「色覚検査の攻略本」「本当は効かない色弱治療」はなぜ存在したのか 進学・就職制限を受けてきた「色弱」の歴史とこれから(1/3 ページ)

カラーバリアフリーの取り組みを行う団体・CUDOに話を伺いました。

» 2018年11月30日 11時00分 公開
[ねとらぼ]


 カラフルな小さい丸で、数字が描かれた絵を見たことはありませんか? これは色覚検査に広く用いられている「石原色覚検査表」の図。学校での色覚検査は2002年から任意化されており、“この図を全く見たことがない若者”も少なからずいるのではないでしょうか。

 人間が色を感じるのには、目の網膜にある「錐体」が関わっています。この視細胞は「L」「M」「S」と3種類あるのですが、各錐体の数やはたらきには個人差があり、日本人男性の約5%、女性の約0.2%は、識別しにくい色がある「色弱」だとされています。

 かつて日本には色弱者に対する進学・就職制限が厳しい時代がありましたが、現在では「色弱者の多くが、支障なく日常生活を送っている」といわれています。その一方で、学校での検査任意化に伴い「進学・就職するまで色弱であることに気付かない若者が現れている」と問題視する報道も見られ、状況は複雑です。

 色弱者を取り巻く状況は一体、どうなっているのか。カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)副理事長・伊賀公一氏に話を伺いました。

色弱の“都市伝説”

―― まず「色弱者には、どのように世界が見えているのか」というのは、そうでない人には理解しにくいところがあると思います。個人的に「僕は赤色が見えないから、焼き肉が苦手だ(友人談)」という話を聞いたことはありますが……

 伊賀氏(以下略):色弱に関するエピソードの中には、“都市伝説化”されているものがあると思っています。

 私自身も色弱ですが、機構の人間などが「焼き肉が苦手」「緑色の猫がいる」という話を書いており、それ以降、類似した話をよく聞くようになりました。意識し過ぎかもしれませんが、私たちの文章が影響していないかと思ったりします。

―― 「誰かの話を読んだり聞いたりして、自分にも似た経験があることに気付く人が現れた」という感じでしょうか

 ええ。さまざまな人が「焼き肉が苦手」という話をしていますが、きっと“その話を最初にした人”がいるのだと思います。この手のエピソードは広まるにつれて、“最初の人”が言いたかった趣旨からズレていったように思います。

 私などは、他人と一緒に焼き肉をして、網上の肉をあちこちに動かされたりね。焼けたときの見た目は肉の種類によって違いますから、牛、豚、鶏肉をゴチャゴチャに混ぜられたりすると、どれが食べ頃なのか把握しにくくなってしまうよね、ということを言いたかったですね。


色覚のタイプによる見え方の違いを再現する「Chromatic Vision Simulator」にて制作。以下、比較画像は同サービスを利用したもの


シミュレーションレートを50%まで落としたもの。同じP型といっても、色の見え方には個人差があります

 ですが、このエピソードは都市伝説のように変な広まり方をして、「色弱だから肉の焼け具合がよく分からない」といわれるケースが出てきました。それで、やる前から苦手意識を抱いてしまって、焼き肉を諦めてしまう色弱者もいるんですよ。

―― 「他の人に肉をアレコレされた場合」という条件が抜けてしまったわけですね

 「花見に行くと、桜のピンク色が分からなくて悲しい」という話もよく聞くのですが、“都市伝説化”する前は冗談のようなものだったのではないか、と思っています。色弱であっても、花見は楽しめると思うんですよね。桜の華やかさは分かりますし、暖かくて気持ちがいいし、ドンチャン騒ぎだし。



「○○色が見えない/分からない」とはどういうことか

―― 色の見え方は個人の感覚で、他の人からは捉えがたいもの。「色弱で○○色が見えない/見えにくい」というのはどう理解すればいいのでしょうか

 その言い方は曖昧なので、「その色の部分だけ透明や白色に見えるのか」というような疑問が湧いてしまうかもしれませんね。“色の距離”という言葉を使って説明してみましょう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」