「大会での勝利は“強さの追求”の副産物に過ぎない」 格ゲー界のレジェンド・梅原大吾が語るコロナ禍のeスポーツ界と強さの基準(1/2 ページ)
「勝つこと」と「強さ」の違い。
スポーツやライブイベントの中止や延期が相次ぐなど、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響は甚大だが、それは発展途上にあるeスポーツ界でも同様だ。多くの観客が集まって大きな盛り上がりを見せていた”毎年恒例”の大会は次々に中止となり、ゲーマーの活躍の場は大きく減少した。
しかし、ネットを通じて遠隔地から選手が参加でき、YouTubeなど配信を通じて観戦する文化が根付いているeスポーツ界は、工夫次第でこれまで通りの盛り上がりを維持できる可能性がある。
大きな変化が起こりつつある現状を、格闘ゲームの第一人者である梅原大吾はどう見ているのか。7月26日に開催された「Capcom Pro Tour Online 2020」で優勝したばかりの同氏に、コロナ禍における格闘ゲーム界や、「強さ」への考え方を聞いた。
梅原大吾:日本最初のプロ格闘ゲーマー。格闘ゲーム界ではジャンルの黎明期だった1990年代から活躍し、現在に至るまで数々のタイトルを獲得しつづけてきたレジェンドとして知られる。(Twitter)
格闘ゲーム界における新型コロナの影響
――まずは「CPTオンライン」の優勝おめでとうございます。今回の結果についてはどう思われますか?
※CPTオンライン:「CPT」は、年間を通じて各地で行われる世界大会「カプコンプロツアー」の通称。今年は例年オフラインで開催されている海外大会の代替としてオンライン大会の「CPTオンライン」が開催されている。優勝者は年末に開催予定の決勝大会「カプコンカップ」への出場権を獲得できる。
梅原 最近は練習での勝率が安定していたので、これならいけるかもしれないと思ってはいました。トーナメント形式では2018年のVSFighting(CPTプレミアイギリス大会)優勝以来、なかなか結果が出せていなかったので、率直にうれしいです。
――圧勝と呼べるような試合もありましたし、内容も素晴らしかったですね。何か取り組み方を変えたりはしたのでしょうか。
梅原 いくつか要因があると思います。まず、海外での大会は長時間の渡航があり、時差ボケがありと大変ですし、現地には1人で落ち着ける環境もないんですが、今回は自宅で自分のペースで試合に挑めたのは大きいと思います。もう1つは、トレーニングモードで差し返し(※)などの純粋な練習を取り入れ始めたのも影響していると思います。
※差し返し:相手の技の空振りなどを見てから反撃すること。高度な動体視力を要求される動き。
――これまでは差し返しの練習をしていなかったんですか?
梅原 していなかったですね。こういった要素は練習で精度が上がるとは思っていなかったんですよ。でも、実際やってみると全然違いました。
――格闘ゲーム界は他業種と同様、大会の中止が相次いでいます。このことについてはどう思いますか?
梅原 大会が減ったことでモチベーションを保ちづらくなったり、オフラインの練習ができなくなったことで悪い影響がでた人もいるようです。僕は、この状況下になってからオフラインでの練習もオンラインでできるということを学びました。オフラインとオンラインはもちろん違う要素はありますが、基本的にはDiscordを使えばオフラインで行うようにお互い教え合えますし、地方の人も参加できるというのはこれまでなかったことで、僕自身の練習の濃度が増しました。
――大会が減ったことでモチベーションが保てなくなったりはしませんか?
梅原 僕にとってはあまり大会があるかどうかは関係なくて、純粋に格闘ゲームがうまくなったなと思えるのが一番楽しいんですよ。それは昔から変わりません。努力すればするほど、成長が実感できることを純粋に楽しんでいますね。仮に「カプコンカップ(※)中止になりました」と言われても、「あぁそうなんだ」と思うぐらいです。
※カプコンカップ:1年間を通じて各地で行われる世界大会で、上位の成績を収めた選手が参加する大会。賞金はもちろん注目度も高く、多くのプレイヤーが優勝を目標にしている。
――え、そうなんですか?
梅原 多くの人はそうはいかないと思いますが(笑)。でも僕にとっては、とにかくうまくなることが楽しい。
――プロゲーマーともなると、その楽しさだけを突き詰めることは難しいようにも感じますが。
梅原 僕は、やっぱりゲームが好きなんですね。その熱は誰にも負けないと思うんです。例えば絵を描くことが好きだったら「絵を描くことがうまくなりたい」とまずは思うはずじゃないですか。でも、最初はその情熱があったはずなのに「売れる絵を描きたい」「人から評価されたい」という方向に行く。でも、僕の場合は“ゲームがうまくなりたい”という欲求が消えてないんです。だから自分がうまくなっている実感さえあれば、大会があろうがなかろうがモチベーションは高く保てています。もちろん、応援してくださるファンの方々や、スポンサーのためには大会に出て、成績を残すことは大事だと思っています。
「今日、ゲームした意味なかったな」という日はない
――それこそ格闘ゲームを黎明期から続けていて、そこのモチベーションが変わっていないというのはすごいですね。
梅原 もちろん仕事になるからじっくり追求できるというのもあります。20代そこそこで格闘ゲームから離れたときは「格闘ゲームを真剣にやってられる歳じゃないな」と思って辞める決意をしましたが、今は目先の大会ではなくて、もっと将来を見据えて取り組んでいます。プレイを磨いていれば必然的に大会の成績もついてくるだろうし、コミュニティの評価もついてくる。だから、やはりプレイを磨くということが全てにつながっていると思います。
――「好きだったものを仕事にすると、好きじゃなくなってしまう」というのはよく聞く話ですが、全くそんなことはないと。
梅原 一旦格闘ゲームを辞めて麻雀をやっていたときはそうなったこともありましたね。麻雀が好きで入った世界なのに、1日12時間くらい取り組んでいると「ちょっとさすがにしんどいな……」と(笑)。格闘ゲームに関しても、プロになった当初は、なにせ前例がなく指針もないので、「頑張らねば」の一心で自分を追い込みすぎてしんどく感じたこともありました。プロ2〜3年目で、自分がゲームうまくなってる実感があれば楽しめるんだなと気づいてからは全く苦痛を感じなくなりました。毎日楽しい、と言えます。
――日に日に強くなっていく実感がある、ということですか?
梅原 「今日、ゲームした意味なかったな」という日はないです。それ以前になくすように努力しています。成果があれば誰だってなんでも飽きずにやれるんじゃないでしょうか。
――凡人からすると、トップを走りながら常に毎日成長を感じるのは難しいことのように思いますが、昔からそういう考え方で取り組んでいたんですか?
梅原 もちろん、プロになる前とプロになってからの取り組み方は違いますね。プロになってからはそれ以前に純粋にただ楽しいからやっていたものを義務だと捉えてしまって、息苦しく感じました。それでも、「やらなくてはいけない」という思いで、1日十数時間もプレイして自分を追い詰めていました。
ただこの仕事を辞めるという選択肢はありえない以上、その苦痛をどうにかしないとこの仕事を続けられない。どうしたらいいんだろうと思ったときに「発見や成長があれば続けられるんじゃないか」と気付いて試行錯誤して、コツをつかんだのがプロの2〜3年目ですね。
――なるほど、プロになってからも工夫が必要だったと。
梅原 例えば、新しいゲームが出たときは課題がいっぱいあるので誰でも楽しいんですよ。でも、課題をはっきり認識できているうちは良いんですが、途中から課題が何なのか分からなくなってくる。そうなると何を練習すれば良いのか、何が欠けているのか分からなくなっていって、「つまらない」と感じてしまう。それは多分、ゲームでもなんでも同じことが言えると思います。
「ストリートファイターIV」も「ストリートファイターV」も1年やそこらで息絶えるゲームではなく、長期に渡って真剣に取り組まなくていけないとわかっていたので、そういうゲームと向き合うときに編み出した方法……と言ったら大げさですが、自分なりの考え方、取り組み方です。最初のうちは試行錯誤というか、「どうしたらいいんだろう」という焦りから生まれたモチベーションの保ち方です。
――長期間プレイヤーとして活躍するためには、モチベーションを保つことは結果を出すこと以上に必要な要素かもしれませんね。
梅原 20年以上に渡ってずっとゲームを続けているので、意志が強いように見受けられるかもしれないですが、実は強くない。理屈では動けないし、楽しくないとできないし、義務になってしまうとできない人間。「俺は意志が弱いから自分のことを楽しませないとやばいぞ」っていう危機感と常に対峙しています。
――なるほど(笑)。格闘ゲームを長く続けていると、やはり向き合い方も変わって来ているのでしょうか。
梅原 今は「過去と比較して、どういうところがうまくなったんだろう」というところだけを見て練習している気がしますね。アマチュアの時は好きでやってるから物量をこなせばうまくなれたし、プロ1年目のころは更にそこから熱量を増やしてプレイしている感覚だったんですが、今は成長を感じられないことはやらない。だから、ゲームする時間は何分の一かにはなっていますが練習の質は上がっています。
昔の方が熱量はありましたが、その分取り組みも雑で甘かった。今はその熱はなくなりましたけど、上達することに対するシビアさは過去と比べても雲泥の差です。
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