路線バスは何人乗ればもうかるのか? 現役バス運転士が損益分岐点をザックリ計算した解説が参考になる

ラッシュ時に混んでるバスはもうかってるのか否か。

» 2018年05月28日 09時00分 公開
[宮原れいねとらぼ]

 現役バス運転士のかしけん(@Kashiken_N)さんが投稿した、路線バスについて「何人乗ればもうかるの?」という気になる疑問を、損益分岐点の計算とともに解説した内容がTwitterで話題になっています

※以下、価格などの数値はあくまで作者による目安です



 解説では「路線バスに1時間あたりおよそ何人乗ればもうけが出るのか」を順を追って計算していきます。まずバスの価格は、大型バス(1台)で2500万円前後と言われ、補助金や塗装代にワンマン機器などの分を足して2600万円と仮定。これをバスの平均使用年数の17年(と1年)で割ると、

26,000,000÷17÷365.25≒4,187

 バスの価格は<1日あたり4187円>となります。


路線バス 損益分岐 計算 何人乗ればもうかる 現役運転士 解説 路線バスは実際にもうかっているのかどうかを計算から見ていきます

 次にバスの維持費(車検・整備・修繕・税金など)を年間100万円として計算すると<1日あたり2738円>。さらに「毎時18kmで1日9時間走る」と仮定すると、バスの燃費が約3.5km/Lなので軽油120円/Lの場合、

120×18×9÷3.5≒5,554

 で、燃料代が<1日あたり5554円>となります。また、バスの点検修理の期間や予備車が有ることも考慮し、稼働率を80%とした場合「(4187+2738)÷0.8≒8656」となり、車両費は<1日あたり8656円>に。


路線バス 損益分岐 計算 何人乗ればもうかる 現役運転士 解説 人件費に関しては「採用費」がかなりかかるとのこと

 続いて人件費では、バス運転士の年収を400万円として、法定福利費・採用費・健診費などを考慮して1.5倍。これに事務・整備・窓口などの運転士以外の人件費も含めてさらに1.5倍し、全員が年間260日出勤すると仮定すると、

4,000,000×1.5×1.5÷260≒34,615

 となり、人件費は<1日あたり3万4615円>。そしてこれら車両費・燃料代・人件費をすべて合計すると4万8825円で、これに加えて施設管理費や一般管理費、税金や配当といった雑費を全体の22.5%とすると、

48,825÷(1-0.225)=63,000

 で、<6万3000円>が1台のバスを動かすのに必要な経費となります。そこから1日の稼働時間9時間で割ると、<1時間あたり7000円>が損益分岐点という結果に。


路線バス 損益分岐 計算 何人乗れば儲かる 現役運転士 解説 バスを動かすのに必要な経費は1日(9時間)6万3000円。1時間あたり7000円が損益分岐点

 最後に客単位200円で計算すると、片道1時間かかる路線で<35人/便>、往復1時間かかる路線なら<17.5人/便>となり、最初の疑問「何人乗ればもうかるの?」の答えとしては、平均の乗車人数がこれを上回ればもうけが出るということになります。


路線バス 損益分岐 計算 何人乗れば儲かる 現役運転士 解説 確かにラッシュ時に混んでる逆方向のバスを考えると平均17.5人は厳しそう……

 かしけんさんは続く解説で、平均で17.5人という数字は少なく感じるものの、例として「70人満員で乗った便」があっても「全く乗らない便が昼間に3本」あればすぐに相殺されてしまうということだと説明。またラッシュ時でも「逆方向のバス」はほとんどがガラガラになるとして、その結果満員のバスが多くあっても平均乗車人数が下がってしまうとしています。

 Twitterでは一つの参考資料として「わかりやすい」「こういう視点って大事」といった声や「全然もうかってないじゃないか…」と驚く声が寄せられ、またさまざまな意見も上がる反響を呼んでいます。

 約8割の路線が赤字で、自治体からの補助金でも黒字にはならないという現状から「路線バスって実は結構悪戦苦闘しているんです!」と、厳しい路線バスの状況をまとめたかしけんさん。以前には、路線バスが毎日遅れてくる理由や違反行為などをまとめた解説画像も投稿して話題になり、「現役運転士の解説シリーズ」としてモーメントで公開されています。



画像提供:かしけん(@Kashiken_N)さん



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