限られた時期しか見られない「宵の明星」と「明けの明星」。5月22日は金星と水星の競演に注目

» 2020年05月20日 07時00分 公開
[日本気象協会 tenki.jp(http://www.tenki.jp/)]
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明星

 夜空に輝く星々を眺めていると、ふと時間の流れが止まったように感じることがあります。星空観測は、気分転換にぴったりですね。2020年注目の天文現象は、6月21日の部分日食、10月におこる火星の接近などがありますが、5月21日から25日頃までが見頃となる水星と金星の接近も見逃せません。肉眼で観測するのが難しい水星は、はじめて見るという人も多いのではないでしょうか。

 今回は、地球に最も近く、太陽と月の次に明るい金星について、そして5月下旬に楽しみたい星空についてご紹介します。

「宵の明星」が見られるのは、6月上旬まで

宵の明星

 明け方の東の空に姿をあらわす「明けの明星」、日没後に西の空に輝きだす「宵の明星」は、とても明るく目立つことから「一番星」とも呼ばれます。どちらも、見える時間帯によって変わる金星の別称です。

 明けの明星と宵の明星は、金星の運行によって周期的に交互に繰り返してあらわれるので、同時期にふたつを見ることはできません。タイミングによっては、1〜3か月ほど両方とも観測できない時期もあります。明けの明星も宵の明星も、いつでも見られるわけではないのですね。

 現在の金星は宵の明星。6月上旬まで西の空に姿を見せてくれます。その後、太陽と地球の間に金星が入るため観測できなくなります。1か月弱の空白を経て、6月下旬以降は明けの明星として東の空に姿をあらわします。2021年2月を過ぎると、今度は金星が地球から遠ざかり、見えにくい時期が約3か月間も続くことに。

 今年の宵の明星が見られるのは、あとわずか。そのラストを飾るように水星が姿をあらわします。

明け方と宵のみ輝く内惑星、水星と金星

太陽系

 水星と金星は、太陽から見て地球の内側にある惑星で「内惑星(ないわくせい)」、火星や木星のように外側にある惑星を「外惑星(がいわくせい)」といいます。夜空を眺めるときは、太陽と反対側の宇宙を見ることになります。つまり、夜中に見ることができる太陽系の惑星は地球より外側にある外惑星だけなのです。内惑星である水星と金星を目にできるのは、昼と夜の間にあたる日の出前と日没後の、太陽の光にかき消されない時間のみになるのですね。

 地球から見て、内惑星が太陽から西側にいちばん離れた時を「西方最大離角」と、東側に離れた時を「東方最大離角」と呼んでいます。この「最大離角」のときが、地平線からいちばん高く内惑星が見えるときで、観測しやすい時期になります。

 太陽系の惑星のなかで最も内側にある水星は、地球から見ると太陽から大きく離れることがありません。そのため、観測できるのは日の出直前または日の入り直後のみ。肉眼で見るのが難しい天体ですが、この時期は金星を目印にして水星を見つける絶好の機会です。

5月22日は水星をみつけるチャンス! 目印は明るく輝く金星

金星

 2019年11月頃から「宵の明星」として明るく輝いていた金星は、5月に入ってからぐっと高度が下がっています。一方の水星は、6月4日の最大離角に向けて高度が上がっていき、5月22日にふたつの天体が最接近を迎えます。

 日の入り30分後のまだ明るいうちに、西北西の空を眺めてみましょう。右側に宵の明星の金星、そのすぐ左側に水星を並んで見ることができます。24日には月齢2の細い月も近づき、3天体が三角形に並んだ姿となります。低空での現象となるため、なるべく視界を遮るものがないところから観測したいですね。

 水星は6月1日には2020年を通して最も高い高度に達し、13日頃まで見やすい状態が続きます。一方、金星は5月30日には地平線に近づき、6月上旬にはほぼ見えなくなってしまいます。この時しかない、黄昏時の美しい天体の競演を楽しみましょう。

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