安室透に励ましてもらい、自動車免許をとった話(1/2 ページ)
わたしが安室さんにしてあげられることはなんだろう?
2018年購入した高価なものの中で、間違いなく買ってよかったと言えるものがある。
車の免許だ。大学生の頃に親から「車の免許は取っておいた方がいい。お金は出してあげるから」とありがたい申し出があったにもかかわらず「絶対にいらない」と頑なに断っていた自動車免許。田舎に帰るなら必須だけど、東京で暮らす限りは必要ない。免許いらない、は、故郷には帰らない、と同義だった。
免許はいらない。事故を起こすのも怖いし、どっちかというと、かっこいい男の子に運転を任せて助手席でワインをラッパ飲みする女でいたい。わたしは無免許のまま死ぬんだと思っていた。
そう決意していたわたしを免許取得へと駆り立てたのは、安室透だ。
2018年、『名探偵コナン ゼロの執行人』の映画をきっかけに一大ブームを巻き起こした、甘い顔立ちにミステリアスな振る舞いが魅力の男29歳。仕事もできるし料理もできるし運動もできるパーフェクトな彼は、ゼロの執行人で常人離れしたカーチェイスを披露した。彼が愛車のRX-7を駆使してモノレールの上を走り抜けていくときの狂ったような表情に心射抜かれて、膝からくずおれるように恋に落ちてしまった。
安室さんのことが大好きになってから、彼のために何かしてあげたいな、彼に釣り合う女になりたいな、とせっせとおしゃれにせいを出したり腹筋を鍛えたりし始めたのだけど、それでも彼の恋人になれる気がしなかった。安室さんがあまりに完璧すぎるせいだ。いくら筋肉をつけたり、ブランパンを焼けるようになったりしても、安室さんの役には立てない。打ちひしがれながら映画の中の安室さんを見つめているとき、ふと思った。
ゼロの執行人のラストシーンでは、凄まじいカーチェイスをこなしたRX-7はぼろぼろになり、安室さんは腕を怪我している。流血もひどい。あんな姿で、どうやって家に帰るのだろう。まさか電車? もしわたしが車の免許を持っていたら、安室さんを助手席に乗せて送り届けてあげられるのに。
……そうだ。わたしは安室さんに釣り合う女にはなれないかもしれない。けど、安室さんが怪我したとき、運転をかわってあげることくらいはできるようになりたい。安室さんへの気持ちのぶつけどころに困っていたのもあって、すぐに免許合宿へ申し込みを済ませた。
免許合宿というと元気な大学生が騒いでいるイメージがあり、そういう集団に出会うのが怖かったのでオフシーズンに行った。そしたら良くも悪くも合宿生はわたししかおらず、宿は貸切状態だ。おかげで20畳以上ある広い宴会場で毎朝毎晩一人飯を食べることになった。人がいないのをいいことに、福山雅治の「零」を流しながら、冷たいままの冷凍ハンバーグや具のないみそ汁を食べて1日を振り返ったりした。
運転が下手すぎて不安や弱音をぶちまけたかったけれど話し相手になってくれる人もいなくて、なんども挫折しそうになった。ブレーキを優しく踏めず、停車するたびに座席に頭をぶつけ、髪をまとめていたバナナクリップが弾け飛んだ。
たまに上手に停車できたときに「今のは結構うまかったですよね?」と教官に褒めてもらいたい一心で期待を込めた目でアピールするも、「うーん、君の運転にはとくに光るところがないね」と一刀両断された。
大きいトラックの後ろにぴったりくっついて走行しているときには、荷台に隠れて信号機が見えず、赤信号に気づかないで交差点につっこみかけた。
臆病なのですぐブレーキを踏みたくなってしいまい「後ろから追突される危険性があるからやめなさい」となんどもなんども注意された。
こんな調子だから、とてもじゃないけど公道を走れるようになるとは思えなかった。他の車の迷惑になるから教習所の中だけを走りたいし、できれば助手席にブレーキがついている車にしか乗りたくない。「教習車って一般販売あります?」と教官に尋ねると、「ないね」と言われた。今は信号を間違えても教官がブレーキを踏んでくれるからいい。けど、ここを卒業したら、ブレーキを踏めるのはわたししかいないのか。自分の運転テクニックなんて微塵も信頼できないのに。自分ひとりで運転しなければならないプレッシャーに震えた。
そんな毎日だったけれど、無理だ、と思うたびにスマホの壁紙に設定している安室さんが不敵な笑みでわたしを見つめ返してくるから、がんばらなきゃ、と思った。安室さんの顔がプリントされたシャーペンで学科の勉強に取り組み、ペーパーテストではほぼ満点をとった。「運転はやばいけど学科は完璧だ、知識はある」と自分を励ますことでことで乗り切った。
そうやって、なんとか運転免許を取得した。
関連記事
お金の力で幸せになりたい――「フルートが吹けるわたし」を夢見て、17万円のフルートを買った日
フルートが吹けるようになったら、きっと。「安室透に出会ってから世界がきらきらして見える」安室の女の胸の内
「隣の安室の女」の信仰告白。銭湯では80歳の老女が「お姉さん」になる。なら、私は?――31歳ライターと“銭湯年齢”
「80歳でお姉さんならば、31歳の私は何者なんだ? まさか、幼女?」――姫野桂さんによる銭湯サウナエッセイ。「餓死するかと思った」「顔に生理用ナプキンを……」壮絶な痛みを乗り越えて、整形女子たちが「かわいい」を求める理由
「美容整形トークショー vol.1」レポート。ハッキリ言って「学校」は地獄だ。それでも私が教員として学校にとどまり続ける理由
何度も悩んで、今でも教壇に立っている。「贔屓は人生の灯台」オタク女が宝塚で“運命”に出会い、精神と肉体の健康を得るまで
「贔屓への思いを自覚して早4カ月、10キロ痩せた」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
君島十和子の長女・君島憂樹、 “母上のお洋服”を拝借したシャネルコーデが超絶美人 「お人形さんかと」「素敵すぎ」
「明らかに写真と違う」 東京クリスマスマーケットのフードメニューが物議…… 購入者は落胆「悲しかった」
貞子もビビって逃げ出すレベル 驚異のハイスピードで迫るハムスターの姿に度肝を抜かれる人続出「怖いよ」
藤本美貴、“全然かわいくない値段”のテスラにグレードアップ スマホ一つでの注文に「震えちゃ〜う!」
愛猫に「猫鍋」をもらったのに、夢中になったのは予想外の…… 「違う、そうじゃない」とツッコむ展開に笑ってしまう
秋田犬の子犬、これで生後4カ月!? ベビーデカワンコの抱っこが「“超”大型犬ですよね」「かわいいの塊でたまらん!」と話題
いつも空いているドッグランが大盛況→常連の柴犬が困惑のあまり…… 胸がキュッとする“うろたえっぷり”に応援の声続々
クロちゃん、20歳年下の恋人に旅行持ちかけるも「行かない」 交際1周年のお祝いもなし「1回しっかりしゃべりたい」
笑福亭鶴瓶、夜中に“超一流俳優”たちの呼び出しでパジャマ出動 豪華メンツの泥酔姿に「凄いメンバー」「映画撮れそう」
写真家が「もう二度と撮れません」と語るエゾモモンガの水平飛行 貴重な1枚に「感動しました」「最高です!」と絶賛の声
- 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
- 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」
- 愛犬と外出中「飼いきれなくなったのがいて、それと同じ犬なんだ。タダで持ってきなよ」と言われ…… 飼育放棄された超大型犬の保護に「涙止まりません」
- ミキ亜生、駅で出会った“謎のおばさん”に恐怖「めっちゃ見てくる」 意外な正体にツッコミ殺到「おばさん呼びすんな」「マダム感ww」
- 永野芽郁、初マイバイクで憧れ続けたハーレーをゲット 「みんな見ろ私を!」とテンション全開で聖地ツーリング
- 道路脇のパイプ穴をのぞいたら大量の…… 思わず笑ってしまう驚きの出会いに「集合住宅ですね」の声
- 柴犬が先生に抱っこしてほしくて見せた“奥の手”に爆笑&もん絶! キュンキュンするアピールに「あざとすぎて笑っちゃった」
- 病名不明で入院の渡邊渚アナ、1カ月ぶりの“生存報告”で「私の26年はいくらになる?」 入院直後の直筆日記は荒い字で「手の力も入らない」
- 小泉純一郎元首相、進次郎&滝クリの第2子“孫抱っこ”でデレデレ笑顔 幸せじいじ姿に「顔が優しすぎ」「お孫さんにメロメロ」
- デヴィ夫人、16歳愛孫・キランさんが仏社交界デビュー 母抜かした凛々しい高身長姿に「大人っぽくなりました」
- 「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
- 会話できる子猫に飼い主が「飲み会行っていい?」と聞くと…… まさかの返しに大反響「ぜったい人間語分かってる」
- 実は2台持ち! 伊藤かずえ、シーマじゃない“もう一台の愛車”に驚きの声「知りませんでした」 1年点検時に本人「全然違う光景」
- 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
- 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
- 西城秀樹さんの20歳長男、「デビュー直前」ショットが注目の的 “めちゃくちゃカッコいい”声と姿が「お父さんの若い頃そっくり」「秀樹が喋ってるみたい」
- “危険なもの”が体に巻き付いた野良猫、保護を試みると……? 思わずため息が出る結末に「助けようとしてくれてありがとう」【米】
- 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
- おつまみの貝ひもを食べてたら…… まさかのお宝発見に「良いことありそう」「すごーい!」の声
- 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」