「魔法の杖」や「ニュートのトランク」 魔法アイテム製作を一手に担う男が完全に小道具の魔術師
「ハリポタ」「ファンタビ」シリーズの小道具を一手に担うピエール・ボハナ造形美術監督に聞きました。
「スター・ウォーズ」などを超え、シリーズ映画史上No.1の「ハリー・ポッター」魔法シリーズの原作者J.K.ローリングが脚本を手掛ける人気ファンタジーシリーズの最新作「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」(11月23日から全国ロードショー)。
魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)の冒険を描いた最新作に当たる同作では、アメリカ合衆国魔法議会が捕らえていた“黒い魔法使い”ゲラート・グリンデルバルド(ジョニー・デップ)が脱獄したことを知ったニュートが、仲間や魔法動物たちとともにグリンデルバルドを追いパリに向かうストーリーです。
「ハリー・ポッター」「ファンタスティック・ビースト」ともに、映像で見ると微に入り細をうがった造形が重厚な魔法ワールドへの没入感を高めてくれますが、それらを一手に手掛けているのが、ピエール・ボハナ造形美術監督。「魔法の杖」「賢者の石」「ニュートのトランク」などの魅力的なアイテムを小道具の魔術師たるボハナはどのようにデザインしていったのでしょうか。
幸運にも来日していたボハナに話を聞こうと直撃すると、用意された部屋には、魔法の杖やニュートのトランクなど実際に使用された小道具がズラリ。それらに我が子を見る親のようなまなざしを向けながら、童心に返ったように喜々として話すボハナに魔法の一端を聞きました。
小道具製作はプロセス――魔法アイテムが産まれるまで
―― 「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」でもさまざまなキャラクターが登場しますが、それらのキャラクターが身に着けたり使用したりする小道具のデザインはどのようなアプローチで臨むものなのですか?
ピエール 基本的には脚本の描写がまずありきですが、魔法の杖のようにキャラクター一人一人の特徴に合わせたデザインをしていくものもあります。女性が年齢を重ねるとジュエリーに対する好みが変化するように、それぞれの魔法使いにも好みや特徴があって、「この人はこういう人物なのでこういう魔法の杖を選ぶだろう」などを監督や脚本家と話し合いながら進めていくのです。
作品の時代背景はもちろんですが、そこで生きるそれぞれのキャラクターの趣味嗜好(しこう)を踏まえることも重要視しています。
―― 例えば、ニュートの魔法の杖は、どんなことを考えてデザインされたのでしょう。
ピエール ニュートはとにかく動物が大好きで、それ以外のこと、例えば服装には無頓着だし、魔法の杖もよく見ると傷だらけ。無頓着だから園芸用具を使うかのように魔法の杖を使っているんだろうと考えながらデザインしました。
一般的に、演者というのは先ほどお話しした一連の工程のだいぶ後で加わることが多く、キャストが決まる頃には小道具は出来上がっていることも多々ありますが、ニュート役のエディ(・レッドメイン)は、自分のこだわりをとてもしっかりと伝えてくれました。ニュートの魔法の杖が傷だらけなのもエディの提案です。
また例えば、アリソン・スドルが演じるクイニー・ゴールドスタイン(編注:ヒロイン・ティナの妹)の魔法の杖は、柄の部分は貝殻でアール・デコ調の装飾を施していますが、幾何学模様と有機物を合わせるのは(劇中の舞台である)1920年代のはやりだったようです。ボブカットのようなヘアスタイルなど1つ見てもすごくオシャレに気を配ったクイニーなので、それを踏まえてイメージを具現化していきました。
―― 「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」はパリの魔法界が舞台ですが、それまでの作品と比べて小道具の製作にはどんなチャレンジがありましたか?
ピエール セットデコレーションでいえば、路上で(摩訶不思議)サーカスをするという当時のパリっぽいシーン。出店もたくさん出ているんですが、フランスのクィディッチ(魔法界のスポーツ)のお店だったり、フランスだからテリーヌの型を取る道具を並べたりと、1920年代のパリで魔法界というのを意識したものになっています。
また、今作では、フランスの魔法省も登場しますが、ファイルの入った棚がたくさん置いてある部屋など、デザインにかなり工夫と苦労があります。それぞれのキャラクターが使う小道具にも物語の鍵となるものもあり大事な要素なので、企画段階から緻密に組み立てました。
―― 今作では若き(アルバス・)ダンブルドアも登場しますよね。
ピエール そうですね。ダンブルドアは闇の魔術に対する防衛術を教える立場で登場するのですが、(アラスター・)ムーディも、(リーマス・)ルーピンも、防衛術を教える先生たちは自前の道具を使って教える設定が昔からありました。だから、ダンブルドアにも自前の道具があったという前提で、彼は占星術に興味があるから、望遠鏡や日時計などの小道具を登場させています。
これらその全てが最初から完成形が見えているわけではなく、作り上げていくもの、つまり、プロセスです。脚本にある描写もあれば、J.K.ローリングが提案したものもあるし、俳優から、あるいは私たちから提案したものもあります。
緻密に相談を重ねながら作り上げていく非常に複雑なプロセスなので、ピンポイントでここが難しかったと言うのは難しいです。ただし、私だけでなく私のチームのメンバーも、貢献できたという実感を持って仕事できたと思います。
―― 「ハリー・ポッター」「ファンタティック・ビースト」の全てで小道具製作に携わり、作品に欠かせない数多くのアイテムを産み出してきたあなたが特に印象深いものを1つ挙げるなら?
ピエール 答えは「たくさん作っているから1つに絞れない」ですが(笑)、フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーが経営する「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ」に何百ものアイテムが並ぶさまは印象深いですね。
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