群馬の制服に見られた“袴章”って? 着物に袴、女学生の制服にしるされた模様の歴史:司書みさきの同人誌レビューノート
群馬は特に凝ったものが多かったようです。
冷夏の予報が聞こえてきますが、それでも長袖から半そでへと、季節は夏へと向かっています。白いシャツが風にはためいたり、明るい色のリボンが揺れたりと、学生さんの衣替えも目にすがすがしいこの頃、今回は学校制服に注目した同人誌です。
今回紹介する同人誌
『ぐんまの袴章 有機制服04』B5 28ページ 表紙・本文カラー
著者:つん
すそに注目! 群馬は袴章が花盛り
かっわいい! ページを開くと愛らしい女学生さんが目に飛び込んできました。足元は草履やブーツで、頭には大きめのリボン、そして着物に袴(はかま)! こちらのご本では、明治、大正、昭和初期に創立された群馬県の学校、なかでも女学生さんの制服を取り上げています。
明治末期から昭和初期、女学生の制服の多くに袴が採用されていました。同じく袴姿だった職業婦人と区別するため、また所属している学校を分かりやすくするためなどの理由で、その袴のすそにはよく模様がつけられていたのだそうです。現代のセーラー服にも見られるような直線のラインのイメージに似ていますね。
しかし、袴のすそ模様は全国的に見られるなかで、なぜ群馬に注目されたのでしょう? その理由を作者さんは「不思議なことに群馬県は他県に比べやたら手の込んだ珍しい・面白い袴章(はかましょう)が多いのです」と書かれています。確かにご本をめくると、波型、松の形、桜の花びらをモチーフに……などなど、一口に袴のすそ模様と言っても実に個性的。ご本ではそんな多彩な魅力を持つ群馬の袴章事情を、イラストやときにマンガを交えながら解説されています。
当時、すその模様は自分で縫い付けていくものだったそうで、読み進めるうちに女学生さんたちが各校の意匠を凝らしたすそ模様を自らの手で飾り、誇らしく歩いていた様子が、なんだかありありと浮かんできて、脳内でかわいい! かわいい! かわいい!!の 連呼です。
100年前の制服の証。消えゆく袴章を追う
群馬内で独特のすそ模様事情が花開いたのは、いまからおよそ100年前。実は、ご本のなかではもう当時のことをたどりにくくなっていることにも少しずつ触れられています。
すそを飾ったのはどんな模様だったのか、それはどんな色だったのか、どうしてそれが採用されたのか……確かに女学生さんたちが着ていたにもかかわらず、たった100年でその姿は曇りガラスの向こう側にいるようにぼんやりとしてしまいました。
けれど、作者さんは小さなエピソードを拾い集めながら、その姿を同人誌の中で表現されています。イラスト、文章はもちろん、「大正9年から靴と靴下の着用が許可された」(桐生女子高等学校)とか、「袴章刺繍が夏休み中の課題だった」(共愛学園高等学校)などの、ちょっとした情報が入れ込まれているのが、彼女たちの様子に思いをはせるきっかけになっています。
こんな風にまとめ上げるのは少しずつ少しずつ窓ガラスを磨くような地道な作業だったのではないでしょうか。それは文末に示された多数の参考文献や、すっきりとまとめられた調査結果の一覧から伺い知れます。読みやすい紙面デザインや、抜群に愛らしいイラストと言ったきらきらした紙面を、その丁寧な調査が支えていることで、私は心置きなく「すてき! かわいい!」に飛び込むことができました。
一本の線でつながる制服の過去と今
かつて女学生さんたちのすそを飾った文様、その意匠の一部をいまの制服に採用している学校もあるのだとか。例えば伊勢崎清明高等学校では伊勢崎市のマークでもある勾玉(まがたま)をモチーフにした輪の形が袴につけられていましたが、現在の制服の腕にもその名残がくるんと丸く示されているそうです。
そんな風にご本では過去だけでなく、いまの制服、そして「もしもこんな風にアレンジされたら……」と空想の制服にまで袴章を追いかけていらっしゃいます。見た目のかわいさやデザインの面白さとともに、一本の線をたどることで100年前の女学生さんの笑いさざめきあう声が今日の私に聞こえてくるような、やわらかな気持ちになりました。
サークル情報
サークル名:かんむりとかげ
Twitter:@kanmuri_seifuku
ブログ:http://blog.livedoor.jp/kanmuritokage/
現在入手できる場所:メロンブックス(紙版)、メロンブックス(電子版)、とらのあな
今週の余談
この間、セーラー服の子が日傘をさしているのを見掛けました。制服に日傘、すてきでしたよー。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。
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