新型肺炎〜停滞する中国経済が与える世界への影響
中国がくしゃみをすると、世界が風邪をひく構図になりつつあるのかもしれない。
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月5日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。新型コロナウイルスによって停滞する中国経済について解説した。飯田浩司が休みのため新行市佳が進行を務めた。
新型肺炎の経済への影響〜G20で議論へ
サウジアラビアの首都リヤドで22日から開催されるG20(財務相・中央銀行総裁会議)で、新型肺炎が経済に与えるリスクについて議論が交わされる見通しとなった。4日の衆院予算委員会では日銀の黒田総裁が「SARSのときより影響が大きくなる可能性がある」と指摘している。
新行)新型コロナウイルスによる肺炎、世界経済にも大きな影響を与えています。日本でも製造業、観光業などに大きな影響が出て来ていますね。
中国はいまや世界の工場から世界最大の巨大消費地に
佐々木)昔から2月と8月にはお客さんが少ないということがあって、観光の穴場だったわけです。2月は春節、いわゆる旧正月の時期で、中国人観光客がたくさん来るようになり、期待していた部分があったから、それが激減しているのは大きいです。2018年の来日観光客はついに3000万人を突破して、今年(2020年)は4000万人を目指すかという話でしたが、暗雲が立ち込めて来ています。同時に、製造業で中国はグローバルサプライチェーンの中心地になっていて、これなしには世界の製造業が成立しないレベルになっています。中国は「世界の工場」と言われて来ましたが、工場だったのは賃金が安かったからなのです。しかし最近は給料も上がって、製造業の中心地は東南アジアの方へ移行しつつあるという話もあります。では中国がどうなっているのかというと、最大の消費地になりつつあるのです。日本でもそうですが、高度経済成長期の1950年代〜1960年代ごろは、日本が「世界の工場」だった。それがバブルになると豊かになって、OLがパリのシャンゼリゼ通りに大挙して、ルイ・ヴィトンのバッグを買いまくるようになったのです。消費国家になって、日本はかつての労働国家から内需の国になって行きました。それと同じ道を中国がたどりつつあり、巨大な消費地になりつつある。フォルクスワーゲンはいまや中国が最大の輸入国です。中国なしには生産も消費もあり得ない。昔、「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」と言われていた時期がありましたが、いまや中国がくしゃみをすると、世界が風邪をひく構図になりつつあるのかなと思います。
最新テクノロジーを牽引して行く中国
佐々木)中国は消費国家であるだけでなく、これからの10年〜20年は最先端テクノロジーを牽引して行くでしょう。自動運転やAI、特にAIへのお金の使い方は半端ではありません。ですから、最先端AI企業は中国の深圳あたりに集約されていると言われるようになっているくらいで、中国が経済を維持してくれることをみんなが祈っています。
昔の地位を取り戻しつつある中国・インド〜日本はどう向き合うのか
佐々木)考えてみると、18世紀くらいまでの中国は世界最大の工業国だったのです。みんな忘れていますが、当時は中国とインドが世界の中心地でした。産業革命が起きてヨーロッパがどんどん植民地をつくるにしたがって、徐々に中国やインドの地位が落ち、インドは植民地にされてしまいました。途上国の扱いになって転落したのが、19世紀後半〜20世紀までの歴史だったのですが、21世紀に入ってヨーロッパの凋落やアメリカが世界の警察から撤退するにしたがって、だんだん近代以前の中国やインドの姿に戻りつつある。今後は中国とインドが世界の中心になって、世界経済が動いて行く状況は変わらないと思います。日本はそれにどう向き合うのか。経済的に中国に依存するのは避けられない。でも、経済で中国に依存したからといって、安全保障まで侵されてしまうのはよくありません。できれば日本は、経済的には密接な関わりがあって輸出入が多いのだけれど、国としては距離を取って、島国として生きて行くような立ち位置になった方がいい気はします。
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