ニュースで見る「差し押さえ」はどうやって行われる? 納税を怠ると、こんな結末が待っています

元国税局員が解説します。

» 2020年08月12日 17時30分 公開
[さんきゅう倉田ねとらぼ]

 期限どおりに払わないと、罰金や利息を課せられることもある「税金」。しかし、世の中には、これらの制度があっても、あえて税金を払わない人がいます。

 では、税金を支払わないと、最終的にどのようになるのでしょうか?  元国税局員のさんきゅう倉田が解説します。

さんきゅう倉田

大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。法人税の調査などを行ったのち同退職、芸人となる。芸人活動の傍ら、執筆や講演で生計を立てる。好きな言葉は「増税」。公式サイトTwitter


そもそも「差し押さえ」って何?

 国民の義務でもある納税ですが、何らかの事情で実際に現金がなく、税を納めることが困難な場合もあるかと思います。その場合は、税務署や地方税の事務所と相談して、納税の猶予を申請するという選択もあります。

 しかし、それすらせず、年月の経過により延滞税が増えていっても払わずに放置したり、「払う払う」と言いながら払わなかったり……。このように、恣意的に督促を無視していると、滞納処分による差し押さえを受けることになります。

 差し押さえについて、国税徴収法47条にはこのように記されています。

 徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。

 一一滞納者が督促を受け、(中略)十日を経過した日までに完納しないとき。

差し押さえはどのように行われる?

差し押さえはどのように行われる?

 では、実際の差し押さえはどのように行われるのでしょうか。

 税金には納めるべき期限「納期限」があります。これを過ぎると、督促、催告、財産調査ののち、財産の差し押さえが行われます。

 直接見る機会はないと思いますが、警察等の立ち会いのもとで差し押さえが行われる様子は、たまにテレビで放送されていますよね。これは、国税局や税務署ではなく、地方自治体の徴収の様子です。時折、モザイクをかけられた滞納者が「いきなりくるな!」「払うって言うとるやろうが!」「なんで連絡もせんとくるん?おかしいで」などと叫ぶ様子も見られます。

 当たり前かもしれませんが、差し押さえが行われる時に、「明日、差し押さえに行きますね」と電話で連絡が来ることはありません。差し押さえるられるものを隠したり、処分してしまう可能性があるからです。

 行政のやることだから……と甘く見て督促状を無視していると、急に大切な財産を持って行かれてしまうかもしれません。なお、差押えられたものは、滞納した税金を払うことができなければ、競売にかけられる可能性があります。

 ドラマや小説で、警察が住居や会社ビルに入るために裁判所の令状を求めるシーンがあるためか、滞納者の中には職員に「令状はあるのか?」と聞く人もいます。しかし、滞納処分に令状は必要ありません。

 もし、速やかに職員に帰ってほしければ、滞納した税金に相当する現金や資産を提示しましょう。

差し押さえができないものってどんなもの?

 一方で、納税者の最低限度の生活や経済活動を守るため、差し押さえができない財産も定められています。

差し押さえはどのように行われる?

 行政も鬼ではないので、裸で過ごさなければならないほど服を持っていったり、夕飯が作れないほど調理器具を持っていったり、子供の教科書や鉛筆を持っていったりはしません。

 また、仕事に最低限度必要なものも差し押さえされません。ただ、“最低限度”の線引きは容易ではないようで……SMの女王様が、三角木馬を差し押さえられたという話を聞いたことがあります。徴収官にとっては、ムチやろうそくと違って三角木馬は最低限必要なものではなかったのかもしれません。

 もし、何らかの事情により納税が困難な場合は、必ず行政に相談しましょう。特に、コロナウイルスの影響で売上が下がり納税が困難な場合は、申請により1年間の特例猶予が認められます。延滞税は全額免除、担保の提供も不要です。

 それ以外の場合でも、税金の督促の放置や無視は、あなたに災いをもたらす原因となります。自分が延滞しているものについての相談は勇気がいるかもしれませんが、まずは話してみることが大切です。

前回のコラム

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/05/news022.jpg 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. /nl/articles/2410/05/news040.jpg 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  3. /nl/articles/2410/02/news116.jpg 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  4. /nl/articles/2410/05/news023.jpg 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. /nl/articles/2410/05/news018.jpg 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  6. /nl/articles/2410/05/news012.jpg 「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
  7. /nl/articles/2410/04/news048.jpg 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  8. /nl/articles/2410/04/news040.jpg 50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
  9. /nl/articles/2410/04/news025.jpg 「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
  10. /nl/articles/2410/05/news032.jpg 大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
  2. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  3. トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
  4. 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
  5. そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
  6. 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
  7. 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
  8. “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
  9. 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
  10. 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声