『嘘喰い』最強のエピソードがエア・ポーカー編である理由を、今から皆さんに説明します今日書きたいことはこれくらい(1/3 ページ)

全部面白いけどやっぱり「エア・ポーカー」が突出していたよねという話。

» 2021年05月21日 19時30分 公開
[しんざきねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 最強議論って盛り上がりますよね。

 例えば「ONE PIECEで一番強いのは誰だ?」とか「ドラゴンボールで一番強いのは誰だ?」といった話なんですが、この手の最強議論、大抵やたら白熱します。以前、酒飲みながら「黄金聖闘士で最強なのは誰だ」議論やったら2時間かかっても決着がつきませんでした。


ライター:しんざき

しんざき プロフィール

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ、三児の父。ダライアス外伝をこよなく愛する横シューターであり、今でも度々鯨ルートに挑んではシャコのばらまき弾にブチ切れている。好きなイーアルカンフーの敵キャラはタオ。

Twitter:@shinzaki


 この世にはありとあらゆる最強議論が満ち溢れておりまして、その中には恐らくあなたが知らない最強議論も多数あります。

advertisement

 例えばネット掲示板群「5ちゃんねる」には、強さ議論専用の板である「格付け板」なんてものがありまして、ただ「一番は何か」ということだけをテーマに、真面目に議論をしたりしていなかったりします。

 「ダイの大冒険強さ議論スレ」とか「メガシンカポケモン最強格付け」くらいならまだ分かりやすいんですが、「クレヨンしんちゃん強さ議論スレ」とか「ぼのぼの強さ議論スレ」あたりでだいぶ人類の英知をもってしても理解することが難しくなっていきまして、「愛知県岩倉市 強さ議論スレ」までくるとごめんちょっと何いってるのか分かりません、という領域になってきます。一方「全生物の大きさを同じにした時の強さ格付けスレ」みたいな、普通に興味を引かれるスレッドもあります。現状は議論成立してませんけど。

 個人的にはアンパンマン強さ議論スレが以前からのお気に入りでして、映画版をはじめとしてありとあらゆるアンパンマンキャラクターを集積して強さ議論をしているので、あなたの知らないアンパンマン世界を垣間見ることができます。同じアンパンマンでもステータスによって別キャラと認識されておりまして、現在の最強格付けは「アンパンマン(スターライト)」だそうです。スターライトって「だだんだんとふたごの星」で出てきたアレですよね。長男がちっちゃいころに見ました。


嘘喰い アンパンマン強さ議論スレ」より、現在の強さランキング

 まあ、レギュレーションやら何やらきちっと基準を決めて議論するのも楽しいけれど、飲みながらわいわい「あいつは強い」「いやこいつの方が強い」と適当に騒ぐだけでも面白いものです。皆さんはお気に入りの強さ議論ネタ、お持ちでしょうか。

advertisement

 それはそうと。

 ここに嘘喰いという漫画があります。

 作者は迫稔雄先生。2006年から2018年まで、10年以上にわたってヤングジャンプで連載されたギャンブル漫画でして、天才ギャンブラーである斑目貘(まだらめばく)、通称「嘘喰い」がさまざまな相手とギャンブル勝負をしていく、端的にいってめちゃ面白い漫画です。


嘘喰い 『嘘喰い』1巻(Amazon.co.jpより)

 嘘喰い世界には、ギャンブルを取り仕切る組織である「賭郎(かけろう)」という組織があります。その賭郎のエージェントである「立会人」が提供するさまざまなゲームやギャンブル、通称「賭郎勝負」において、貘やそのパートナーである梶隆臣(かじたかおみ)は、バラエティ山盛りな強敵たちと相対していくことになります。ときには知略を駆使した虚々実々の「知」の戦い、時には暴力を駆使した肉弾戦(※貘自身は身体能力ミジンコなので全く戦いません)である「暴」の戦いが、迫先生の迫力特盛の画力で描写されます。未読の方はぜひ一度読んでみて下さい。損はさせません。

advertisement

 で、嘘喰い好きの間で非常に盛り上がるテーマとして、

 「どのエピソードが一番面白かったか」

 というものがあります。

 上述した通り、嘘喰い作中ではさまざまな「賭郎勝負」が展開されるのですが、「その中で最強に面白いヤツどれなん?」という話です。もちろん「面白さ」なんて人それぞれなんで基準はいい加減なんですが、これが結構嘘喰い好きの間では盛り上がるんですよ。

 例えば、雪井出との紙上ゲームがそのまま実物大の迷宮ゲームと化した、「ラビリンス」編

 例えば、暴・知共に、最後の最後まで勝敗が見えない戦いが続いた「業の櫓」編

 例えば、古代ギリシアに存在したと伝えられる処刑器具を使ったおぞましい火刑ゲーム、「ファラリスの雄牛」編

 例えば、嘘喰い全編を通してみてもまれに見る天然巻き込まれ型ヒロインである大船額人さん(ガクトと呼ばれると喜ぶ)が大活躍する「バトルシップ」編

 なるほど、それぞれにすばらしく熱く、また面白いエピソードだったことは間違いありません。

 ただ、ことしんざきについて言えば、「嘘喰い最強のエピソードは何か」と聞かれれば、ノータイムでこう答えます。

 それは「エア・ポーカー編」だ、と。

 前置きが長くなりましたが、以下、この記事では「嘘喰い」における「エア・ポーカー」勝負がいかに面白いエピソードだったのか、ということを詳述していきます。例によって、私が勝手に「書かせてください!」って言ったら「いいよ」って言っていただけたヤツなんで、特にPR記事ではないです。

 すいません、ここから先は説明上どうしても最低限のネタバレを避けられないので、嘘喰い未読の方で「一切ネタバレを読みたくない」という人は、ぜひエア・ポーカー編だけでも読んでみてください。単体で読んでも十分面白いので。単行本でいうと40巻から43巻までがエア・ポーカー編になります。


価格:¥537
屋形越えの権利を賭けた卍勝負。その最終決戦“エア・ポーカー”が今、始まる!! 静まり返る監獄内に対峙する“嘘喰い”貘と“アイデアル首領”ラロ。命を賭す舞台は水中。相手の息の根を止めるまで終わらない超絶難度の死亡遊戯が開幕の時を迎える──。
価格:¥537
賭郎史上最高難度の死亡遊戯“エア・ポーカー”。その最中、一度“死”を見た“嘘喰い”こと斑目貘。対峙するは“アイデアル首領”ビンセント・ラロ。現在、戦績は一勝一敗。秘された「法則」に迫る貘、あえて背を向けるラロ!! 果たして勝機を掴むのはどちらなのか!? 命を賭した究極のデスゲーム、ますます激化!!
価格:¥537
屋形越えを賭した最終決戦“エア・ポーカー”三回戦が終了!! 貘に降り注いだ“天災”という悪夢──。そして、開始から謎に包まれていた「役を作りし者達」が明らかに!! 「上」に突如現れた究極の拷問器具“売女の痛み”は激しく互いの協力者へと襲い掛かる!! 貘・ハルVSラロ・梟、極限状態の死亡遊戯を制すのは果たして!?
価格:¥537
“エア・ポーカー”五回戦クライマックスへ!! 梟雄・ラロの脳内に過る“耐久戦”の三文字──。そして新たに生まれた“残Bios偽装”疑惑!! 最終戦のカードは、貘「25」VSラロ「44」。「生」を手にして、“屋形越え”の権利を掴み取るのは果たしてどちらか──!?



嘘喰い最強のエピソード「エア・ポーカー編」とは

 まず簡単に、エア・ポーカー編のあらすじから説明させてください。

 さまざまな闇ギャンブルを取り仕切る組織である、倶楽部「賭郎」。その賭郎の長は「お屋形様」と呼ばれるのですが、「屋形越え」という勝負を挑み、その勝負に勝つことによって、「お屋形様」になり替わることができます。斑目貘の目的は、その屋形越えに挑むこと。

 一方、国際的な犯罪組織である「アイデアル」のボスであるビンセント・ラロも賭郎を狙っており、貘は紆余(うよ)曲折の末、ラロと「屋形越え」の権利を賭けて戦うことになります。その戦いの舞台が、MMORPGである「プロトポロス」の世界を再現した島であり、その最終決戦として貘とラロが覇を競うことになった勝負が「エア・ポーカー」です。

 エア・ポーカーは、「水の中に沈んだ状態で、呼吸するための空気が入ったコイン『Bios(エア)』を賭けてポーカーをする」というルール。Biosを失うということは、即「呼吸ができなくなる」ということで、負けは死に直結します。

 しかも、通常のポーカーなら5枚のトランプを使って勝負をするところ、エア・ポーカーは謎の数字が刻まれた1枚ずつのカードを提示して、しかも「相手に手札をオープンした状態で」Biosを賭けていくという、通常のポーカーからすれば全く常識破りなルールでした。しかも、賭けた手札のどちらが勝つかは、「ある法則によって予想することが可能」といわれるのみで、貘たちには公開されないのです。


嘘喰い 開いた状態でBet (C)迫稔雄/集英社

 貘とビンセント・ラロは、この「どちらかが必ず死ぬ」という恐るべきギャンブルで、文字通り「命」を賭けて戦うことになります。

 この「水中に漬かった状態で、空気を賭けて勝負するポーカー」という時点で既に十分スリリングなんですが、このエア・ポーカーの面白さは全くそこにとどまりません。

  • この勝負が、プロトポロス編までの全てを集約した、文字通りの「決戦」であること
  • 徐々に「エア・ポーカー」の全貌が明かされていく中で、勝負の様相がどんどん変わっていく、「ルール公開」と「話の展開」が完全にシンクロしたストーリーであること
  • この「エア・ポーカー」自体「常人には絶対にできない勝負」であることにものすごく説得力があること
  • 次の「屋形越え」に至るまでの展開としても完璧なストーリーだという他ないこと

 このへんについては全力で指摘しておきたい次第なんです。


       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/25/news050.jpg 初めて夫の実家に挨拶した妻、初々しかった表情が9年後…… “そうはならんやろ”な変わりっぷりが1150万再生
  2. /nl/articles/2503/23/news042.jpg ニットで口元が隠れた赤ちゃん、そっと脱がせてみると…… “想像を超える”表情が2300万再生「心に刺さった」「今まで見た中で1番!」【海外赤ちゃん記事3選】
  3. /nl/articles/2503/24/news034.jpg 「多分日本で1位、2位を争う」 3児のママが書いた“通園経路図”がすごい! 「えーめちゃ最高ですね」「中高生だったら溜まり場」
  4. /nl/articles/2503/23/news036.jpg サイゼリヤのメニューを片っ端から注文→10人がかりで完食したら…… 驚がくのレシートに「やすぅ」「すごすぎ」
  5. /nl/articles/2503/23/news033.jpg 段ボールに切れ込みを4つ→“信じられない変形”をするライフハックに80万再生の反響 「今世紀最高の技だ」
  6. /nl/articles/2503/25/news066.jpg 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい~」「読める人同世代w」【マクドナルド面白投稿まとめ】
  7. /nl/articles/2503/25/news047.jpg セリアのクッションカバーを2枚縫い合わせるだけで…… “まさかの完成品”に「なるほど!」と驚きの声
  8. /nl/articles/2503/24/news181.jpg つるの剛士、大学卒業式で判明した“本名”が珍しすぎて読解困難 証書に書かれた一文字へ「難しい漢字だったの忘れてました」「鶴じゃなくて」
  9. /nl/articles/2503/25/news028.jpg 「これはうれしい」 引っ越しのあいさつでもらった手土産、開封したら…… “センス抜群の中身”に「参考にしたい」
  10. /nl/articles/2503/25/news039.jpg ドイツ人女性「今まで自分で髪を切っていた」→日本で“美容室”を初体験すると…… “印象激変”のビフォアフに仰天「生まれ変わったみたい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  2. Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  3. 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  4. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが550万再生「凄すぎて笑うしかないw」「チーズが、、、」 話題になった作者に話を聞いた
  5. ディズニーランドがオープンした1983年当時、カップルだった2人→37年後…… 目頭が熱くなる現在の姿に感動
  6. ニットで口元が隠れた赤ちゃん、そっと脱がせてみると…… “想像を超える”表情が2300万再生「心に刺さった」「今まで見た中で1番!」【海外赤ちゃん記事3選】
  7. 水族館のイカに“指でハート”をしてみたら… “まさかのお返し”が190万表示「こ、こんなことあるのか」
  8. 「ひどすぎ」 東京ディズニーランドで“約100人のドジャースファン”が一斉に“迷惑行為” 「やめてほしい」と物議
  9. 19万8000円で購入した超高級魚を、4年間育てたら…… ド肝を抜く“大変化”に「どんどん色が」「すごい」
  10. 初めて夫の実家に挨拶した妻、初々しかった表情が9年後…… “そうはならんやろ”な変わりっぷりが1150万再生
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に