、本作を撮るきっかけとなっているのだ。
その象徴として映し出されるのが、作中幾度か現れる劇場のスクリーン、そこに流される映画「砂漠の女王」のある場面だ。これは王により建設されている邪神・ケモシュの神像がぐらつき、奴隷であるクリスチャンたちがその下敷きになるシーンの直前だ。
イライザが劇場に入る。闇。「砂漠の女王」が無人の劇場にかかっている。
スクリーン:異教の神の石像が大きくぐらつく。クリスチャンの奴隷たちがつぶされ、叫んでいる。
彼女は座席を見渡す。客は誰一人いない。
(脚本より)
該当シーンの使用は脚本にも明確に記載されている。ここで提示されているのは、誤った社会規範の抑圧により苦しめられる民衆の姿だ。そしてこの苦しみはイライザとモンスター、ジャイルズ、ゼルダ、そして後述するように――ストリックランドにも通じている。
※「大アマゾンの半魚人」で半魚人(ギルマン)は銃撃を受けはしたものの厳密には死んでおらず、続編「半魚人の逆襲」に再登場、水族館の見せ物とされる。そして第三作、「THE CREATURE WALKS AMONG US(日本未発売)」にて大火傷を負い、肺を切り取られて歪な人間化を果たす。そしてもはや水中呼吸ができない体になったにもかかわらず、海へと帰っていく。
「正しく」矯正されたシーン
以前の記事で書いた通り、本作の日本での劇場公開版はあるシーンに数秒間のぼかし処理が為されている。その箇所はマイケル・シャノン演じるストリックランドと、その妻のベッドシーンだ。モンスター、およびイライザのシーンには一切の修正がない。ということで、「ただのセックスなら仕方ない、大したシーンじゃない」と感じている人が大半だろう。だが、これは誤りだ。残念ながら。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
-
60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
-
「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
-
皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
-
71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
-
真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
-
新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
-
家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
-
藤本美貴、晩ご飯に手料理7品 多忙でも野菜とお肉たっぷりで反響 「お疲れ様です」「凄く親近感」【2024年の弁当・料理まとめ】
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」