「新しいものを生むチャレンジを支えたい」 日本のクラウドファンディング先駆者「Makuake」に聞く、“サービスの意義”と“トラブルから学んだこと”(1/2 ページ)
「プロジェクトの広報活動をプラットフォームの広報チームがサポートするサービス」が成功の秘訣か。
自力では実現できないアイデアを現実にするため、ネットで多数の人から支援を募るクラウドファンディング。日本でもその仕組みが定着しつつあり、多額の支援を集めて成功するケースも見られます。
日本のクラウドファンディング最大手はサイバーエージェントグループ参加のマクアケが運営するMakuake(マクアケ)。2013年にサービスをスタートし、これまでに5000件以上のプロジェクトを生み出してきました。アニメ映画「この世界の片隅に」や「glafitバイク」など大成功を収めた例もある一方で、「商品が届かない」といったトラブルも見られるように。マクアケにクラウドファンディング事業を始めた経緯、プラットフォーマーはどのような仕事をしているのか、課題への取り組みなどを聞きました。
なぜサイバーエージェントはクラウドファンディングサイトを作ったのか
インタビューをしたのは?
マクアケ 共同創業者・取締役の坊垣佳奈さん
2006年、新卒でサイバーエージェントに入社。株式会社サイバー・バズの立ち上げに携わり、2010年に取締役。その後、ゲーム子会社2社を経て、2013年 株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング(2017年に株式会社マクアケに社名変更)の立ち上げに参画、取締役就任。クラウドファンディングという仕組みの広報・PR活動や、大手企業・地方自治体とのプロジェクトの仕掛けを行い、クラウドファンディング市場の拡大に取り組んでいる。
――ここ数年「Makuake」と聞けば「クラウドファンディングのサイト」と認識する人が増えてくるなど、サービスが日本でもすっかり定着してきたと感じます。日本でクラウドファンディングサイトを立ち上げると決めた経緯を教えてください。
坊垣:日本初のクラウドファンディングサイトは2011年にサービスをスタートした「Readyfor」さんで、「マクアケ」は、2013年5月1日に創業、8月7日に「Makuake」のサービスを開始しました。2011年東日本大震災が発生したときにクラウドファンディングサービスが開始したこともあり、当時の日本ではクラウドファンディングに対して、“寄付をすること”という認識を持っている方も多い印象で、募金的なサービスという感覚の方も多いように感じました。リターンもお礼状であったり、復興支援モニュメントに名前が刻まれたりというものが多かったと思います。そんな中私たちは「日本には残していく技術があって、クラウドファンディングというシステムが必要」だと考え、「Makuake」を作ることに決めました。
――日本でクラウドファンディングサイトを始めることによって、どんな効果があると考えていましたか。
坊垣:「日本において新しいものが作りやすくなっていく」と考えました。例えばアメリカはスタートアップ支援の意識などが高く、ベンチャーが生まれやすい土壌がありますが、日本にはまだまだそういった環境が整っていないため、クラウドファンディングの必要性を感じたんです。一方で日本でサービスを提供することの難しさもあるなと考えていました。
――どういった点で難しさを感じましたか。
坊垣:日本のユーザーは「早く正しく満足な製品が届く」という環境に慣れていますし、クラウドファンディングのサービス自体がEコマースに似ているというところもあり、審査の体制についてはできる限りきっちりとやらないと日本ユーザーの満足を得ることは難しいと思いました。
――審査というのはどのようなものなのでしょうか。
坊垣:個別の審査基準は非公開となっていますが、私たちがやる審査というのは「実現性」の部分がメインです。「このプロジェクトはいくらぐらい達成しそう」とか「このプロジェクト発案者(企業)は後々伸びそうだ」とかそういう投資機関的な目利きをしてしまうことは「面白いところをそぎ落としてしまう作業」でもあるので、マクアケでは行っていません。あくまでも「製品化の能力があるか」「お届け予定のリターンの実現可能性があるか」「支援者に迷惑が掛からないような信頼性が担保されているか」、などを重視しています。
――集まった金額の20%(決済手数料5%を含む)が手数料とのことですが、具体的にはどんなことをしてもらえるんでしょうか。
坊垣:1プロジェクトに1人、必ずキュレーターといわれる担当がつき、実際にお話を伺いながらクラウドファンディングプロジェクトの設計・グロース戦略の立案など丁寧にサポートさせていただきます。基本的にはプロジェクト実行者側でページを作っていただく「入稿」をお願いしています。支援者が「このプロジェクトを応援したい」と思うかどうかはプロダクトの見え方による部分が大きいため、ページの構成や写真の質などはかなり重視しており、プロジェクト実行者が入稿してきてくださったページを見て「このお写真だと製品の良さが伝わりづらい」とか「もっとこのポイントを推した方が共感されるのでは」といったことを客観的な視点でアドバイスさせていただいたりということは常に行っています。また、プロジェクトの魅力を発信する広報活動も広報チームがサポートしています。「Makuake」自体にリピーターの会員(支援者)が増えてきているので、メルマガやSNS等を活用しプロジェクトを告知したり、メディアへの情報発信をサポートしています。
――しかし例えばご年配の方などで、入稿が難しいという場合もありますよね。そういった場合はどうなるのでしょうか。
坊垣:その場合は、「Makuake Creators Network」というサービスでプロのカメラマンやライターを特別価格で紹介することも可能です。
地銀がプロジェクト実行者を紹介する場合も
――プロジェクト実行者自らマクアケに対してクラウドファンディングの審査を申し込むというパターンが主だと思うのですが、紹介というパターンもあるのでしょうか。
坊垣:お問い合わせ自体は毎月1000件程度いただいていますが、中には金融機関からご紹介していただいたプロジェクトもあったりします。
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