eスポーツ大会、優勝賞金500万円が10万円に JeSUに批判が集中した「賞金490万円減額問題」の争点を解説(1/2 ページ)
「何のためのプロライセンスなのか」「なぜ中学生だと賞金を受け取れないのか」などネット上で不満が噴出。
「東京ゲームショウ2019」の中で行われた、「ストリートファイターV」「パズル&ドラゴンズ」のeスポーツ大会で、優勝者が正規の賞金を受け取れなかったことが、インターネット上で大きな議論になっています。
具体的には、「ストリートファイターV」(CAPCOM Pro Tour 2019 アジアプレミア)では“ももち”選手が優勝したものの、JeSU(日本eスポーツ連合)が規定するプロライセンスの取得を拒否したため、本来500万円の優勝賞金が10万円相当(副賞含む)へ減額に。また「パズル&ドラゴンズ」(パズドラチャンピオンズカップ TOKYO GAME SHOW 2019)ではJeSUのジュニアライセンスを持つ“ゆわ”選手が優勝しましたが、ジュニアライセンスの規定により優勝賞金500万円を受け取ることができませんでした。
こうした流れを受け、ネット上ではプロライセンス制度や、プロライセンスを発行するJeSU、さらには大会を開催したゲームメーカーなどに批判が集まる形に。一時は「JeSU」がTwitterのトレンドワードに入り、「何のためのプロライセンスなのか」「なぜ中学生だと賞金を受け取れないのか」など、不満の声が一気に吹き出しました。
とはいえ、eスポーツ大会における賞金問題については以前から議論されており、景品表示法や風営法、賭博罪などさまざまな法律も絡んでくることから、業界ですらまだ“落とし所”を探っている段階というのが実情です。一体なぜ、ももち選手・ゆわ選手は賞金を受け取れなかったのか、今回の問題点はどこにあったのか。8月に『みんなが知りたかった 最新eスポーツの教科書』を上梓した、フリーライターの岡安学さんに、今回の件について解説してもらいました。
話を聞いた人:岡安学
eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在はWebや雑誌、ムックなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。
Twitter:@digiyas
ももち選手はなぜ10万円しか受け取れなかった?
―― まず、ももち選手のケースから伺います。ももち選手はなぜ今回、10万円相当(※)しか賞金を受け取れなかったのでしょうか。
※ももち選手が配信で語った内容によると、副賞のモニター代3万9800円を差し引いた「6万200円」が実際に受け取った金額とのこと
岡安:ももち選手が10万円しか受け取れなかったのは、JeSU発行のプロライセンスを持っていなかったからです。大会公式サイトに参加規約が書かれていますが、ライセンスを保有していない場合、賞金の最高額は10万円と書かれています。
8.入賞者に対する賞金の付与に関しては、以下に定める通りとします。
(1)入賞者がJeSUが発行する「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」(以下「プロライセンス」といいます)を保有している場合、規定の金額が支払われます。
(2)入賞者がプロライセンスを保有していない場合、規定の金額にかかわらず賞金の最高額は10万円とします。
(「CAPCOM Pro Tour 2019 アジアプレミア」公式サイトより)
岡安:ちなみに、その次の項目に「上位8人への入賞が確定した時点で、プロライセンスがない人にはライセンスを発行するよ、費用もカプコンが負担するよ」ということも明記されています。ももち選手はそのうえでライセンスの取得を拒否したわけです。これがももち選手の賞金が10万円になった理由です。
9.予選トーナメントを勝ち抜いた上位8名の入賞者のうちプロライセンスを有していない参加者については、カプコンがJeSUの定める「JeSU公認プロライセンス規約(7.2.1)」に則り、JeSUへプロライセンス発行の推薦をいたします。カプコンからの推薦を受けてJeSUが承認した場合、プロライセンスが発行されることとなります。
なお、カプコンは、プロライセンス発行に伴いJeSUに支払う費用の全額を負担します。(対象期間:2020年2月末日迄。)
(「CAPCOM Pro Tour 2019 アジアプレミア」公式サイトより)
―― なるほど、受け取ろうと思えばその場でライセンスを取得し、賞金を受け取ることもできたわけですね。なぜももち選手はライセンス取得を拒否しているのでしょうか。
岡安:過去にももち選手自身がサイトで声明を出したことがありますが(関連記事)、声明の中でももち選手は「なぜ新設される予定の特定の団体に“プロを定義”する資格があるのか」「この制度が、コミュニティーやプレイヤーの意見を無視し、私欲や利権を重視する人たちに作られたものなら、戦う覚悟がある」といったことを語っています。そういった信念に基づき、JeSUのライセンス取得を拒否しているようです。
―― もう1つ、なぜライセンスを持っていないと「10万円」になるのでしょうか。
岡安:ゲーム大会で支払われる賞金について「景品表示法に抵触するのではないか」という指摘があったためです。ただ、実際の条文を読む限りでは、そこまではっきりとした記述があるわけではなく「解釈によってはそうとれる」というくらいです。とはいえ無視することもできず、多くの国内メーカーは安全策として、景品表示法が定める賞金の上限額、つまり「10万円もしくは商品額の20倍まで」に抑えることにしたんです。これが「10万円」という数字の根拠です。一方、プロライセンスを持っている人であれば、明確に「仕事の報酬」として判断されるため、景品表示法に縛られることなく賞金を支払うことができます(※)。
※正確には、景品表示法では「事業者が自己の供給する商品・サービスの購入者の中から募集したモニターに対して提供する謝礼については、モニターとしての作業内容が相応の労力を要するなど、その仕事の報酬などと認められる程度のものであれば景品類には該当しません」という前提があるため。
―― 実際にはモニター代の3万9800円が引かれ「6万200円」の受け取りになったのも、これをクリアするためという理解で合っていますか。
岡安:一応、モニターを提供しているのはカプコンではない第三者なので、景品表示法には抵触しないように思われます。ただ、これはいわゆる「三店方式」の抜け道になりかねないため、一般的には「総額」に含まれるようです。
ゆわ選手はなぜ賞金を受け取れなかった?
―― 「パズドラ」のケースでは、ゆわ選手はなぜ賞金500万円を受け取れなかったのでしょうか。
岡安:JeSUが発行するライセンスには3つの種類があります。プロライセンスとジュニアライセンス、そしてチームライセンスです。このうち「ジュニアライセンス」は13歳以上15歳未満に発行されるもので、ゆわ選手が持っているのもこれです。そしてジュニアライセンスには、原則として賞金を受け取る権利を放棄する、という規約があります。
>4.2.3 ジュニアライセンス保持者は、JeSU が IP ホルダーその他関係者と協議の上で別に定める場合を除き、予め賞金(報酬)を受領する権利を放棄するものとするが、JeSU において相当と認める範囲のものに限り、賞品を受領することができるものとする。ただし、金券に類するものとして JeSU が別途判断するものは賞品としても受領することはできないものとする。
(JeSU公式サイトより)
岡安:ゆわ選手が賞金をもらえなかったのはこのためです。ももち選手に比べると、理由としては比較的シンプルですね。
―― ジュニアライセンスだと賞金を放棄する、という規約は何か法的根拠があるのでしょうか。
岡安:これは想像ですが、恐らく「子どもがゲームでお金を稼ぐ」というイメージが強調されるのを避けたかったのではないかと思います。
―― 児童労働(労働基準法)に抵触するのでは、という意見も見かけましたが、これは関係ないのでしょうか。
岡安:労働基準法では、13〜15歳の労働について、時間の規定(夜間は働かせないなど)は設けていますが、「働いてはいけない」ということはありません(※)。
※その他、所轄労働基準監督署長の許可が必要
例えば、NPB(日本野球機構)が主催する「スプラトゥーン2」のeスポーツリーグでは、小学5年生の女の子も2人、選手として登録されています(千葉ロッテマリーンズ所属)。彼女たちはJeSUのライセンスを持っているわけではありませんが、サイトには「大会およびプロモーション活動などへの稼働に対する手当を参加者一律でお支払いします」とあり(「スプラトゥーン2」は任天堂のタイトルなので賞金はない)、これは明らかにプロですよね。将棋の藤井聡太七段も中学生プロ棋士ですし、中学生でオリンピック金メダリストとなった岩崎恭子さんは、報奨金・賞金として300万円を受け取ったという実例もあります。
―― なるほど、時間など規定を守れば15歳以下でも問題ないんですね。
岡安:ただ「EVO Japan」の「ストリートファイターV」の予選のように、朝9時から夜10時までかかるような大会もありますし、ジュニアプロを普通のプロと同じように扱おうとした場合、運営面でかなり制限がかかることも考えられます。その意味では、支払える道筋はあるものの、現実的な手間を考えて避けたというのはあるかもしれません。
―― こうして聞くと、ジュニアライセンスを取得するメリットより、デメリットの方が大きいようにも思えてしまうのですが……。
岡安:例えば「ぷよぷよ」の場合、「ぷよぷよカップ」は誰でも出られますが、「ぷよぷよチャンピオンシップ」はプロライセンスがなければ出られません。そういった「プロ限定大会」に出られるといったメリットはあると思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
-
60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
-
「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
-
皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
-
真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
-
71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
-
新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
-
家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」