なぜレジ袋を全国一律で有料化? レジ袋規制の新方針に“納得できない人”が相次ぐ理由(1/2 ページ)

原田環境大臣が2月末の会見で発表した方針。

» 2019年03月05日 12時00分 公開
[ねとらぼ調査隊ねとらぼ]

 原田義昭環境大臣が2月26日の会見で、全国一律でレジ袋有料化を義務付ける方針を明らかに―― このような報道に、ネット上では「なぜレジ袋ばかりが、やり玉に上がるのか」「意味があるのか」などの声があがっています。

 「エコバッグ/マイバッグを使おう」というフレーズに聞き覚えがあるように、レジ袋削減の取り組みは以前から進められているのですが、今回の動きに対し、なぜ批判的な人が現れているのでしょうか。全国一律レジ袋有料化が“納得しにくいポイント”をまとめてみました。



「レジ袋を使ってはいけない理由」のややこしさ

 レジ袋は広島県のメーカー・中川製袋化工が昭和47(1972)年に開発したといわれており、昭和50年以降、スーパーなどの商品持ち帰り向けに定着。しかし、環境省によれば、国内では平成19(2007)年に改正容器包装リサイクル法が施行され、レジ袋をはじめとした容器包装を多用する小売業者に対し、「国が定める判断の基準に基づき」、排出抑制を求めることになったとのこと。

 また、海外に目を向けると、日本よりも早くからレジ袋規制に力を入れていた国・地域が少なくなく、例えば、有料化については、ヨーロッパでは2000年代前半までに大部分の国で、アジアでも2002年に韓国、台湾で実施されています。

 なぜ、このようなレジ袋削減の動きが起こっているのでしょうか。ネット上を調べると「プラスチック製品で自然に還らない」「海洋生物などが誤って食べてしまう」「ごみ削減につながる」「焼却処分は地球温暖化につながる」「石油資源の消費抑制」など、地球環境と結び付けた解説が数多く見られます。

 ただ、“環境問題の常”とでも言うべきか、「家庭ごみを占めるレジ袋の割合は小さい。もっと取り組むべき問題があるのではないか」「代わりに使うエコバッグの方が環境負荷が高い可能性は?」「生分解性プラスチックを使えばよいのでは?」といった反対意見も存在。その真偽はさておいて、「情報が錯綜しており、ややこしい問題になっている」といっても間違いではなさそうです。

 ちなみに、環境問題以外の理由が掲げられていることもあり、海外では「レジ袋が散乱すると景観が悪くなり、観光業に悪影響」「投げ捨てられたビニール袋で排水管が詰まり、雨季に洪水が発生するリスクがある」「ヒンズー教で神聖視されている牛が食べ、死亡するトラブルが多発」といったものも。

 あえて一言でまとめるなら「レジ袋削減の動きはさまざまな理由から世界各地で進められており、日本も例外ではない」といったところでしょうか。


「国家レベルのプラスチック製バッグ禁止、発泡スチレン規制」についてまとめた図(国連環境計画(UNEP)が2018年に発表した、使い捨てプラスチック問題の報告書「Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability」より)


州や市など、準国家レベルでの対応に関してまとめられた図(「Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability」より)

有料化で“メリットがなくなる協力者”がいる

 環境省が2018年にまとめた「プラスチック資源循環戦略(案)」には「(レジ袋の)有料化義務化(無料配布禁止等)をはじめ、無償頒布を止め『価値づけ』をすること等を通じて、消費者のライフスタイル変革を促します」という記載があります。

 すでに一部自治体では「レジ袋を使わない消費者に対し、特典などを与える」というようなアプローチが採用されているのですが、なぜこのような「レジ袋を断るとプラス」ではなく、「使うとマイナス」になる有料化を進めようとしているのでしょうか。


一例を挙げると、福岡市では有料化のほか、「マイバッグの提供」「レジ袋を使用しない来店者への特典の提供」などを認めています(同市Webサイトより)

 同省によれば、「世界でも既に60カ国以上がレジ袋の有料化等の制度を導入している状況」で、国内では「有料化によってマイバッグの携行が浸透することなどにより、レジ袋辞退率が9割を超える実績」もあるとのこと。つまり、「定番の手法で、効果も期待しやすい」というわけですが……現時点で特典などを受け取っている人にとっては、ちょっと喜びにくい話かもしれません。

すでに全国的に行われているのに、「全国一律」体制に移行する理由

 環境省の「レジ袋に係る調査」(平成28年度)によれば、レジ袋削減に取り組んでいる都道府県は47カ所。つまり、現時点で全国的に行われていることになり、原田環境大臣が述べた「全国一律」方針の重点は「一律」にある可能性が考えられます。

 経団連は、先述の「プラスチック資源循環戦略(案)」へのパブリックコメントを公開しているのですが、そこでは「事業者間に不公平感が起こったり消費者が混乱したりしないように、法的な措置をとって全国一律の制度にする必要がある」という見解が示されています。


経団連のパブリックコメント。「政府が前面に立つのは構わないが、やるならしっかり」という立場のようです

 特に“事業者間での不公平”については都道府県も問題視しているようで、環境省に以下のような報告を行っています。

  • 栃木県:同業種(食品スーパー)の間でも足並みがそろわず、売り上げの減少を懸念して二の足を踏む事業者が多い
  • 愛知県:ある店舗がレジ袋有料化を中止し無料配布を再開すると、近隣店舗でもそれに追随する傾向がある
  • 京都府:大手スーパーが有料化に難色を示しているため、その他スーパーでの有料化が厳しい

※いずれもレジ袋に係る調査(平成28年度)にて「レジ袋削減に係る取組を進めるにあたっての課題」として回答

 また、「地域全体の事業者が足並みをそろえるには、政府による規制強化が必要」という意見もあるとのこと。一般人には分かりにくいところですが、自治体の間では“手詰まり感”が広まっているのかもしれません。

 なお、報道によれば、原田環境大臣はレジ袋有料化について「法律的な措置も必要」と述べたとのことですが、実は、今から10年以上前、小池百合子環境大臣(当時)も同じ問題について発言したことが。その際は「(レジ袋有料化の)法制化というのは、それこそ憲法問題にまでいってしまう話しなんで、どうすればいいのか」としており、一筋縄にはいかない問題であることが伺えます。

一部自治体も訴える「実施目的、根拠の分からなさ」

 レジ袋に対するよくある批判の1つに「購入した商品を持ち運ぶわずかな時間しか使わないから無駄」というものがあるのですが、実際にはごみ袋代わりに使える地域も存在。また、ごみ箱の内袋として利用している人もかなり多いのでは? このような事情から「レジ袋が必要視されている実態がある」と認めている自治体もあります。ある種の“生活必需品”になっているというわけです。

 現在の状況から、レジ袋の使用量をさらに減らしていくためにはどうすればいいのか。このような課題に対する自治体の回答で散見されるのは「消費者、事業者の理解を得る」というもの。経団連もまた「政府・地方自治体等が率先して国民理解の醸成に努める」べきだとの立場を示しています。

 しかし、「レジ袋に係る調査」(平成28年度)で、一部の都道府県は次のような回答を行っており、「レジ袋削減の取り組みは、そもそも何のために行われているのか」と疑問を抱いてしまう人がいるのも当然かもしれません。

  • 秋田県:説得力のある呼びかけを行うため、レジ袋の削減による二酸化炭素排出量の削減効果を明確に示したデータ(資料)を提示・公表していただきたい(県内市町村からも要望あり)
  • 埼玉県:レジ袋削減の目的、施策の位置付けを踏まえ、国における今後の取組についてご教示いただきたい
  • 北海道:レジ袋の削減のみを普及啓発するのではなく、購買全般における簡易包装の推進や容器の再利用等も取り入れた普及啓発も検討した方がよいと思われる

※いずれも「その他の課題に対する回答」より

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/18/news145.jpg “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
  3. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/17/news197.jpg 「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
  5. /nl/articles/2412/17/news078.jpg 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  6. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  7. /nl/articles/2412/18/news059.jpg 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
  8. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. /nl/articles/2412/18/news056.jpg 日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示
  10. /nl/articles/2412/17/news047.jpg 遊ばなくなった“シルバニアのおうち”を大改造したら…… 娘が喜んだ“すてきなアイデア”に「なんということでしょう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」