ヤフーとアスクルでバトル勃発 「業績悪いので社長退任を」「だが断る」 背景にある「LOHACO」問題

赤字が続いているLOHACOが焦点になっています。

» 2019年07月17日 14時22分 公開
[観音崎FPねとらぼ]

 ヤフーが7月17日に発表したニュースリリースがネット業界や株式市場に波紋を広げています。内容は、連結子会社であるアスクルの現社長の再任に反対するというもので、要するに退任要求です。業績低迷を理由に挙げていますが、アスクルはこれに反発し、提携解消の協議を申し入れたと発表しました。背景には消費者向け通販サイト「LOHACO」事業の収益性が改善しないという問題があります。

フォト LOHACOを巡りヤフーとアスクルで騒動勃発

 ヤフーの発表では、8月2日に予定しているアスクルの定時株主総会で、岩田彰一郎代表取締役社長について、再任に反対する議決権を行使するとのこと。ヤフーは2012年にアスクルと資本・業務提携を結び、アスクル株式の約45%を保有する筆頭株主ですから、ヤフーの意向は大きな影響力を持ちます。

 アスクルの母体だった文具メーカーのプラスはヤフーに賛同を表明。岩田社長の再任に反対すると発表しています。プラスはアスクル株式の10%超を保有しており、ヤフーとプラスで過半数を占めることになります。

 ヤフーが社長に退任要求を突きつけた理由として挙げているのが「業績の低迷」です。特に問題視しているのが、ヤフーの協力で運営しているLOHACO事業。7月3日に発表したアスクルの決算によると、LOHACO事業は約92億円の赤字でした。12年のサービス開始から収益改善が見られないとして、「当社としては現在のEコマース市場の環境下における岩田社長の事業計画の立案力および事業計画の遂行力に疑問を抱くに至りました」としています。

 現代ビジネスの報道によると、ヤフーはLOHACO事業をヤフーに譲渡するよう要請したとのことです。ただ、アスクルはLOHACO事業は今後収益が改善するとしており、東証1部に上場する独立した企業でもありますから、既存株主の利益につながらないとして拒否したようです。

フォト 20年以上にわたってアスクルの社長を務める岩田氏(アスクルのWebサイトより)

 アスクルは17日、ヤフーの発表を受け、「ヤフー社より当社社長に対する退陣要求を受けていること、ならびに、当社からヤフー社に対し提携関係の解消協議を申し入れたことは事実であります」と発表しました。「提携解消」でヤフーに反撃する構えを見せていますが、ヤフーのニュースリリースの文面を読むに、筆頭株主であるヤフーがアスクル株を売却する可能性は低そうです。

LOHACOの赤字と、経営の若返り

 7月3日にアスクルが発表した19年5月期の連結決算は、売上高が前期から7.5%増の3874億円、本業のもうけを示す営業利益が7.8%増の45億円、最終利益は4億3400万円でした。黒字は確保しているものの、売上高営業利益率は1%強という低い水準にあります。

 要因は92億円の営業赤字を計上したLOHACO事業です。2017年2月に発生した物流拠点の火災や、アスクルが「宅配クライシス」と呼ぶ配送料の値上げなど、アスクル側に言い分はあると思いますが、ヤフーがご丁寧にもニュースリリースで過去6年の赤字の推移を列挙しているように、LOHACO事業が火災や宅配問題以前から赤字が続いていることは事実です。

フォト ヤフーのニュースリリースはLOHACO事業の赤字の推移を列挙している

 アスクルの岩田社長に退任を迫るヤフーは、「経営の若返り」が必要だとしています。岩田社長は68歳。文具メーカーのプラスでアスクル事業を手がけ、1997年にアスクルが独立したのに伴い社長に就任して以来、20年超にわたってアスクルのトップを務めています。

 ヤフーはアスクルについて「抜本的な変革が必要」とし、「新たな経営陣のもとで新たな経営戦略を推し進めるのが最善と考えるに至りました」と説明しています。

 一方、アスクルはLOHACO事業について、今期(20年5月期)は「独自価値ECへの転換」に注力し、来期(21年5月期)以降に「再びアクセルを踏む」と説明しています。今期のLOHACO事業は増収を見込むものの、64億円の営業赤字を予想。アスクルは「大幅な収益改善」だと説明していますが、黒字転換にはしばらくかかりそうです。

フォト LOHACO事業は営業赤字が続く(アスクルの決算説明資料より)

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