インタビュー
» 2018年06月17日 11時00分 公開

ドラクエやモンハンの世界をどう訳す? 「教会の十字架の形まで変える」ゲーム翻訳の奥深き世界 (4/4)

[朝井麻由美,ねとらぼ]
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依田:海外では宗教問題ってすごくセンシティブですし、クレームが来る可能性があるものはできる限り取り除きます。ほかには、人種差別やセクシャル関連の言葉も要注意です。特に、なぜか日本語をそのまま英語にするとセクシャルな変な言葉になってしまうことって多いんですよ。

 私たちが関わった作品ではありませんが、有名なのだとポケモンですね。「Pocket Monster」は性的な意味を含む隠語ですので、海外ではフルネームでは呼びません。また、そのまま「Pokemon」としてしまうと、新たに性的な意味を連想させる言葉が入ってしまうので、そう読ませないように「e」のところにアクセント符号をいれる工夫がされています。


ポケットモンスターの海外版ロゴ。「e」のところにアクセント符号が入っている (C)ポケモン

アルト:1997年に発売された『THE HOUSE OF THE DEAD』というガンシューティングゲームに、「来ないで! 来ないで! 来ないで!」というシーンがあるんです。本来はこれを英語にすると「Stay away!」や「Go away!」が正しい。ですが、これがそのまま直訳されてしまっていて、「Don't come!」になってるんですね。実は「come」はかなり性的な意味がある言葉なんですよ。当時訳した方にそんなつもりは全くなくて、知らずに直訳されているだけなんですけど。

――ゲームしているほうは、せっかく内容が面白くても気が散りますよね。

アルト:昔はそういうのばかりでしたよ。この作品、面白いのになんでこんなに英語が変なんだろう、とか、そもそも英訳されたものがあること自体が珍しかった。好きな作品の言葉が分からなかったり、英訳が変だったりする悔しさがエンジンになって、日本語も勉強しましたし、今の仕事にもつながっています。

依田:アルトの場合は、80年代ガンダムをちゃんと見たいという理由から日本語を勉強したんです。高校生のときはガンダムの用語ばかりが書かれた単語帳を持っていたくらい(笑)。

――ただ、お話を伺っていて、その作品や日本の文化そのものが好きじゃないと、日本的なフレーバーを残すなどのクリエイティブな翻訳ってできないように思いました。

アルト:そうですね。当時は英語版アニメがない時代で、プラモのパッケージやロマンアルバムなどを見ながら「あのモビルスーツは日本語でなんて言うんだろう!?」とずっともどかしい気持ちを抱えていて。早く日本の作品を楽しめるようになりたくてたまらなかったですからね(笑)。このときの経験があったからこそ、日本の作品の良さを生かしながら、アメリカ人も満足できる翻訳ができているのだと思います。

(了)

仕事での研究+趣味が高じて、英語で妖怪や幽霊などを解説した『Yokai Attack!(外国人のための妖怪サバイバルガイド)』『Japandemonium Illustrated: The Yokai Encyclopedias of Toriyama Sekien』などの著作も出版してしまったお二人

ライター:朝井麻由美(@moyomoyomoyo

フリーライター・編集者・コラムニスト。近著に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。一人行動が好き過ぎて、一人でバーベキューやスイカ割りをする日々。


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