何かカッコいいけど、意味が分からない宇宙用語「ガンマ線バースト」の本当にカッコいいところを伝えたい
語感的には「滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)」みたいなカッコ良さだけども。
「宇宙最大の爆発現象」「1兆電子ボルト」「巨大な星の断末魔の叫び」――― 先日、あるニュースがこんなフレーズとともに紹介され、Twitter上で「ガンマ線バースト」がトレンド入りしました。
そのニュースは「誕生直後のブラックホールから過去最高エネルギーの“TeVガンマ線”放射を確認」したことなどを、東京大学宇宙線研究所が発表したというもの。
……正直なところ、「ガンマ線バーストって、何かの必殺技みたいでカッコいいけど、意味はよく分からない」という方が多いのではないでしょうか。無理もありません。というのも、いまだに謎が多く、これからどんな発見があるのかとてもホットな分野なのです。
今回はよく分からないけどワクワクしてしまう「ガンマ線バースト」の魅力と、東大の発表内容の一部を解説したいと思います。
ガンマ線バーストのココがすごい その1「宇宙一明るい爆発現象」
ガンマ線は放射線の一種で、もっともエネルギーが高い電磁波。超高温で激しい現象によって発せられます。
ガンマ線バーストとは、そのガンマ線により、全天のうち一点が突然明るくなる現象。なんとたった数秒で、太陽の一生分に相当するエネルギーを放出し、「ガンマ線バーストは宇宙一明るい爆発現象」だといわれています。
ガンマ線バーストの典型的なエネルギーはMeV(メガ電子ボルト)程度なのですが、東京大学宇宙線研究所が観測したものは、それが1TeV(テラ電子ボルト)まで達していた―― つまり、ガンマ線バーストは大規模な爆発現象と知られているが、さらにその十万倍のエネルギーを放出しているガンマ線バーストが見つかったというわけです。
※eV(電子ボルト):エネルギーの単位の一種。1eVが、1Vの電位差で1個の電子が加速したときに得られるエネルギー
ガンマ線バーストのココがすごい その2「生まれたてブラックホール由来」
ガンマ線バーストは、ガンマ線が飛んでくる時間の長さから「ショートバースト(2秒以下、数十ミリ秒くらい)」「ロングバースト(2秒以上、長くて100秒くらい)」の2種類に分けられます。
想定されている発生原因にはいくつかあり、例えば、ロングバーストの一部は高速で回転している大質量星(太陽の数十倍以上の質量がある)で、自らの重みで星の収縮が進む「重力崩壊」が起こり、ブラックホールが生まれるときに発生することが分かっています。
先日東大が発表したガンマ線バースト(GRB190114)はロングバーストで、太陽の100倍程度の質量を持った星が重力崩壊し、ブラックホールが生成されるときに放出されたジェット由来のものと推定されています。
ガンマ線バーストのココがすごい その3「ガンマ線バーストを見ると、宇宙の過去が“見える”」
ガンマ線バーストはとても明るい爆発現象なので、遠い遠い宇宙で発生したものでも観測できます。遠くの宇宙を見ることは、宇宙の過去を見ることと同じです(1光年が「1年で光が進む距離」なので、例えば、10億光年先の星を見ることは10億年前の星を見ていることになります)。
例えば、2009年4月23日に観測されたガンマ線バースト(GRB090423)は、131億光年もかなたにある天体でした。宇宙の歴史は137億年で、宇宙が誕生してからわずか6億年の星を見たことになります。実際にこのガンマ線バーストは、この時代の宇宙の様子を知る重要な手がかりとなりました。
このようにガンマ線バーストは、宇宙の初期の様子や宇宙で最初に出来た星々を探る手段にもなりうるのです。
ガンマ線バーストのココがすごい その4「生物大量絶滅の原因かも?」
ガンマ線バーストの少し変わったトピックとしては「地球上での生物大量絶滅の原因かも?」というものがあります。
すでに述べた通り、ガンマ線はかなりエネルギーの高い電磁波です。もしも銀河系内で起こったガンマ線バーストが、「ちょうど」地球の方を向いていたら、地球の大気などに影響を与えて、地上の生命に深刻な影響を与えるおそれがあります。
「銀河系内で地球に向いたガンマ線バーストが起こる確率はおよそ100万年に一度かそれ以下」といわれており、めったに起きるものではありません。とはいえ、地球の長い歴史を考えると……?
実は「約4億5000年前のガンマ線バーストで、生物の大量絶滅が起こった」とする説もあります。本当だとしたら、ちょっと怖い話ですね。
いろいろと書いてきましたが、冒頭にもある通り、ガンマ線バーストはいまだに謎が多い分野です。これからどんな発見があるのか、そしてその発見がどんな謎を呼ぶのか、楽しみがいっぱいあります。この記事で少しでも宇宙の魅力や面白さが伝わればうれしいです。
主要参考文献
- 「新天文学事典」谷口義明監修、ブルーバックス社
- 「シリーズ現代の天文学8 ブラックホールと高エネルギー現象」小山勝二・嶺重 慎 編、日本評論社
- 「KEK物理学シリーズ3 宇宙物理学」高エネルギー加速器研究機構監修、共立出版
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