海外不動産投資による節税を認めず〜安直な改正であるそのワケ
富裕層に対しての課税は世界的に議論されている。
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月27日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。海外不動産投資による節税を認めない、所得税法の見直しについて解説した。
海外不動産投資による節税、政府が所得税法見直しへ
富裕層に多いとされる海外不動産への投資による節税について、政府与党は他の納税者と公平でないと判断し、節税できないようにする方針を固めた。現在は海外物件への投資で出る赤字と国内の所得を合算して、税負担を減らせる仕組みになっているが、この合算は認められないことになる。
飯田)27日朝の日経新聞がこれを伝えていますが、富裕層に対しての課税は、世界的に見てもどうするかという話があります。
高橋)率直に言うと「こういう投資物件がありますので、どうですか?」と、業者の人がやり過ぎてしまったのだと思います。私も言われることが多いです。
飯田)そうですか。
海外での物件に損金を立てて赤字を増やし、課税所得を減らすことを禁じる
高橋)私は富裕層ではないと思いますが、仕組みは簡単です。日本と海外では、減価償却の仕組みが違います。住宅でいうと減価償却は、日本の方が期間が長い。海外だと償却がすぐできるものがあるのです。償却するということは、単価を下げて損金算入ができます。そうすると日本のものより、海外の方が償却期間が短い場合が多いので、そこで損金を立てて、損金は総合課税ですべて合算するため、日本の利益と相殺して課税所得を減らすというパターンです。
飯田)償却期間が短いということは、1年あたりの損金額が大きくなると。だからその分、赤字が増えるので課税ベースが減るということですね。
実際にはそれほど総額は変わらない
高橋)所得が多くても、そちらが赤字だということで減らせます。だから合算するなということを、今度やるのだと思います。しかし、償却をたくさんするということは取得単価を下げるから、実は売ったときに売却単価が増えます。償却すると当面は赤字になりますが、売却益のときにすごく税金を払うというパターンです。だから期間損益というもので、あまり本質的には税金をかけていることではありません。
飯田)行って来いで同じくらい。
高橋)はっきり言えばそうです。値上がり益に税金をたくさん払うというパターンです。値上がり益のところが捕捉できていないと思います。
飯田)海外物件だから。
高橋)だから損金を立てるなという制度だと思いますよ。あとは業者の人がたくさん売り込んだのでしょう。「こんなものがあってお得ですよ」と言ったのでしょうね。最後の譲渡益のところを見れば、本来ならば目くじらを立てる必要はありません。税務当局の都合で、途中も厳しくやるということだと思います。
飯田)売却のときは、海外の当局に問い合わせをするということですか?
高橋)基本は申告しますが、わかりにくいですよね。売却益のところを取りあぐねて、あとはタックスヘブンか何かを絡ませるかもしれないので、難しいのかもしれません。
税務署から見て怪しい案件でも海外だと追及が難しい
飯田)アメリカやイギリスなどで、高額な中古物件を購入という記事もあります。アメリカやイギリスの税務当局と、「売却益なのだからうちの税金だろう」となったりするのですか?
高橋)売却益だと向こうの税金になります。
飯田)直接の取引の部分は、向こうの税金を払うと。
高橋)税金を払って税額控除とか、複雑な制度になっています。税務署から見て怪しい案件でも、海外当局に問い合わせをするのが大変だとかね。
飯田)だから捕捉しきれないのですね。
高橋)追及すれば捕捉できるのでしょうけれど、英語で問い合わせをしなければならないし、ハードルは高いのでしょう。
飯田)メールを送るなどしても、回答が来ないとか。
高橋)そこで「期間損益で割り切れないから、損金を出して合算するな」ということでしょう。けっこう安直な改正です。業者にとっては大きいかもしれません。
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