これは興味深い数字だ 同人誌『オタクのメガネ率、調べてみた。』が導き出すイメージの先のリアル司書みさきの同人誌レビューノート

確かに気になるけど、実際に調べた人がいたとは。

» 2019年11月17日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 街にクリスマスツリーが突如として出現し、思わず目を見張りました。イルミネーションや、てっぺんに取り付けられた星のきらびやかさももちろんなのですが、とにかく「えっ、もうそんな時期!?」とおののきすら感じる季節の速さです。いつもそこにあるはずの街路樹なのに、飾り付けられて初めてはっとする……今回は、対象への見え方が変わるかも? な、街ゆく人々を調査した同人誌です。

今回紹介する同人誌

『オタクのメガネ率、調べてみた。』 A5 20ページ 表紙・本文カラー

作者:編集・栗野、イラスト・井ノ沢


同人誌 図書館 司書 オタク メガネ 鮮やかな黄色の背景に無邪気に手を広げるたぬきさんがかわいい、ひとめで内容が分かる表紙です

メガネ率を調べに街へ

 オタクとメガネはなぜか結びつけられやすいイメージ……そうなの? それって本当のところはどうなのか? そう思った作者さんは早速街に出てみます。

 調査方法は特定の場所を設定し、そこを通行する男女500人、計1000人を街角に立った作者さんご自身がカウントしていく方式。レンズに色がない、または目が認識できる色の薄いレンズをメガネとし、サングラスは含まれません。

 さらにこのご本では特定場所を「オタクカテゴリ」と「一般カテゴリ」に分けてその比較を行っています。例えば「オタクカテゴリ」の場所はアニメイト秋葉原店や中野ブロードウェイといった街角や、コミックマーケット、ニコニコ超会議などのイベント開催地を選択。対して「一般カテゴリ」は新宿駅南口、渋谷センター街、表参道ヒルズなどが選ばれています。

同人誌 図書館 司書 オタク メガネ 行きかう人々から何が見えてくるでしょうか

イメージはどこからやってくる? 数字と向き合い、リアルと向き合う

 こうして調べた結果をオタクのメガネ率として掲載されており、そこからさまざまなランキング、比較が展開されます。例えば「オタクエリアの駅と店舗エリア」では、秋葉原駅前とアニメイト秋葉原店を比較。また場所や性別も分けて分析されていて、結果、調査した中でメガネをかけていた人が最も多かったのは同人誌即売会コミティア127の男性で、その割合は約55%、という結果も掲載されています。

 タイトルにもなっているオタクのメガネ率について、作者さんは「なんか思ったほどオタクのメガネ率は高くなかった」と結論を述べていらっしゃいます。「オタクカテゴリ」のエリア最高値でもメガネ率が50%を超えたのは上記の1回だけ。それでも世の中のメガネ率と比較すると高い数値ですが、作者さんは「オタクは半分くらいメガネをかけていると思っていた」とご自身のイメージとのギャップをかみしめます。

 掲載された数値と対峙(たいじ)するうちに私のなかにも「あっそうなんだ」と何度も驚きが生まれました。タイトルを見たときから知らず知らず「○%くらいかな?」と予測をしていた、脳内のイメージが覆される面白さを体感します。それは自分の中に作っていた勝手な印象とデータを突き合わせることで発生し、さらにもう一歩踏み込んで「オタクカテゴリ」の場所ってどこかなぁと、人だけでなく街の姿をも考え始めていました。そんなとき各ページには作者さんのコメントが添えられているので、自分のイメージと数値、そして作者さんの気持ちを比べてみることで、「イメージしていたもの」と「ギャップ」について思いをはせることができます。

同人誌 図書館 司書 オタク メガネ ページの端々にいるたぬきさんたちがとってもかわいくて、数字だらけのページを和ませます

「完全に思いつきから」……だけど継続力と行動力が光る!

 そもそもご本を作るきっかけは、なんとイラスト担当の方となにかしたくて、とにかく「夏コミの評論ジャンルに出る」という目標だけ先に決めたとのこと。そしてこのユニークなテーマは「その時の思いつき」だったそうです。けれど、そのために冬場から街角でカウントし続け、同人誌を作っていかれた……継続力が抜群です!

 今回の記事では、オタクのメガネ率そのものの数値だけは作者さんのご希望で伏せています。その心は「自分の足でどこかに出向き、そして出会い、面白さを感じていただきたい」と思っていらっしゃるから。またご本では「悪意でテーマを取り上げたわけでなく思い込みがあることを知ってほしかった」と記されています。ご自身の頭に浮かんだ思い付きを、ただの思い付きで流さずに、自分の足で調べられた行動力の力強さに感嘆するとともに、きっとその体験は作者さんにとってとても面白いものだったのではないかと感じました。このテーマを知って「周りではどうだろう?」「本当にそうかな?」と街を見回す楽しさを知ってほしい!と願っていらっしゃるように思います。

 私としては、データを開示し、そこから次の展開へと発展する可能性も見たく、ぜひご本やデータにアクセスできる環境が続くことを切に希望しつつ、自分でも顔を上げてちょっとカウントしてみようかな? と思ってご本を閉じました。

同人誌 図書館 司書 オタク メガネ オタクのメガネ率は半数を超えなかった……!(作者さんの意向でぼかしを入れています)

サークル情報

サークル名:しょーもな調査隊

Twitter:@shomona_chosa



今週の余談

 先日、図書館界隈(かいわい)の大きな展示会がありました。最新の設備や道具を見るまたとない機会で、わくわくの会でした。図書館の道具たちも進歩していっているのです。

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/17/news105.jpg 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  2. /nl/articles/2410/17/news048.jpg 「その手があったか!」 ほぼ卵焼きだけの弁当?→“まさかのサプライズ”が800万再生 「天才すぎて泣いた」
  3. /nl/articles/2410/15/news079.jpg 「ボットン便所を簡易水洗にしたい」→「どれどれ……」 建設会社スタッフが驚がくした“歴史的遺物”に大反響 「相当貴重なもの」
  4. /nl/articles/2410/17/news023.jpg 「かわいいってこういうこと」 生後1カ月の子猫が暖をとる場所は……幸せしかない姿に「この角度から見るのが最幸」
  5. /nl/articles/2410/17/news022.jpg 「嘘だろおい……」 ペットのイグアナが産卵→食べてみた “衝撃の食リポ”が1700万表示 「驚愕してる」「勇気に脱帽」
  6. /nl/articles/2410/17/news032.jpg 目からウロコの“クリップ活用法”5選! まねしたくなるアイデアに「え、天才」「こんなに便利になるとは……」
  7. /nl/articles/2410/17/news040.jpg 「なんじゃこれ!」 JA全農が教える「さつまいものメープルバター」がおいしそう 簡単レシピで「とってもおいしい!」「これヤヴァイ」
  8. /nl/articles/2410/17/news056.jpg “本物のシンデレラ”にガラスの靴を見せるはずが…… まさかの珍事が428万再生「おもろい」「7回くらいリピートした」
  9. /nl/articles/2410/16/news017.jpg 目を付けていた“川のスポット”にワナを仕掛けたら…… 大量にとれた”生き物”に「俺も捕まえてみたいです!」「おめでとう!!!!」
  10. /nl/articles/2410/16/news020.jpg 「で、で、で…でっっっっっか!」 日本最大級のクモ「オオジョロウグモ」を手と比べてみると…… 大迫力のビッグサイズに「軍曹さんより大きいですね」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  2. 東京駅で“あるはずのない落とし物”が見つかり話題に 深まる謎に「未使用なのか」「すげぇ」「意味が分からない」
  3. 「太ももの筋肉が段違い」 “すさまじい完成度”の春麗のコスプレに「ご本人ですか?」と21万いいねの反響
  4. 「数やば」 ハードオフで目撃した“まさかの光景”が124万表示 「初めてみた」「いってみたい」
  5. 授業参観のたびに「かっこいい」と言われた父が10年後…… 「時間止まってる?」驚愕の姿が1100万再生 大バズリしたモデルに話を聞いた
  6. フリーアナウンサー、13歳娘が“超難関国家資格”に合格したことを報告 「ひー! すごすぎます」「おめでとうございます」
  7. 人気日本人TikToker、タイ滞在中に交通事故で意識不明の重体 「サトミを信じてる」家族と友人が詳細や現状を報告
  8. 「諦めてて草」 マクドナルドが「大切なお知らせ」投稿→“あまりの内容”に騒然…… そして予想外の展開に
  9. 元“顔ぽっちゃり”のグラドル、ダイエットは「1番の整形」! 衝撃の“別人級ビフォーアフター”で遂げた「ミラクル変身」
  10. 天皇皇后両陛下、“195センチのタレント”とのショットに注目 そのインパクトに「遠近感バグった」「デカすぎて……」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声