「星空のように美しい義眼を特注してみた」→義眼に込められた思いにはっとさせられる(1/2 ページ)

特注の義眼に込められた思いを聞きました。

» 2021年01月14日 11時45分 公開
[織部弓槻ねとらぼ]

 「私、義眼ユーザーなのですが、人外チックなおしゃれ義眼をはめたくてはめたくて、特注で作ってもらっている最中です」。この星空のように美しい義眼を紹介した投稿が、Twitter上で話題となっています。義眼を特注した笹の葉(@sasanohaoishiyo)さんに、特注しようと思ったきっかけを聞きました。


おしゃれな義眼

 笹の葉さんは、右目を失明している片目失明の当事者。その右目用の義眼を特注していたところ、1月4日に試作の画像が届きます。その仕上がりが大変美しく、うれしさのあまり笹の葉さんはTwitterでその画像を公開しました。すると「すてき!」「こんな義眼が選べるような世の中になってほしい」といった称賛の声が多数寄せられる結果に。「ツイートがここまで伸びると思わなかった」という笹の葉さんに、義眼に込められた思いを聞きました。

――特注の義眼を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

笹の葉:きっかけというような出来事は思い出せないのですが、私は子供のころから顔という目立つ部位に障害があり、その原因についてもあまり思い出したくない環境・出来事によるものです。

 その環境から抜け出した後も「気持ち悪い」など見た目をさげすむ言葉を投げかけられたり、容姿を理由にアルバイト採用を断られたりする事がままありました。

 そんな経験が少しずつちりのように積み重なっていって、私の中で大きなごみ山のように重くのしかかった時、ならいっそのこと宝石のような美しい目を入れてやろうという気持ちが産まれたのだと思います。

――義眼のモチーフとなったキャラクターや人物などはいますか?

笹の葉:上記のつらい時期に励みになった曲や映画の登場人物ですかね。デザインに限った話だとハチさん(米津玄師さん)の曲がモチーフです。

 彼の曲にとても救われた思い出があって、特に大好きな曲である「Qualia」の「滲(にじ)む星を作るのは君と見る世界だと知る」という歌詞から、最初に作るデザイン義眼は星空をモチーフにしたいと思っていました。

 ご依頼する際に、すてきだと思った星空に関するものをいろいろ集めて、自分なりにデザイン画を起こして、義眼師さんと共有しました。リプライにあった「視力を失った代わりに星空を目に宿したフクロウ」も集めたモチーフの中の1つです。

 その義眼を付けたとき、少しでも近づけたらと思う憧れの人物像は、映画「ラスト・アクション・ヒーロー」のベネディクト、「ダークナイト」のジョーカーです。

 隻眼や大きな顔の傷という、現実世界の私にとってさげすみや同情の対象だったものをこの上ない魅力に変えている彼らが、どれだけの侮辱を与えられてもひょうひょうとしている彼らが、本当にかっこよくて強く憧れました。

 彼らのように、とまではいかなくても、彼らのような魅力的で強い存在に少しでも近づけるように、今回の義眼がお守りのような存在になったらと思っています。

――自分は義眼の特注ができるということを、今回初めて知りました。義眼の製作過程について、少し詳しく教えていただければと思います。

笹の葉:ツイートがここまで伸びると思っていなくて分かりやすく特注という言葉を使いましたが、一般的な義眼製作所さんが特注を受け付けているというわけではないんです。現在使用している通常義眼の製作所では、無理だと断られました。

 なので、最初は自分で理想の義眼を作りたいなと考えて勉強をしていたのですが、なかなか難しく、勉強の過程で得たつてで紹介していただいた義眼師さんとお互いに試行錯誤しながら製作してもらっています。

――笹の葉さんは、片目失明についてのエッセイ漫画を描かれています。あらためて、日々の生活での困りごとや、多くの人に知ってほしいことなどがあれば、ぜひ教えてください。

笹の葉:片目には慣れているので日常生活の大抵のことはできますが、強いて言うなら物にぶつかりやすい、事故に遭いやすいことでしょうか。最近は引きこもっているので平穏に過ごしています。

 普段はリブ(@Right_rib)という名前で義眼や障害についてのコミックエッセイ更新や活動をしています。笹の葉はあくまで二次創作アカウントなので、義眼や障害についての話題には今後触れません。

 もし興味を持っていただけた方は、「リブ」をフォロー頂けると幸いです。よろしくお願いします。

「右目を見せて」の温度感

 笹の葉さんはpixivで「片目失明者と〇〇シリーズ」というコミックエッセイを描いています。意外と難しい右目の隠し方についての話から、日々のちょっとした出来事、片目失明者の社会での扱われ方まで描かれており、とてもはっとさせられる作品ばかりです。

 笹の葉さんは、「『右目を見せて』という同じ言葉でも、ただばかにしたい人と魅力を感じてくれてる人って、言葉の温度感が全然違う気がします」と語ります。心無い振る舞いをして人の心が見えていないのは、私たちの方ではないのか。笹の葉さんのエッセイは、大切なことに気付かせてくれます。

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