「小学生はプリキュアを見るけれど、玩具を買わない」という現実に「トロピカル〜ジュ!プリキュア」はどう立ち向かったのか?:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
対象年齢が「6歳以上」の理由
そして、この「Pretty Holic」には、プリキュアにとってもう一つの重要な戦略があります。
従来「変身パクト」などプリキュアの主力玩具は対象年齢が「3歳以上」でした。しかし、この「Pretty Holic」のコスメシリーズは対象年齢が「6歳以上」なのです。
これはプリキュア玩具において画期的なことなのです。
なぜならば、対象年齢が6歳以上、ということはプリキュアの主なターゲットである(ほとんどの)幼稚園児が商品の対象外となってしまい、キッズコスメでは遊べないのです。
では、なぜにプリキュアは、メインターゲットを対象外としたアイテム展開を始めたのでしょうか?
小学生はプリキュアを見ているけど玩具は買わない
バンダイのマーケティング担当によれば、小学生女子は「プリキュアのアニメは見ているけど、玩具は買わない」というデータがあるようです。
キッズコスメ商品のメインターゲットは6歳以上。小林氏は「6〜9歳のプリキュア視聴層は多いものの、玩具購入となるとそのほとんどが3〜5歳。6〜9歳は番組を見ているけど、玩具をほとんど購入していないのでそうした層にアピールしていきたい」と語る。
『月刊トイジャーナル 2021年2月号』(東京玩具人形協同協会) P9
つまり、バンダイの戦略としては、3〜5歳には従来の「なりきり変身玩具」や「お世話玩具」を展開し、これまで玩具を買ってくれなかった6歳以上の小学生に「Pretty Holic」のコスメシリーズを展開する、という戦略のようです。
そのために、「Pretty Holic」はパッケージはマットな質感で高級感を出し、水彩調のイラストでやや上の層を意識していることが伺えます。
「プリキュアとお揃いのコスメや、番組に出てくる人気コスメが本当に買える様にした。パッケージはマットな質感で水彩タッチのイラストを採用するなど敢えて雰囲気を少し変えた」
『月刊トイジャーナル 2021年5月号』(東京玩具人形協同協会) P53
この「Pretty Holic」シリーズは、プリキュア玩具の対象年齢を広げるための戦略アイテムでもあるのです。
「幼稚園を卒園したらプリキュア玩具も卒業」ではなく「小学生になってもプリキュアのアイテムを購入」してもらい、対象年齢を広げることにより売り上げの拡大を目指していくようです。
ここ数年、プリキュアのトイホビー売り上げは他ライバル玩具の台頭や、玩具自体の多様化に加えコロナ禍の影響などもあり、2010年のピーク時の約半分近くにまでなっています。「Pretty Holic」はその復活の起爆剤となるのでしょうか。
大人向け「Pretty Holic」も展開
さらにこの「Pretty Holic」、大人向けコスメブランド「Pretty Holic Luxe」も展開を始めました。
こちらでは大人のプリキュアファンに向けて、キュアブラック、キュホワイト、キュアドリームを使用した「変身アイテム型のマルチバーム」が第1弾として用意されています
「お化粧は他人のためではなく自分自身のエンパワメントのためにする」という「トロピカル〜ジュ!プリキュア」で描かれる思いは、きっと大人にも必要なことなのでしょうね。
3〜5歳以外にもプリキュア玩具を
プリキュア玩具もこれまでのように幼稚園児(3〜5歳)に向けた商品展開だけでは、少子化なども踏まえ売り上げ的にも厳しくなっていくことは容易に想像できます。
「Pretty Holic」のように小学生に販路を向けたり、通販ルートでのオトナ向けアイテムの充実化を図ったりと、販路を広げていく戦略が垣間見られます。
また2021年から、スーパー戦隊とプリキュアの玩具は、レジ袋有料化を踏まえて商品をそのまま持てるように「取っ手を付けたパッケージデザイン」に変更したり(『月刊トイジャーナル』 2021年2月号P9)、玩具メーカーはさまざまな施策で売り上げを上げようとしています。
小学生にもプリキュアの販路を広げるという戦略アイテム、キッズコスメ「Pretty Holic」。
「多くの幼稚園児が遊べない、小学生に向けたプリキュア商品」という、ある意味画期的なジャンルは、今のところ大成功を収めているようです。
「トロピカル〜ジュ!プリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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