日本髪で暮らしてみた! 一番やりたいことを突き詰めた人の同人誌マンガ『今日から日本髪生活』:司書みさきの同人誌レビューノート
日本髪の気になるあれこれがマンガに。
もういくつ寝ると……そんな歌が聞こえてくるには少し気が早いでしょうか? 師走の街はあちこちが飾り付けられて、クリスマスの後はすぐに大みそかが来てお正月ですね。ツリーにオーナメントもきれいですが、葉牡丹やしめ飾りも華やかに“和物”がとりわけ目に付きます。そんな季節に、季節を飛び越え日常生活をおもいっきり“和”で暮らすことにされた同人誌をご紹介します。
今回紹介する同人誌
『今日から日本髪生活』 A5 66ページ 表紙カラー・本文モノクロ(一部カラー)
作者:渡邊ハルカ
私が一番したいことは……日本髪で暮らすこと!
2014年夏、「これからはお前の一番やりたいことをやりなよ」とご家族に言われた作者さん。考えた末に出した結論は「私は日本髪で暮らしてお店をしたい!」。その結論はすぐさま受け入れられ、あれよあれよと和小物などを扱うお店を浅草で開き、ご自身も日本髪で暮らすことに。
日本髪って時代劇に登場する人たちが結っている髪形ですよね。あっ、結婚式を和装で挙げるかたもあの髪形ですよね。後は……と、考えてしまうほど、いまでは非日常の髪形です。でも、もともと時々、日本髪を結っていた作者さんは、それを日常にしてしまうことに踏み切ります。
おはようからおやすみまで。日本髪生活の日々は続く
ご本には、日本髪生活をしはじめて感じた思いがけないこと、やってみたらこうだった! 実はこんな出来事が……という実録の日々が、マンガでつづられています。くしやかんざしを飾ってすてきだな、くらいのふんわりした知識しかなかった私としては、いつも同じ髪形にすると「根が傷んで膿むことがある」とか「髪形が崩れないように特別な枕がある」といったひとつひとつが驚きです。様子だけなら、そういえば時代劇で見たことある! と思えるのですが、高さのある枕を使うと、髪形そのものの重さで首に負担が掛かるなんて、知りませんでした。
日本髪生活を続けて5年。夏場は毛根を休めるために日本髪を結うのをお休みしたり、髪についた油をとるにはどんな洗剤がいいのか、時に体を張った実験状態のレポートマンガは、1つのエピソードが1〜2ページにまとまっているのが読みやすく、冊子のご本はこたつに入りながらのんびり読みたい気分になります。
特別に好きな髪形で生きる日常
そもそも「一番やりたいこと」に踏み切るご家族の賛同もなかなかすごい環境だと思うのですが、もし自分がそんなことになったら……やるかしら!? と思わず天を仰いでしまいます。でも今は特別なものになってしまった姿で生活することは、本当はそんなに決死の思いで踏み切らなくてもいいものかもしれません。日常生活にちょっとした苦労はあるけれど、それもまた楽し! と思わせてくれるのは、作者さんが日本髪のことを特別に好きってことが、紙面から伝わってくるからじゃないでしょうか。「ほかの人から見て変わっている」からいいのじゃなくて、自分がとびっきり好きだから、ただその気持ちで非日常を日常にされた作者さんの楽しさが、ほんわかまぁるいタッチのすっきりとした絵柄から読み取れるようです。
年末やお正月の時期は、気温が低いと髪形が崩れにくいこともあって、日本髪に挑戦してみるのに向いているそうですよ。こちらのマンガはWebで公開しておられるページも多いので、気になった方は合わせてチェックしてみてくださいませ!
サークル情報
Twitter:@tenchopupu
Webサイト:https://kanoh.tokyo/
メールアドレス:kanoh☆kanoh.tokyo(☆→@)
入手先:実店舗 加納ショールーム(台東区浅草5-69-9、火曜定休)、オンラインストア
今週の余談
気が付いたらこの秋は、山の方へ行ったり海の方へ行ったり、知らないところへ行く機会が何度かありました。その土地の図書館を巡って、そこを利用するひとたちのお顔を見ると、はじめての場所ですがうれしくなります。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。
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