「ババアはいらねぇ」「死んじまえ」 ディズニーランドの“キャラクター出演者”がパワハラ巡り訴訟 原告が「ゲストの夢最優先してきたが限界」と涙の訴え

訴訟を起こしたことで「長く守られてきた人々の夢を壊した」と言われ、「現場に戻るのは難しいのではと思っています」と涙。

» 2018年11月13日 12時34分 公開
[Kikkaねとらぼ]

 東京ディズニーランド(千葉県浦安市)で“キャラクター出演者”としてショーやパレードに出演してきた女性社員2人が11月13日、オリエンタルランドの「安全配慮義務違反」を訴え、千葉地方裁判所で意見陳述を行いました。原告は上司から「病気なのか。それなら死んじまえ」といった暴言を浴びせられたと訴えている他、重いコスチュームなどが原因で「胸郭出口症候群」を発症するなどしたとして合計約755万円の損害賠償を求めて7月19日、提訴に踏み切っていました。


ディズニーランド 被害者弁護団と原告(原告のプライバシー保護に配慮し、画像を一部編集部で加工しています)

 原告AさんとBさんはともにディズニーランドでコスチュームを着用する“キャラクター出演者”として働いていた女性。Aさんは年間パスポートを自費で購入し、休日にもディズニーランドを訪れてキャラクターの動きを研究するなど熱心なキャストです。

 意見陳述では「ゲスト(お客さん)の笑顔を支えにしてきました。この仕事が好きで、ずっと続けたいと思っていました」と振り返るも、「この仕事は過酷です」「熱が出たりケガをしたりして休業すれば白い目で見られます」「仕事を休む場合は自分で代替者を確保すルールがありました」と業務実態を語りました。

 また2016年11月ごろからは腕などに違和感が出始めたと言い、2017年1月には左腕の付け根から指にかけてしびれや激痛が走る症状が出たというAさん。2017年1月10日には「胸郭出口症候群」と診察され、同年8月10日、船橋労基署で労災認定(上肢障害)を受けました。

 「胸郭出口症候群」を発症することとなった原因についてAさんは、「毎日いきいきとした出演者を演じるためには腕や肩を無理な姿勢に保つ必要があり、負担がかかります」と明かし、「業務の質・量の改善」「コスチュームの軽量化」「代替者の確保」などを求めたい考えと語りました。

 Bさんは13年8カ月にわたりオリエンタルランドで勤務してきた女性。キャラクター出演者として勤務する際、ゲストとのふれあい時に右手薬指を故意に反対側にひねられてねんざを負うという事象が発生し、上司に労災を申し出たところ「エンター(エンターテイナー)なんだからそのくらい我慢しなきゃ。君は心が弱い」と一蹴されたと訴えます。

 またふれあい時のケガのショックから別の配役への変更を申し出た際には「わがままには対応できない。解雇対象になる」と言われたとも明かした他、過呼吸の症状が出た際には「次に倒れたらやめてもらうから」との暴言があったと言います。

 Bさんが特に問題視しているのは「閉鎖された狭い空間でのイジメの発生」で、うわさ話や悪口がはびこる職場について「ディズニーランドで働き続けたいからこそ環境を変えなくてはいけないと考えています」「長年耐えてきましたが、我慢するだけでは何も変わりません。パワハラがない、安心して働き続けられる職場になるのが私の夢です」と涙を流し、この言葉にはAさんも目元をハンカチで拭っていました。


ディズニーランド 裁判が行われた千葉地裁

 裁判後、AさんBさん、被害者弁護団は記者会見を開き、訴訟に至った心境を語りました。冒頭、被害者弁護団からは「7月19日に訴状を提出したが、裁判直前になってAさんとBさん双方にオリエンタルランド側から『あなた方は従業員である以上、会社のプライバシー保護、秘密事項や会社の業務等をする必要がある』という内容の通知書が送達されてきました。『裁判に影響するものではなく全ての従業員に求めるものの確認』とのことですが、このタイミングでの送付は『あなた方の身分に影響しますよ』と言わんばかりで異常です。オリエンタルランド側に誠意を持って臨むという姿勢が見られないと感じました」との意見がありました。


ディズニーランド 被害者弁護団の長を務める渚法律事務所の廣瀬理夫弁護士

 続いてAさんは「私たちの業務には多くの守秘義務があり、労災が認定されるまで医師にもどのような就業実態なのかなどを話せませんでした。私以外にもケガをしている人はいます。今回の訴訟を起こしたことにより、私は『長く守られてきた人々の夢を壊した』と言われていて、現場に戻るのは難しいのではと思っています。裁判を起こすのはとても勇気が必要でしたが、声をあげることが現場で良くしてくれた方への恩返しだと思っています」と涙ながらに複雑な心境を吐露しました。

 Bさんは、「物心ついたころからディズニーの世界が好きで、24歳でやっとディズニーランドで働く夢がかないました。入社してからはイジメが繰り返される環境でしたが、ゲストの笑顔で救われていました。ひどくなっていくイジメについて、上司に相談しても耳を貸してもらえず、毎日悪口が飛び交う職場で、仕事が好きなのに辞めていく同僚を見て、この環境で最高のパフォーマンスができるかを考えました。今回提訴している内容はごくごく一部でもっとひどいこともたくさんありましたが、『ゲストの夢を守る』ことを最優先してきたので、裁判をおこすのはちゅうちょしてきました。しかし、私はこの仕事が大好きで、ディズニーの世界が大好きなので、安心して働ける職場になってほしいと願って訴訟に踏み切りました」とコメント。最もつらかった上司からの暴言は「30歳以上のババァはいらねーんだよ。辞めちまえ」「病気なのか。それなら死んじまえ」 という言葉だったと振り返りました。

 Aさんは現在休職中ですが、職場復帰に挑戦した際、涙が止まらなくなるなどの症状が出たため現在は心療内科に通院しているとのこと。継続したケアを行いながら復職を目指しています。

 Bさんは別件でパレード中に首を負傷したため労災申請を行い現在休職中。「すぐにでもゲストに会いたい」という思いからケガが治れば復職したい考えと明かしました。

 オリエンタルランドは今回の裁判で、Aさんについて「過重な重量業務で、上肢障害を発症した」安全配慮義務を欠いたとして約425万円の損害賠償(治療費、2017年1月10日から4月末までの休業損害、慰謝料含む)請求を、Bさんについて「従業員に対してのパワハラの防止教育」「パワハラ発生時には調査して内容を把握する義務」「被害者の苦悩を取り除くための措置義務」(安全配慮義務)を怠ったとして約330万円の損害賠償請求を受けています。

 これを受けてオリエンタルランドは、「労災が認められたということは認めるが、認定されたからといて安全配慮義務違反があるということではありません」との姿勢を被害者弁護士団に示し、裁判の棄却を求めています。

(Kikka)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. /nl/articles/2404/21/news005.jpg 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  3. /nl/articles/2404/22/news028.jpg 0歳双子を19時15分に寝かせ続けたママ→1年後…… メリットだらけの挑戦記録に「偉い&すごい!」「寝る子は育つ、その通りですね」
  4. /nl/articles/2404/21/news013.jpg 【今日の計算】「101×99」を計算せよ
  5. /nl/articles/2404/16/news027.jpg 中古軽自動車をキャンピングカー仕様にして日本一周するカップル 車内で料理中、思わぬアクシデントが…… その後の姿に「すごい」「尊敬します」
  6. /nl/articles/2404/22/news122.jpg 「あの頃の橋本環奈すぎる」21歳の無名アイドル、幼少期ショット公開で再びどよめき「凄い完成してる」「美少女の片鱗が見えすぎてる」
  7. /nl/articles/2404/22/news026.jpg ご機嫌でルンルンステップを踏む柴犬、それをパパがまねすると…… ルンルンはひとりで楽しみたい派の塩対応に「めっちゃ可愛い」と100万表示
  8. /nl/articles/2308/31/news023.jpg 庭の草刈り中に小さな卵を発見、孵化させてみたら…… 命の誕生の記録に「すごい可愛い!」「すてきな家族」
  9. /nl/articles/2404/21/news029.jpg 飼い主を引っかいてしまった黒猫“自分の犯した過ち”に気が付いて…… いつもと違う行動に「反省してるのが分かる〜!」と190万再生
  10. /nl/articles/2404/22/news020.jpg 「飼い主ビビる」猫たちに猫草をあげたら……“ちがうもの”を食う1匹の姿が182万表示! 予想外の展開に「ちょっww」「狂気を見た」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」