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» 2021年03月31日 19時55分 公開

「12時間労働は当たり前」「残業代なし」 文科省主導のハッシュタグ「教師のバトン」に現役教師から窮状を訴える声相次ぐ 文科省の受け止めは?(1/2 ページ)

プロジェクト担当者の1人に聞きました。

[高橋ホイコ,ねとらぼ]

 文部科学省が2021年3月26日からはじめた「#教師のバトン」プロジェクトが、当初の目的からはやや外れ、教員たちから労働環境の悪さを訴える声が多数寄せられる事態になっています。こうした動きについてどのように受け止めているのか、同省を取材しました。



 近年、教員採用選考試験の採用倍率が低下するなど、いわゆる“教師不足”が問題視されています。そこで、同省はSNSを使ったプロジェクトを開始しました。働き方改革や業務改善の事例、教師をやっていてよかったと思う瞬間などを、SNSで「#教師のバトン」を付けて投稿してもらおうという取り組みです。


教職採用試験受験者数の推移 近年受験者は減っているが、採用は増えている(教師のバトンより)

 「#教師のバトン」のnoteには、プロジェクトを開始した理由が書かれています。教職を目指す現役学生などとの意見交換で、「教師の魅力・やりがいはわかっているけれど、報道されているような長時間勤務に耐えられるか不安」「実習先の学校で見た教師たちが保護者対応や事務作業など、教える以外の業務対応で忙殺されていて教師になれるか自信をなくした」などの声があがったそうです。

 報道や、実習先など一部の学校の印象で教職を諦めるのはあまりにももったいない、現職の教師が行っている創意工夫や、広がる改革の波について、十分に発信できていないのではないかと考え、企画されたのがこのプロジェクトでした。

 しかしながら、プロジェクト開始直後から、長時間労働や部活動の負担、残業代がないこと、業務量の多さや、小学校の担任では休憩時間がとれないことなど、労働環境の悪さを訴える投稿が相次ぎました。書き込みが事実であれば「平日は12時間勤務、土日は部活」「部活で使用するジャージや、交通費は自腹」といった事例もあるようです。



 ハッシュタグへの書き込みは3月31日までに約1万件を数えていますが、大半はこうしたネガティブな声で、本来の想定とはやや異なる盛り上がり方になってしまったことは否めません。この状況を文科省サイドはどうように捉えているのか、プロジェクト担当者の1人、文部科学省生涯学習推進課・専修学校教育振興室の金城太一室長に聞きました。


――プロジェクトを開始して、手応えをどう感じていますか?

文科省:長時間勤務や部活動の負担など、厳しい勤務環境について率直な意見をいただきました。これらは、しっかりと受け止めなければと思っています。一方で、教師の負担軽減に向けた働き方改革など、前向きに取り組んでいる姿を発信していくのも大切だと考えています。

――ネガティブな声が目立っていますが、想定はしていたのでしょうか?

文科省:オープンかつ拡散性の高いWeb上での投稿ということもあり、厳しい意見が出てくるとは思っていました。ネガティブといっていいのか、窮状を訴える声が多くあがっているのは認識しています。

――寄せられた意見をどのように生かしていきますか?

文科省:いただいた意見を吟味し、分析したうえで、声が大きいものについてはしっかりと取り組んでいきたいと思っています。また、実際あがった声の中で、既に取り組みを開始しているが、現場に十分に周知されていないものもあります。こうしたものもなるべく現場の教師や支えてくれる方々にしっかり届くよう発信していきます。

――今後、どのような動きを予定していますか?

文科省:当面は継続的に続けていきます。もともと声が届いてほしかった人たちや、もちろん我々にも声は響いていますので、しっかりと続けていきたいです。また今後の取り組みとしては、2021年の早いうちに、今後教職に就こうとする人たちのための制度や情報がまとまったポータルサイトを立ち上げる予定です。現在の文科省ホームページにはそうした人に向けたまとまった情報がなく、必要な情報が見つけづらいという声が多くあったためです。またnoteでも、働き方改革に向けた文科省や現場の取り組み、免許更新制の見直し議論の様子など分かりやすく伝えていきたいと思います。


教師のバトン、画面キャプチャ noteには意見に対する今後の取組についての記事も追加されている(教師のバトンより)



 もちろん、中には本来の趣旨である「教師をやっていてよかったと思う瞬間」なども少数ながら投稿されています。しかし現状ではこういった投稿はごくわずかで、現役教師たちからの悲痛な訴えの方が圧倒的に上回ってしまっているのも事実。徐々に働き方改革が進みつつあるとはいっても、やはり現場の教師との認識のずれは大きいと感じざるを得ません。今回のことが、教員にとっても生徒にとっても、良い方向に向かうことを願います。



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