2020年「ヒーリングっど プリキュア」が目指す新しいプリキュア ジェンダーギャップ指数121位の日本に必要なことサラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

» 2019年12月26日 18時00分 公開
[kasumiねとらぼ]
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プリキュアは女性リーダーを描かない

 今回発表されたジェンダーギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの大項目の男女平等をそれぞれスコアにしています。日本は「教育」「健康」分野では満点近いスコアを取っているものの、「経済」「政治」分野においては他国よりもスコアが低いために、153カ国中で121位になっているようです。

 つまり日本のジェンダーギャップ指数が低いのは「経済」「政治」分野において、女性の参加が抑えられてしまっているからなのです。

 裏を返せば、「政治家を夢見る女の子」が増え、それが制度やガラスの天井に阻害されずきちんと実現していく未来になれば、きっとジェンダーギャップは解消されるものと思われます。

 しかしプリキュアというアニメはこれまで、主に出発点は「大切な人を守る、夢を守る」といった極めて個人的な分野に則したものであり、「政治的リーダー」を描くタイプの作品ではありません。


「夢が総理大臣」のプリキュア

 しかし、プリキュアシリーズ全てが「私」に立脚したものかというと、そうではありません。

 かつて「夢は総理大臣」と言及したプリキュアがいました。2013年「ドキドキ!プリキュア」のピンクプリキュア、キュアハートに変身する相田マナです。学年トップの学力、スポーツ万能、社交性も高く友達も多いといったハイスペックな彼女の夢は「総理大臣になること」です。

ヒーリングっど プリキュア キュアグレース キュアフォンテーヌ キュアスパークル ヒープリ キュアハート/相田マナ(Amazon.co.jpから)

 「総理大臣になってみんなの笑顔を守りたい」と公言し、生徒会長も務める彼女は、友達のため、学校のために走り回り、時には無理をして倒れながらも、生徒会長として、プリキュアとして活躍していました。終盤では全世界に向かって自分がプリキュアであることも公言するにまでに至りました。

 「ドキドキ!プリキュア」最終回ではラスボスであるプロトジコチューを倒し、世界に平和が訪れた後にも日本政府(現職の総理大臣)からの依頼を受けてプリキュア活動を続ける、というかなり政治寄りのラストとなっていました。

 「ドキドキ!プリキュア」が放送されていたのは2013年。当時5歳だった子どもは2019年現在でまだ12歳くらいです。相田マナにあこがれた子どもたちが社会に出る10年後にはきっとマナちゃんのように「総理大臣」を目指す女の子も増えてきているのではないでしょうか。


 相田マナだけではありません。プリキュアシリーズではその他にも、自分の生まれた国の復興を目指すため友達と離れる道を選んだ「フレッシュプリキュア!」(2009年)の東せつな(キュアパッション)や、同様に亡国となった祖国復興を志す「Go!プリンセスプリキュア」(2015年)の赤城トワ(キュアスカーレット)など、公的な価値観を前提に活躍していくプリキュアも多く見られるようになっています。


多様性が当たり前にある世界

 個々人の「ケア」と「キュア」に立脚し日常を守るために戦ってきた女の子たちは、シリーズを重ねるうちに「夢が総理大臣のプリキュア」を生むまでに至りました。そして2020年には「地球をもケア」しようとしています。

 また、ずっと「多様性」を描いてきたプリキュアシリーズでは、2019年「スター☆トゥインクルプリキュア」では多様性を押し付けない「多様性が当たり前にある世界」を描いています。

ヒーリングっど プリキュア キュアグレース キュアフォンテーヌ キュアスパークル ヒープリ 肌の色も、宇宙人も関係なく、そこにある多様性を描く「スター☆トゥインクルプリキュア」

 昨今のプリキュアシリーズは「男女格差が無いことが当たり前で、わざわざ言及するまでもない世界」を先取りして子どもたちに示している傾向が見受けられます。

 複雑な事情を持った大人が属する敵組織の「オトナの理屈」に対し、子どもたちがまっ直ぐな理屈で立ち向かい、打破するのがプリキュアの魅力の1つだと思います。

 プリキュアを見て「政治家にあこがれる子ども」が実際に政治家になれる世の中に。
 プリキュアを見て「宇宙に行きたい」と願う子どもが宇宙に行ける世の中に。
 プリキュアを見て「お嫁さんになって家庭を守りたい」と願う子どもが幸せな家庭を築けるように。

ヒーリングっど プリキュア キュアグレース キュアフォンテーヌ キュアスパークル ヒープリ 大人の理屈に立ち向かう、プリキュア

 総理大臣になりたいプリキュアから、医者を目指すプリキュア、プリンセスになりたいプリキュアまで、63人以上のプリキュアたちの活躍がたくさんの可能性を提示し、女性だろうが男性だろうがそれ以外であろうが、自分の意志で「なりたい自分」を誰もが当たり前のように選択できる世の中にする。そのためにプリキュアというアニメーションの力が必要なのだと思います。

 それは理想であるかもしれません。しかし大人たちにまっ直ぐな理想を突き付け、解決してきたのがプリキュアなのです。

 大人たちの「できるわけない」に対し「そんなことない!」を突き付けてきたのがプリキュアなのです。

 だから、きっとプリキュアを見て育ち「プリキュア・メモリ」を心に持つ今の子どもたちが社会の中枢に行きつく時代には、きっとジェンダーギャップは今よりはずっと解消されているのだと思うのです。

 「そこにある多様性」を尊重し、心の宇宙は無限大の可能性を示す「スター☆トゥインクルプリキュア」がどう決着するのか、そして「地球を守りお手当する」新しい時代の「ヒーリングっど プリキュア」がどんなお話になるのか、2つのプリキュアめちゃくちゃに楽しみです!


「スター☆トゥインクルプリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション


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