「新しいものを生むチャレンジを支えたい」 日本のクラウドファンディング先駆者「Makuake」に聞く、“サービスの意義”と“トラブルから学んだこと”(2/2 ページ)
――銀行とのお付き合いもあるんですね。
坊垣:連携金融機関は約100行となり、銀行からの紹介でプロジェクトが達成した場合は、総額から数%を銀行へ紹介料としてお支払いするといった連携内容の金融機関もございます。金融機関の皆さまにとっては、取引先企業の支援にも関わるところでメリットになっていると思います。
――逆にマクアケ側から企業やプロジェクト実行者に「クラウドファンディングをやりませんか」と持ち掛けることはないのでしょうか。
坊垣:大企業の研究機関などに入り込んで、研究技術を活用した商品企画からご一緒し、クラウドファンディングプロジェクトとして世に生み出すことをサポートする「Makuake Incubation Studio」というサービスはありますが、基本的にはプロジェクト実行者や企業から相談を受けてプロジェクトが始まるという感じです。
――先ほど、プロジェクトに関するアドバイスが大事だというお話もありましたが、達成率1000%とか600%になっているプロジェクトもありますよね。あれはあえてハードルを低くして達成率をあげようという戦略なのですか。
坊垣:いえ、達成率に関しては本当に予測がつかなくて、ふたを開けてみたら……という感じで全く狙っていません。というか狙えません(笑)。ちなみにマクアケでは、目標金額達成でプロジェクト実施(サクセスしなければ返金)という「All or Nothing」と目標達成しなくてもリターンがもらえる「All in」という2タイプの方法を採用しており、約9割の方が「All in」を選択されます。
過去最高の支援を集めたプロジェクトは?
――多くの支援を集めるプロジェクトはどんな点が優れているのでしょうか。
坊垣:プロジェクト発案者ご本人が一生懸命取り組まれたプロジェクトは多くの支援を集める傾向にあると思います。まずはプロジェクト発案者の周辺の方から興味を持っていただき、そこから徐々に広めていきつつ、「今何をやっているのか」「商品の特徴は何なのか」を小まめに活動報告していただくといった地道な活動が達成率を左右します。重要なのは商品の魅力を最大限に発信していただくという点で、SNSやメディアを活用する場合もあります。
――マクアケ史上最大の支援を集めたプロジェクトはなんですか。
坊垣:自転車とバイクの良いところを併せ持った「glafitバイク」のプロジェクトです。達成率は4266%で、1284人の方から1億2800万4810円の支援を受けました。このプロジェクトでは、試乗会イベントを開催するなどしてメディアを巻き込んだ宣伝戦略がうまく行ったところが成功の秘訣だったと思います。当初は400台限定としてスタートしましたが、最終的には1000台まで上限を引き上げる人気となりました。
――アニメ映画「この世界の片隅に」のプロジェクトもかなり注目を集めましたね。
坊垣:「この世界の片隅に」に関しては、クラウドファンディングスタート以前から制作に入っておられたプロジェクトです。原作のファンも片渕須直監督のファンも熱量が高いものと理解していましたが、想定していた以上の盛り上がりになって驚きました。プロジェクトスタート以降に「この世界の片隅に」のファンになった方もいらっしゃって、多くの方の記憶に残るプロジェクトの一つになったと思います。
過去のプロジェクトの反省点と今後の展望
――過去にねとらぼでも、“360度電動歯ブラシ&ホワイトニング”製品「V-WHITE+」の到着商品不備や、「ものづくりマニアの撥水リュック」の不着トラブルなどを取り上げたことがありますが、プロジェクトが増えてくることによってトラブルの発生リスクも増えてくると思います。こうしたトラブルへの対応についてはどうお考えでしょうか。
坊垣:Makukeのプロジェクトは、法的には支援者と実行者との民間契約ですので、支援者から連絡を受けたものについては全てプロジェクト実行者側にお伝えし、2者間でのやりとりをお願いしています。しかし、個人での対応が不可能になるケースも存在しており、前述の2商品のようにマクアケ側が間に入って問題の解決を目指したプロジェクトもありました。
過去の例では人気が出過ぎて生産が追い付かなかったという点が問題となったため、「受注の生産個数を絞ること」「半年以内にリターンを返せる体制づくりを心掛けること」「生産能力のチェックを厳格化すること」などの項目についてより厳しく審査を行うなど、弊社としても反省すべき部分については体制を改めました。支援者と実行者との問題について弊社が法的には責任追及をされないとしても、プラットフォームが永続していくためにできる限りのことをやっていく所存ですので、引き続きご期待に沿えるような体制づくりを続けたいと考えています。
――また最近では、いびき防止グッズ「イビキトリーナ」のクラウドファンディングを行った輸入貿易会社「アスタイル」が支援者に製品を届けないまま、破産手続きを行い波紋を呼びました。こちらについてはどういった対応を行ったのでしょうか。
坊垣:弊社にとっても破産は初めてのケースでしたが、2019年2月に破産したとの報告を受けて以来、支援者救済ということを第一に考えてさまざまな対応を検討してきました。今回は異例ではありますが、支援者337人全員にMakuakeが返金対応をするという対応をとらせて頂くこととし、Makuakeとご連絡がついた支援者の方に対しては3月8日以降順次返金対応を行っています。またアスタイルではほかにも「SMARK(スマーク)」という翻訳機のクラウドファンディングを行っており、こちらも製品が届かないままの破産となりましたので、同様にMakuakeが立て替える形で支援者全員に返金対応をするという方針で対応を続けています。
今回は、実行者が「破産」という形で不在となってしまったためイレギュラーで支援者の皆様には全額返金対応という対応を取らせていただきました。今後はトラブルが発生しないように努めてまいりますが、起きてしまったトラブルに関してはケースバイケースで対応を出来ればと考えております。
――最後に「Makuake」はどんな存在であり続けたいか、一言お願いします。
坊垣:新しいものを生んでいくチャレンジを支え、最大化することが、私たちMakuakeが存在する意義です。プロジェクト実行者の新たな挑戦は、支援者の方の応援があってこそなので、支援者の方には本当に感謝しています。しかし、新しくできあがるものには必ずリスクは存在し、そのリスクをプラットフォームだけが負担するというのは難しいというのも現実です。今後は一層「クラウドファンディングはEコマースとは異なった仕組みで、応援プラットフォームである」ということを周知しながら、プロジェクト実行者、支援者と一緒になって、ニーズがあるものが生まれやすい世の中にしていけるよう努めたいと思います。
この他にもマクアケでは、伊勢丹新宿本店とコラボして「クラウドファンディングPROGRAM」というリアル展示プログラムスペースを作るなどプロジェクト実行製品やサービスに対する理解を深めるさまざまな活動を行っているとのこと。今後はアジア圏など、日本と文化の近い国での展開についても検討しているそうです。
(Kikka)
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