小淵沢駅「高原野菜とカツの弁当(復刻版パッケージ)」(1000円)〜50年前からベジファースト! 日本初の生野菜入り駅弁が50周年
メインは何といっても「高原野菜」。野菜のシャキシャキ、カツのサクサク、味はもちろん「音」がおいしい駅弁です。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】
中央本線の小淵沢と、しなの鉄道(旧・信越本線)の小諸を結ぶJR小海線。
昭和10(1935)年11月29日に全線が開業して、今年(2020年)で85年を迎えます。
清里〜野辺山間でJR線最高地点の標高1375mを通ることにちなんでネーミングされた、観光列車「HIGH RAIL 1375」も、7月下旬から運転を再開。
青い列車が、八ヶ岳を横目に、涼やかな高原の風のなかを駆け抜けて行きます。
(参考)小海線地域活性化協議会ホームページ
JR線の駅としては最高所(標高1345.67m)に位置する野辺山駅周辺から、お隣・川上村にかけては、日本を代表する高原野菜の産地として知られています。
小海線の車窓にも、レタスをはじめとしたさまざまな作物の野菜畑が広がります。
“マルチ”と呼ばれる白いシートが目立つということは、まだ野菜が植えられたばかりか。
農家の皆さんが、1つ1つ丹精込めて、フレッシュな高原野菜をつくり上げていきます。
(参考)JA長野県ホームページ
そんな八ヶ岳山麓の高原野菜をイメージしてつくられた駅弁といえば、中央本線から小海線が分岐する小淵沢駅で販売されている「高原野菜とカツの弁当」(1000円)。
小淵沢駅弁「丸政」を代表する名物にして、地元の方にも“カツ弁”と呼ばれ、親しまれている駅弁が、昭和45(1970)年の発売から、今年(2020年)で50周年を迎えました。
これに合わせ、現在は発売当初の「復刻版パッケージ」で販売されています。
現在(2020年)は水色の包装が印象的ですが、発売当初は黄色い掛け紙で、価格は300円。
復刻版のパッケージということもあって、「おかげさまで発売から50年」の文字が躍ります。
その横の電話番号も、市外局番6ケタ、市内局番なしというのが、時代を感じさせますね。
昭和30〜40年代の旅行ブームにあって、やや出遅れていた感のあった「丸政」が、起死回生の強い意志で決断したのが、この「高原野菜とカツの弁当」の開発だったと言います。
(参考)鉄道と共に歩んだ丸政の100年の足跡
【おしながき】
- 白飯
- チキンカツ レモン
- 生野菜(レタス・セロリ・きゅうり・ミニトマト・カリフラワー・しめじ・コーン・山ごぼう・蕨)
- スパゲティ―
- 茎さつま
- りんご
- ドレッシング、塩、ソース、マスタード、社名入り紙ナプキン
この駅弁のメインは、何といっても「高原野菜」!
野菜をたくさん食べてもらうために、ご飯の量を通常より40g少なめにしていると言います。
いまは当たり前になった“ベジファースト”(野菜から食べ始める食習慣)ですが、じつは「高原野菜とカツの弁当」は、50年前から実践していたことに、先見の明を感じます。
カツはあくまでも付け合わせで、保存性からチキンとし、カットにもこだわっているそうです。
私自身が50周年を迎えた「高原野菜とカツの弁当」に感謝したいことは、何といっても、苦手だったセロリの美味しさを知ることができたこと。
やっぱり、本場の美味しいものをいただくことが、食わず嫌いの克服にはいいんですよね。
そして、ラジオに携わる人間としては、野菜のシャキシャキ、カツのサクサクという音!
見た目も味はもちろん、日本一「音」が美味しい駅弁ではないかと思います。
小淵沢を出た小海線の列車は、南アルプスの山並みを横目に、大きくカーブを描いて、八ヶ岳へ向け、エンジンを唸らせながら高度を上げていきます。
高原野菜のふるさとへ向けて標高が上がっていくなか、カラリと揚がったカツを頬張れば、気持ちもぐんぐんアガってハッピーに!
美味しいものをいただきながら、自然のなかでのんびりしたい2020年の夏です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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