オンラインクレーンゲーム「トレバ」、従業員が証言 「景品獲得されぬよう裏操作した」「1000回やっても獲れない」(3/4 ページ)
――Cさんが携わっていた業務について教えてください。
Cさん:「トレバ」関連の景品が保管されている倉庫で、主に在庫の管理や入庫・出庫作業を行っていました。
2020年10月ごろまで、サイバーステップは別の会社に倉庫業務を依頼していたのですが、その会社が度を越した配送遅延を行い続けたため大きな問題になったそうで、私が勤めていた倉庫会社に契約を移行したと聞いていました。
――Cさんが勤める会社に移行してからは配送遅延は減っていますか。
Cさん:移行前は本当にひどかったと聞いているのですが、今は大幅に減っていると思います。ただそれはあくまでも国内の話であって、海外ユーザーさんへの発送は大変なことになっていますよ。
海外で多い送り先は、アメリカ・カナダ・オーストラリア・韓国あたりで、海外発送には複数社の配送会社を使っていましたが、前任の倉庫会社から引き継いだ時点で1業者につき4〜5万件の発送遅延が発生していました。しかもこれを年内に片づけないといけないと言われていたので、ゾッとしました(※)。
(※)2020年の年内にの意。
――荷物の量は国内と国外で見るとどれぐらいの比率なのでしょうか。
Cさん:同じぐらいの量ですよ。ただ国内のユーザーさんには丁寧に梱包して送りますが、海外のユーザーさんの場合、1人で50箱とかという方もいるので、「とにかく詰めればOK」という感じで梱包もろくにせずに送っていましたね。
――量は減っているものの、今もまだ配送遅延が起きているとの声があります。遅延の原因は他にどういうのが考えられますか?。
Cさん:それは単純に景品が手元になくて送れないものではないかと思います。在庫がないという場合もありますし、倉庫や配送の過程で景品が紛失してしまったという場合もありますね。
――景品を紛失するというのは。
Cさん:配送依頼が来ると、流れ作業で検品して、梱包して、送り状を貼り付けて出荷するのですが、単純作業の連続なので、中には送り状を貼り付け忘れたままトラックに乗せてしまった、ということなどが起きるんです。国内の配送業者さんの場合は「これ、貼り忘れてますよ」と次回集荷時などに返しに来てくれるのですが、海外の業者の場合はそのまま業者が持ち去ってしまうケースがほとんどなので、こちらは発送したと思っていても、実際には届いていないというケースもあると思います。
また倉庫内での紛失についてですが、これは分かりやすく言うと従業員などによる盗難の可能性が高いです。『鬼滅の刃』関連など、人気景品がなくなることがあり、途中から退勤時には身体検査をされるようになりました。
――他にも景品にほこりが付いていた、とか、ゴキブリのような虫が入っていたとか、そもそも開封済みの景品が届いたという報告も寄せられているのですが。
Cさん:まず開封済み景品についてですが、倉庫で景品を開封する暇なんてありませんから、それは倉庫外での出来事だと思います。
ただ倉庫は空調がないので、窓は当然全開ですし、トラックが入ってこれるようにシャッターも空けていましたから、虫が入ることは全然あり得るでしょうね。また景品については倉庫に届いたときから外箱がボロボロだったり、売れ残りすぎてほこりがつもりにつもっている場合もあるのですが、そもそも汚れを拭き取るぞうきん等は支給されませんし、上司は常に「1秒でも早く詰めろ」と言ってくるので、外装が破損しているなど、明らかにまずいなという場合を除いて、そのまま詰めていました。
私はフィギュアなどに興味がないタイプですが、もしすごくほしい景品を苦労して取って、あんな箱がボロボロの状態で届いたら嫌だろうなとは思います。また仮に私が「トレバ」をプレイすることになったとしても、倉庫内の衛生管理が怖いので、食品類は絶対に獲らないようにします。食品関連の他の倉庫でも働いた経験がありますが、あそこまでずさんな管理はなかなかないです。
複数の関係者への取材で見えてきた「トレバ」の運営実態。
前回の記事の争点の1つであった「景品が獲られそうになるとスタッフがプレイ中の台の設定を裏で操作」していたという疑惑については、サイバーステップ側から「オンラインクレーンゲームの運営上に関わる操作ミス等で起きた事象」であり、「意図的に、ひいては悪意をもって恒常的、組織的に行っている」訳ではないとの抗議声明が発表されていますが、元従業員と現役従業員から「お客さまに景品を獲られたくない一心でアルバイトも社員も日常的にこうした不正を行っていた」「操作ミスであのようなことは起きない」との証言が得られたことにより、その主張とは食い違う結果となりました。
また今回の取材では、前回の記事内で告発を行った複数のプレイヤーに対して「トレバ」運営が、アカウントの利用制限、および利用資格停止を行ったことも分かりました。
利用資格の停止が行われた一部のプレイヤーによると、利用資格停止前に獲得した景品に配送遅延が発生し、それについては「無料プレイチケット」の配布(プレイヤーはアカウントの資格停止を行われたため使用できない)を行うという不可解な対応が取られたと言います。
こうした状況も踏まえ、トレバ被害者の会はねとらぼ編集部の取材に対し、「前回の記事が出ることで『トレバ』運営及びサイバーステップが非を認めてくれたらという思いがあったので、報復行為は非常に残念に感じています。連日数多くの被害者から情報提供が寄せられていることをかんがみて、弁護士への相談も継続して行っています」とコメントしました。
また、「トレバ」では12月11日に大規模な「無料チケット誤配布」バグが新たに発生。チケットは後に回収とされたほか、誤配布とは知らずにチケットを使って景品を獲得したプレイヤーには、あとから景品を没収するなどの措置を取ることが発表され、「やっとほしかった景品が獲れたのに、後から景品没収はひどすぎる」「獲得するための時間を返してほしいですし、バグは『トレバ』側の瑕疵なのに、まるでプレイヤーが不正を行ったかのような対応にも腹が立ちます」と怒りをあらわにするプレイヤーもいるなど、一連の対応が新たな波紋を呼んでいます。
「店舗内において客に遊技をさせることが想定されない」ことなどから、経済産業省が、「風営法の規制を受けない」との見解を示しているオンラインクレーンゲーム産業。大手ゲームセンターも続々と参入するなど盛り上がりを見せる一方で、プレイヤーに対する不誠実な対応やリアルのゲームセンターでは起きえないようなトラブルが続発しているのも事実です。
オンラインクレーンゲーム産業が抱える問題点や法整備などについては、1月4日掲載の記事でも詳しくお伝えします。
(Kikka)
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