3.11から10年――「動物たちを置いて逃げるしかなかった」 南三陸町が伝える震災の“記憶”と“未来”(1/4 ページ)

もう10年、まだ10年。

» 2021年03月11日 20時00分 公開
[三日月影狼ねとらぼ]
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 2011年3月11日に発生し、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災から10年。ねとらぼではこれまで“3.11”をテーマにした漫画『柴ばあと豆柴太を紹介してきました。


豆柴太 南三陸 『柴ばあと豆柴太』

 同漫画の作者で京都府出身のヤマモトヨウコ(@YY0905)さんは、仕事で東北へ転勤し、たくさんの知り合いができる中で震災を身近に感じるようになりました。そして、宮城県南三陸町が主催している“語り部ツアー”に参加した際に、震災の記憶や東北の現状を「届けたい」「知ってほしい」と強く思うようになり、葛藤を抱きつつも震災をテーマに漫画を描きはじめたそうです。



 そこで今回は『柴ばあと豆柴太』とのコラボ企画として、漫画が生まれるきっかけとなった「南三陸町観光協会」の語り部ツアー・まちあるき語り部を取材。町にほれ込んで京都府から南三陸町に移住した経歴を持つ同協会のエリアコーディネーター・内木渡さんに語り部ツアーの活動内容COVID-19(新型コロナウイルス感染症/以下、コロナ)の影響震災時の動物の様子を聞きました。

残っている町のかけらや片りんの形を変えてしまうのが嫌だった

――語り部ツアーの活動内容を教えてください。

 語り部ツアーの活動はいくつかの種類があります。まず個人向けの「まちあるき語り部」。これはお客さま1〜5人くらいに対して語り部さんが1人付いて、実際に町の中を歩き、震災の痕跡や復興の様子を見ながら個人の体験談を話すといった1時間程度のプログラムです。



 団体向けは最初に震災講話を1時間ほど聞いていただき、その後語り部さんが各バスに1人ずつ乗って実際に浸水してしまったエリアをまわりながら震災当時の出来事や個人の体験を話す、といったプログラムがあります。大枠でいうとこの2本柱です。

――震災当時、内木さんは勤務先が京都府だったとのことですが、ボランティア等をきっかけに南三陸町で暮らすことになったのですか?

 実は私はこの町でボランティアをしたことがないんです。この町を知ったきっかけは震災当日に流れていた「町民1万人と連絡がつかない」「町長が行方不明」といったニュースでした。そして翌日か翌々日に無事に発見された町長が定例記者会見を開き、町の惨状を熱く伝えている姿を見て町に関心を持ったんです。

 そこから町について調べはじめて、震災の前から町の写真を撮っていた方たちのブログにたどり着きました。その方たちの写真を見て行くうちに町を一度見てみたい、その方たちに会いたい、と思って行ったのが最初です。現地では震災前の南三陸町の白地図を仕入れて、町のどこに何があったか覚えたうえで見てまわりました。



 私は過去の町の写真を見すぎて、過去の町の姿を好きになりすぎてしまっていたので、ボランティアを出来ませんでした。お手伝いすることによって、ボロボロになってしまっていたとしても残っている町のかけらや片りんの形を変えてしまうのが嫌だったのです。

 現地に行って2日目くらいには「絶対にいつか移住してやる」と思って、それから3〜4年くらいは毎月通いました。その後、福興市(※)というイベントで町長さんとたまたまお会いして、仮設住宅を移築し移住者に提供するという話を聞いてすぐに申し込みました。それが5年前ですかね。

(※)福興市:震災の翌月から行われている、援助で頂いた物や海産物などを販売するイベントのこと

――内木さんは観光協会の職員として以外にも個人で活動されていらっしゃるのですか?

 特にはしていないですが、私が町に来るきっかけとなったブログを書いていた方たちが、被災によって写真をあまり撮れなくなってしまったときに、「しばらく代わりに撮っておいてもいいかもな」といった感じで撮り続けた写真はブログに載せています。そんな夜な夜な書いているブログが意図していない部分でだいぶ知られてしまった……ということはあります。

「行かなくてもいいか」と思われてしまうのが一番怖い

――語り部ツアーにおいてもコロナの影響は大きいですか?

 はい。コロナ対策として2020年からオンラインで震災講話を聞いていただくプログラムを作りまして、最近はそちらの割合が一時的に増えています。とくに3.11近くは申し込みが非常に多いです。2月も多かったのですが、3月はもうほぼ予定が入っているような状態です。



 また、修学旅行が中止になったり行き先を変更されたりすることが多かったので、2020年度の学校の旅行に関してはプラスもマイナスもありといった感じでした。中には「海外に修学旅行に行く予定でしたがここに来ました!」といった学校もあって、なんともまぁ……と思うことも。企業に関してはほとんどが自粛されていて、この1年間ほとんど申込みはありませんでした。

 ちなみに観光以外で一番コロナの影響を受けているのは宿泊施設です。南三陸町には頑張っている民泊があるのですが、何の支援策もない状況だと経営がかなり厳しいとよく耳にします。Go To トラベルをやっているときは一時的にお客さまが殺到しますが、緊急事態宣言が出てかつ支援策も全くない状況(2020年2月取材時点)ではお客さまが目に見えて減ってしまっている状況です。今はどこの宿にもほとんどお客さまが来ていない状況だと思います。



 語り部ツアーにおいてはオンラインのお申し込みが増えていてありがたいと思う反面、あまりお申し込みが多くなってしまって「オンラインでもいろんな話が聞けるなら行かなくてもいいか」と思われてしまうのが一番怖いです。2022年完成予定の道の駅に「震災の伝承館」を作る予定なので、お客さまが増えてくださったらいいな、と期待を持ちつつ、コロナが早く収束することを願っています。



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