ニュース
» 2019年03月27日 11時30分 公開

新元号に採用? 『古事記』と『日本書紀』、それぞれの共通点と相違点(1/2 ページ)

受験知識だけではもったいない。

[植田麦,ねとらぼ]

 新元号案の話題がにぎやかになってきました。時事通信によると、3月14日に識者への委嘱を行ったとのことです。

 幸い、わたしは委嘱されていませんが、もしも14日に突然「新元号を考えろ。締め切りは1週間」とか言われたら、「無茶ぶり過ぎじゃね?」と叫びそうです。

 ところで、今回の元号策定にあたっては、日本の古典籍が出典として採用される可能性も取り沙汰されています。その中でも、『古事記』『日本書紀』が有力視されています。本記事では、もしかしたら新元号に採用されるかもしれない、『古事記』と『日本書紀』について解説します。


植田麦

明治大学政治経済学部准教授。研究の専門は古代を中心とした日本文学と日本語学。



どちらも700年代初頭の成立

 日本史でも古典でも、最初に出てくる書物が、『古事記』と『日本書紀』です。『古事記』は712年『日本書紀』は720年にできました。2つの書物を簡単にまとめると、こんなふうになります。



 『古事記』には序文があって、和銅5年(西暦712年)に太安万侶(おおのやすまろ)と稗田阿礼(ひえだのあれ)によって完成されたことが明らかです。ただし、この序文自体が後の時代になって付け加えられたとする説もあります。とはいえ、その書きぶりから考えて、『古事記』上巻から下巻が奈良時代の相当に古い時代にできたものであることは確かです。

 『日本書紀』には、それ自体に完成した時期は書かれていません。しかしながら、『日本書紀』のあとにできた『続日本紀(しょくにほんぎ)』の中に、養老4年(西暦720年)の記事として、舎人親王が『日本書紀』を完成させたことが記されています。


共通点と相違点(1) 漢字で書かれている書物

 このように、ほぼ同時期にできた『古事記』と『日本書紀』、多くの共通点をもつとともに、異なるところもまた、多々あります。

 そのひとつが、「どちらも漢字で書かれていること」です。この当時、日本列島に住むひとびとが「文字を書く」ことは、「漢字で書く」ことと同義でした。漢字はもちろん、中国大陸から輸入されたものです。しかし、彼らにとって「漢字で書く」ことは、必ずしも「中国語で書く」ことを意味しません。その典型が、『古事記』と『日本書紀』です。

 『日本書紀』は、古代の中国人が読んでも、その内容をおおむね理解できるようなものになっています。つまり、古代の中国語文=正格漢文を主とした書き方です。一方、『古事記』は日本人が独自にアレンジした用法で書くところが多くあります。このようなものをクレオールと呼ぶことがあります。

 実は『古事記』の書き方については研究者によっても異なる見方があって、中国語の書き方の範疇(はんちゅう)にすぎないと考えるひとから、積極的に日本語として書くことを目指したと考えるひとまで、さまざまです。

 ともあれ、ここでは、『古事記』と『日本書紀』が、同じく漢字で書かれているものの、その書き方は全く異なるものである、とご理解ください。


共通点と相違点(2) 神話と歴史の書物

 おそらく、多くの方が、『古事記』や『日本書紀』というと、「神話や歴史の書かれた古典」と考えていると思います。また、「内容もほとんど同じ」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。

 どちらも、その通りです。つまり、2つの書物の共通点です。しかし、これにもやはり相違点があります。

 ひとつは、神話の扱いです。『古事記』の神話は上巻に集中していて、そのまま中巻から下巻へと時間が連続しています。内容を簡単にまとめると、上巻の神話的世界では世界ができたあと、天皇の祖先にあたる神がその世界で活躍します。そして、中巻以降の歴史的世界で、天皇の治世が語られます。

 つまり、神話と歴史が一直線につながった世界観です。


古事記。江戸時代に本居宣長の弟子が刊行したもの

 『日本書紀』も似てはいるものの、神話的世界の扱いが異なります。やはり世界の誕生が語られ、そして天皇の祖先神たちの活躍が描かれるのですが、本編のストーリーに対して「別の書物によると、異なったこんな話がある」と、サブストーリーのようなエピソードが語られるのです。そして、サブストーリーは行き止まりになっています。


日本書紀。こちらも江戸時代に刊行されたもの

 簡単にいえば、『古事記』がストーリー分岐のないロールプレイングゲームだとしたら、『日本書紀』はストーリー分岐のあるノベルゲーム(バッドエンドあり)です。なお、『日本書紀』のこの性質は神話を語る巻第一と巻第二だけです。巻第三以降は、基本的に一本道です。

 また、『日本書紀』の神話のメインストーリーをたどっても、『古事記』とは同じになりません。たとえば、『古事記』ではイザナミが死にますが、『日本書紀』では死にません(サブストーリーでは死にます)。

 また、分量も大きくちがっていて、『古事記』に比べて『日本書紀』は神話の比率が低めです。つまり、『日本書紀』は歴史書としての性質がより強い、といえます。

 さらに、『日本書紀』は中国の典籍の利用箇所が多く、その意味で中国的です。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2207/03/news042.jpg 高木菜那、30歳の誕生日に“イケメン”ショット かき上げ赤リップに「誰だ!? この色男!!」「ヴィジュアル系みたい」
  2. /nl/articles/2207/03/news051.jpg 元キャバ嬢・エンリケ、短期間の6キロ減で「初の救急搬送」 “無理な食事制限”で卒倒 「身体に負担かけてた」
  3. /nl/articles/2206/28/news176.jpg 「別れても好きな人」の歌詞通り渋谷から歩いたらどうなる?→約16キロの過酷な道程が発覚、驚きと笑いを呼ぶ
  4. /nl/articles/2207/02/news083.jpg 木村多江、土屋太鳳からの直筆手紙に喜び 特徴的な“フォント風文字”に「誠実ですね!」「字でわかる」の声
  5. /nl/articles/2207/03/news003.jpg 塀に並んだハスキー型のマスク、よく見てみると…… 本物のハスキーがのぞいている姿に「作った人は天才w」の声【英】
  6. /nl/articles/2207/03/news009.jpg 飼い主のごはんを見たワンコ→「これと交換どうですか?」 食べかけのおやつで物々交換をねだる賢さに称賛の声
  7. /nl/articles/2207/02/news073.jpg 桃井かおり、「GLAY」TAKURO夫婦とLAで遭遇 豪華ショットに「スターがスターにバッタリ」「凄すぎる〜!」
  8. /nl/articles/2206/28/news144.jpg なでなでしていたら突然スズメが豹変して……? “鳥がいかに理不尽かが良くわかる動画”に共感の声
  9. /nl/articles/2207/02/news066.jpg 香取慎吾&草なぎ剛、少しいいとこ住んでそうな“阿佐ヶ谷姉妹風”ショット 「クオリティー高い!」「違和感なさすぎ」
  10. /nl/articles/2207/02/news001.jpg お兄ちゃん猫が、子猫をぎゅっと抱きしめてすやすや 2匹とも幸せそうな寝顔に「幸せ涙が溢れてくる」の声

先週の総合アクセスTOP10

  1. めちゃくちゃ目立ちそう! 元俳優・成宮寛貴、ほぼ変装なしのディズニーシーに現れた姿がオーラだだ漏れ
  2. 尼崎市が全市民情報流出の会見でUSBのパスワード桁数を言ってしまいネット総ツッコミ 「情報セキュリティの教材か?」「やらかし重ねてるの面白かった」
  3. 1匹の子猫を保護すると……草むらから子猫の群れが! 助けを求める様に寄ってくる姿がいじらしい【米】
  4. 入院中の堀ちえみ、クレーム電話連発する“心ない人物”に苦悩 顔も知らない相手に「人生を阻まれてしまいます」
  5. よそ者には厳しい甲斐犬が、家族と認めた子柴犬を…… 全力で守る姿に「深い愛情に泣ける」「誠実さがかわいい」
  6. パパ、10時間ぶりの帰宅でワンコの感情が…… 大爆発!!→体当たりするゴールデンレトリバーがいとおしい
  7. YOSHIKI、母親の四十九日で生まれ故郷へ 喪服姿で悲しみを吐露「I miss my mother」
  8. 「私はどん底に居ました」 小林麻耶、妹・麻央さんの命日に思い吐露「真実を伝えるしかないと死を考えたことも」
  9. ちょっと窓を閉めただけで、ゴールデンレトリバーの表情が…… この世の終わりのようなお顔が抱きしめたくなる
  10. 柴犬が散歩中、ノラの子猫たちに囲まれて…… 迫力におされて全く進めない姿が応援したくなる

先月の総合アクセスTOP10

  1. 有料スペースに乱入、道具を勝手に持ち出し…… 関電工労組の関係者がキャンプ場でモラルを欠く行為、Twitterでユーザーが被害を投稿
  2. 「皆様のご不満を招く原因だった」栗山千明、“百万石まつり”の撮影禁止騒動を謝罪 観客は「感謝しかありません」
  3. ダルビッシュ有&聖子、14歳息子のピッチングがすでに大物 「球速も相当出てる」「アスリート遺伝子スゴい」
  4. 息子を必死で追いかけてきた子猫を保護→1年後…… 美猫に成長したビフォーアフターに「幸せを運んできましたね」の声
  5. 野口五郎、20歳になったピアニストの娘と乾杯 「娘はカシスソーダ! 僕はハイボール!」
  6. 「めっちゃ恥ずかしい」 平嶋夏海、魅惑の「峰不二子スタイル」で橋本梨菜とお色気ツーリング 「すごいコラボやなぁ」の声
  7. ニコール・キッドマン、ネットで酷評された“54歳の女子高生”スタイルの真相を語る 「何考えてたんだろう?」
  8. 坂口杏里さん、夫の鍛え上げた上腕に抱きつくラブラブ2ショット 「旦那は格闘技もやってるから、ムキムキ」
  9. 大家に「何でもしていい」と言われた結果 → 台所が隠れ家バー風に! DIYでリフォームした部屋の変化に驚きの声
  10. 猫にボールを投げた飼い主さん、“1時間全力謝罪”する事態に!? 顔面直撃した猫の表情に「笑っちゃいました」