レビュー
» 2019年08月25日 11時00分 公開

18話直前考察「あなたの番です」石崎洋子と尾野幹葉が果たす役割は? 最終話ラストシーンを大胆推理(1/2 ページ)

大ヒット米ドラマ「ツイン・ピークス」との共通点。

 毎週日曜日10時30分から放送のドラマ「あなたの番です」18話直前考察である。


あなたの番です もう一度考える「あなたの番です」とはどういう物語なのか イラスト/たけだあや

 ぐぬぬ。17話直後考察でこう書いた。

 “内山が手をくだしたのがほぼ確実なのは、甲野貴文、神谷将人、黒島沙和の3件しかない。しかも、その3件は、「口角上げ」ではないのだ。

 神谷将人(浅香航大)は「口角上げ」だった。間違えた。ごめんなさい。

 内山が「口角上げ殺人」の犯人ではないというアイデアを軸に考えていたので、うっかり書いてしまった。

 (コメント欄の指摘や大胆な予想、推理合戦、読んでいます。黒島沙和が穂香というのも年齢的に無理がありましたね。ありがとうございます)


あなたの番ですあなたの番ですあなたの番です 神谷将人(26)【浅香航大】刑事、内山達生【大内田悠平】(21)黒島沙和のストーカー、黒島沙和(21)【西野七瀬】202号室

石崎洋子と尾野幹葉は何を見るのか?

 こういった「自分の考えに固執するために見る目がくもってしまう」という現象は、本作「あなたの番です」のテーマのひとつだろう。

 交換殺人が起きているに違いないと錯覚して、人を殺してしまう。

 恐怖のために、誰でも彼でも犯人扱いしてしまう。

 人のミスや気に食わない言動に声を荒げて非難してしまう。

 といったことが、この事件を混乱させている。

 だからこそ、石崎洋子(三倉佳奈:104号室)は、ここから先、何かトンデモナイことを引き起こすだろう。尾野幹葉(奈緒:301号室)の思い込みは暴走してトンデモナイことになるだろう。

 こういったことが、住民同士で増幅され「マンション内の同調圧力」になり、多くの人を間違った判断に陥れ、見えもしない真相を見てしまう。

 同じ罠に陥ってミスってしまった。


あなたの番ですあなたの番です 石崎洋子(35)【三倉佳奈】104号室、尾野幹葉(25)【奈緒】301号室

事件の鍵は?

 この連載「あなたの番です各話レビュー」は、第1話から考察を行っている。

 検索「あなたの番です 考察」で影響力のあるニュースを調べると、この連載がずらずらと出てくるそうだ(「あなたの番です」で盛り上がる「考察」という新しいドラマの楽しみ方:境治:Yahoo!ニュース個人)。ありがたい。

 そして、第2話直後考察で、この事件のカギは「マンション内の同調圧力」であると推理し、ずっとその線で考察している。

床島の死は何だったのか?

 だから、床島比呂志(竹中直人:元管理人)の死は、殺人でもなく、自殺でもなく、事故死だ、と。

 “誰かが仕組んだという展開にするよりも「事故死で犯人などいなかったのに、マンション内の同調圧力のせいで連続殺人が巻き起こる」という皮肉な展開になるべきなのだ。

 床島が、アンテナを修理しようと屋上にあがって、すべり落ちてしまいアンテナの線にからまって宙吊りになっていただけなのではないか、という推理だ。

誰によって語られるのか?

 実は、この推理、ひとつ大きな欠点があった。

 床島比呂志(竹中直人:管理人)の死が、単なる事故死だとすると、それはどうやって判明するのか。

 もはや、床島の死からこれだけの日数がたつと、警察の現場検証などで事故死を確定する物的証拠が出てくるとは思えない。

 事故死を見ていた者がいたとも思えない。床島本人は死んでいる。

 床島が事故死であれば、誰もそのことを語る人物がいないのだ。

 正直なところ、ドラマ展開的には致命的な欠点であり、この推理は間違っているのかもとも思っていた。


あなたの番です 床島比呂志(60)【竹中直人】管理人

5年前の高知の事件の語られ方

 だが、17話のあるシーンを見て、「あ、こういう展開ならありえる」と気づいた。

 南雅和(田中哲司:502号室)が、高知でのことを回想するシーンだ。ヘルメットをかぶった田宮淳一郎(生瀬勝久:103号室)らしき男が、高知で南と穂香(南の娘?)と出会っている。5年前に高知で少女殺害事件が起こっていることが、ここになって明らかになる。

 これだけ重要なシーンを、誰かの推理で問い詰めて語るわけでもなく、本人が思い出したことで映像として観せてしまった。

 そして、思い出した南は、包丁で脅して「あんた人を殺したよね」と田宮に詰め寄る。

 正直なところ、これはパズル的な推理考察をさせる物語としては、ちょっと「ええ!?」という展開だ。

 探偵役の誰かが推理考察し、問い詰めて、解き明かされるのではなく、本人が思い出すだけで重要な過去のシーンが登場することになったわけだから。


あなたの番です 南の記憶で物語が進んでしまう! イラスト/たけだあや


あなたの番ですあなたの番です 南雅和(50)【田中哲司】502号室、田宮淳一郎(58)【生瀬勝久】103号室

 理詰めで推理して解決する物語ではないということを、「あなたの番です」は、いくつかの展開や演出や小道具で示している。

 たとえば、データを入力すると、パーセンテージで怪しい人物を見定めるAIの登場。

 後半になって登場した内山くんがいくつかの事件の犯人という展開(そもそも昔からのストーカーなら、どうしてちょくちょく出しておかなかったんだろう?)。

 多くの登場人物の行動原理が突拍子もないもので、何だって引き起こしかねない。

 これまで犯人が判明したのも、誰かが推理してつきとめたわけではない。

 そういったことを考えると、「あなたの番です」の最大の醍醐味は、理詰めの推理ではなく、「事件をきっかけに人々の奇々怪々な正体が浮き彫りになって、次は何をやらかすのか」という興味だろう。

令和・日本版「ツイン・ピークス」!?

 これは、令和・日本版「ツイン・ピークス」なのではないか。「ツイン・ピークス」は、デビット・リンチ監督総指揮で1990年から放送されたテレビドラマだ。

 田舎町ツイン・ピークスで発見される17歳の少女ローラ・パーマーの死体。

 派遣されたデイル・クーパー特別捜査官が、連続殺人の見解を抱き捜査していくなかで、平穏だと思われた町の人々の裏側が浮き彫りになり、登場人物の奇っ怪な行動と、どうなるのか予想もつかないスリリングな展開で、大ヒットした。

 マンションのキウンクエ蔵前は、田舎町ツイン・ピークスであり、手塚菜奈の死体は、まるで美しき死体ローラ・パーマーだ。

 展開を楽しむために、どうなるのかドキドキ待ち構え、予想し、予想した展開を超えてきたことを喝采(かっさい)する。そういった醍醐味のドラマだ。


あなたの番です 死んだとされている主要人物にバッテンをつけた。殺人の発端は管理人の床島比呂志(竹中直人)の死! イラスト/たけだあや



       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2312/05/news021.jpg 柴犬が見つけた瀕死の子猫、最後の力で立ち上がり…… 優しさが救った小さな命が600万再生「感動と感謝です」
  2. /nl/articles/2312/06/news119.jpg 中尾明慶、「金八」で“めちゃくちゃケンカした同級生”と因縁の再会 10年前の悪態謝り倒し「芸能界でおかしくなっちゃった」
  3. /nl/articles/2312/06/news018.jpg 超大型ワンコ、予想を裏切る“ギャップ萌え”食事シーンが500万表示! お坊っちゃま感あふれる甘えっぷりに「可愛い〜」「品が良いですねw」
  4. /nl/articles/2312/06/news022.jpg インコが“断捨離”したドールハウス、中をのぞいてみると……? 衝撃の光景に「廃墟w」「大変なことにww」
  5. /nl/articles/2312/06/news111.jpg ユージ、新たな愛車は「世界一贅沢なトランポ」 ペルシャ絨毯使用のカスタムカー披露も「僕はバイクを乗せるつもりですが笑」
  6. /nl/articles/2312/06/news036.jpg 掘り起こした土がなかったときのウサギ→ぼう然 では土があったときは? うさうさブルトーザーに「想像を絶する可愛さだった」
  7. /nl/articles/2312/05/news190.jpg 「たった1カ月で行ってしまった」 桃井かおり、YOSHIKIの米国マネージャー追悼 “40年来の無二の親友”だった夫は「涙まだ止まらず」
  8. /nl/articles/1705/16/news143.jpg 「同性愛者を入店させないで」と投書した客に「もう来ないでください」 お店の回答に称賛の声集まる
  9. /nl/articles/2312/05/news138.jpg 田中みな実、“共演した姉”の存在に反響「居るとは聞いていたけど」「激似やなぁ」 すらっとしたたたずまいに「品のあるお方」
  10. /nl/articles/2312/06/news097.jpg 「何処に行っちゃったのかな」 白鳥久美子の息子、生後1か月にして“ちょっと心配”な症状 初受診で医師「この時期に通院する赤ちゃんはいる」
先週の総合アクセスTOP10
  1. オール巨人、30年モノな“伝説の1台”に自負「ここまでキレイな車はない」 国産愛車の雄姿に称賛の声「気品がある」「凄くエレガント」
  2. 「明らかに写真と違う」 東京クリスマスマーケットのフードメニューが物議…… 購入者は落胆「悲しかった」
  3. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  4. 田中みな実、“共演した姉”の存在に反響「居るとは聞いていたけど」「激似やなぁ」 すらっとしたたたずまいに「品のあるお方」
  5. 藤本美貴、“全然かわいくない値段”のテスラにグレードアップ スマホ一つでの注文に「震えちゃ〜う!」
  6. マックで「プレーンなバーガーください」と頼んだら……? 出てきた“予想外の一品”に驚き「知らなかった」
  7. 伊藤沙莉、“激痩せ報道”の真相暴露→広瀬アリスの株が上がってしまう 「辱めったらない」告白に「アリスちゃん、ええ人や〜」
  8. 「あなたは日本人?」突然送られてきた不審なLINE、“まさかの撃退方法”に反響 「センス良い」「返しが秀逸」
  9. “鬼ダイエット”で激やせの「Perfume」あ〜ちゃん、念願の姿に「着れる日が来るなんて」と大喜び
  10. 900万再生のワンコに「電車で笑ってしまった」「つられてめちゃくちゃ笑っちゃうw」 “突然魔王になった犬”に腹を抱える人続出
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
  2. 会話できる子猫に飼い主が「飲み会行っていい?」と聞くと…… まさかの返しに大反響「ぜったい人間語分かってる」
  3. 実は2台持ち! 伊藤かずえ、シーマじゃない“もう一台の愛車”に驚きの声「知りませんでした」 1年点検時に本人「全然違う光景」
  4. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 西城秀樹さんの20歳長男、「デビュー直前」ショットが注目の的 “めちゃくちゃカッコいい”声と姿が「お父さんの若い頃そっくり」「秀樹が喋ってるみたい」
  7. “危険なもの”が体に巻き付いた野良猫、保護を試みると……? 思わずため息が出る結末に「助けようとしてくれてありがとう」【米】
  8. 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. おつまみの貝ひもを食べてたら…… まさかのお宝発見に「良いことありそう」「すごーい!」の声
  10. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」