小中学校へ携帯電話持ち込み、10年で「原則禁止→解禁」の大転換 ネット上は解禁反対派が6割(1/2 ページ)

どうして真逆の対応に?

» 2019年03月15日 12時00分 公開
[ねとらぼ調査隊ねとらぼ]

 「小中学校へのスマホ持ち込み原則禁止」方針、文科省が見直しへ―― 各社が報じているこのニュースが、議論を呼んでいます。

 文科省は2009年、「携帯電話は、学校における教育活動に直接必要のない物」などの理由から、小中学校では生徒の持ち込みを「原則禁止にすべきである」と通知。それから10年たった今、なぜ指針見直しの動きが起こっているのでしょうか。



「持ち込み禁止」が生まれた時代背景

 先述の通知が行われた当時は「携帯電話を持っている子ども」が珍しくなくなっており、文科省の調査によれば、小学6年生の約25%、中学2年生の約46%、高校2年生は約96%が所有していたとのこと。いわゆる「学校裏サイト(※)」などが問題視されていた時期で、同省はネットいじめの対応事例集を公開するなどの対応を行っていました。

※学校裏サイト:特定の学校の話題を扱う非公式コミュニティーサイト。個人に対する悪口が実名で書き込まれるなどの被害が指摘されている。

 また、全国に先駆けて携帯電話持ち込み禁止の方針を打ち出した大阪府の実態調査(2008年度)では「携帯電話依存傾向が高いほど学習時間が短く、いじめ被害者、加害者になりやすい」と考察。さらに、保護者が認識しているよりも「児童生徒はネットをよく利用」「掲示板、ブログで悪口の被害」「携帯電話の使い方について、家庭内での約束を守っていない」とも結論付けられています。

 その一方で、「携帯電話を持っていて便利と思いますか」という質問に対しては小学生〜高校生のいずれの年代でも、「とてもそう思う/まあまあそう思う」という回答が大多数で、理由で多いのは「緊急や普段の連絡に便利」というもの。保護者が「子どもに携帯電話を持たせている」理由も「通常及び緊急の連絡手段のため」が最多となっています。


大阪府「平成20年度携帯電話の利用についての実態把握調査」より。携帯電話依存に関しては、かなりネガティブな印象を与える結果に


保護者の目が届きにくいのも、携帯電話の特徴としています(大阪府「平成20年度携帯電話の利用についての実態把握調査」より)


「携帯電話を持っていて便利と思いますか」への回答。ほとんどの子どもが「便利」という認識(大阪府「平成20年度携帯電話の利用についての実態把握調査」より)


保護者側も「連絡手段」という実用的な理由で、所持させることが多いもよう(大阪府「平成20年度携帯電話の利用についての実態把握調査」より)

 つまり、携帯電話は「連絡などに便利なもの」「いじめ、学力低下などのリスクがあるもの」という二面性があり、うまく扱えれば役立ちそうですが、「大人側が使用状況を把握しがたい」という難しさがあるというわけ。小中学校における携帯電話持ち込み禁止はこういった複雑な問題に行政がとった対処法“の1つ”で、大阪府も文科省も「合わせて『家庭内でのルール作り』『有害情報に関する啓発活動』などが必要」としています。

「携帯電話持ち込み“解禁”=学校で自由に使える」ではない

 報道によれば、大阪府は同府北部を震源として発生した地震(2018年6月18日)をきっかけに、小中学校への携帯電話の持ち込みを“解禁”する新ガイドライン案を制作。2019年2月19日、この件に関し、記者から質問を受けた柴山昌彦文部科学大臣は、文科省でも「大阪府の動向を注視しつつ」「(方針の)見直しに係る検討」を行う考えを明らかにしています

 とにもかくにも、大阪府が一足早く“解禁”の方針を明らかにした形になりますが、これは「小中学校で自由に携帯電話を使用できる」というわけではありません。携帯電話持ち込みの許可はあくまで「防災・防犯」のため。毎日新聞の報道によると、大阪府の作成したガイドライン素案は以下のような内容が記載されており、「持ってきても、緊急時以外は使わせない」方針であることが伺えます。

  • 登下校の所持の目的は防災・防犯のため
  • 校内では使わない
  • 登下校時も緊急時以外使わない
  • 保護者も災害などの緊急時以外は連絡しない

※毎日新聞「公立小中学校でスマホ持ち込みのガイドライン作成 大阪府教委が素案」より

 さらに家庭での使用時間、SNSの利用方法などにルールが設定されており、従来の方針をおおむね踏襲するものともいえそうです。

 校内への持ち込みに関しては大きく変わったように見えますが、現行の文科省の方針でも「通学時における安全等の観点等特別やむを得ない事情」がある場合は「居場所確認や通話機能に限定した携帯電話の持ち込み」を例外的に許可してよいとされています。

 例えば、南海トラフ地震が発生すると、大阪府では甚大な被害が出てしまう可能性が。大阪府の新方針は、子どもに携帯電話を持たせるデメリットよりも、「安全等の観点」を重視してメリットを生かす方向に舵を切った結果なのかもしれません。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/18/news145.jpg “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
  3. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  5. /nl/articles/2412/17/news197.jpg 「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
  6. /nl/articles/2412/17/news078.jpg 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  7. /nl/articles/2412/18/news059.jpg 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  10. /nl/articles/2412/18/news056.jpg 日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」