運賃はそのままで! 阪急電車がワックワクな“楽しい電車”を立て続けに走らせる理由(1/3 ページ)
これだけ楽しめて「運賃はそのまま」、太っ腹すぎ……!! 阪急電車に聞きました。
大阪、京都、兵庫を結ぶ、マルーンカラーでおなじみの阪急電車。2021年7月にかわいすぎるコウペンちゃんコラボ電車「コウペンちゃん号」(関連記事)が走り始めましたが、これ以外にもさまざまな人気キャラクターとのコラボを実現しています。
キャラクターコラボだけでなく、車両の中に「畳の席」や「和風庭園」がある観光列車「京とれいん」シリーズなど、なかなかにぶっ飛んだ車両もあるんです。
しかも「運賃はそのまま」。例えば大阪梅田駅から京都河原町駅まで片道400円(2021年7月現在)と、普通運賃のまま楽しめてしまいます。
なぜ阪急電車は、普通運賃で乗車でき、予約などもいらない特別電車や装飾電車を走らせるのでしょう。“楽しい電車”が続々と生まれる背景を阪急電鉄広報部の名越玲子さんに聞きました。
100周年記念で生まれた阪急電車の特別列車
阪急電車に特別列車がたくさん誕生するようになったのは2009年ごろのこと。
「始まりは2009年の夏頃。阪急電鉄の営業開始100周年記念として、社員が意見を出し合い、斬新な車両を作り上げていくことを目的にプロジェクトがスタートしました」(名越さん)
この中で「和・モダン」を基本的なコンセプトとして、京都をイメージさせる内装、また多くの乗客に対して快適で楽しい車両を提供する観光列車を作ろうということにしたのが始まりでした。
「外国人旅行者の方にもご利用いただきやすいように、日本語、英語、韓国語、中国語の4か国語による案内や観光ガイド放送も実施しました。車両はもともとあった6300系の列車をリニューアルしたので性能には特に変更点はありませんが、内外装を大きく変えました」(名越さん)
6300系は京都線を走る列車の1つ。かつての特急専用車両で、1976年に鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞した名車です。
阪急電鉄の線路幅は新幹線と同じ標準軌で統一されていますが、京都線の車両はOsaka Metroとの相互乗り入れがあることで神戸線や宝塚線とは車体の幅が違い、少し幅広く設計されています。そのため京とれいんは京都線しか走れないのだそうです。
「京とれいんは2011年3月にデビューしました。今年(2021年)でデビュー10周年を迎え、記念ヘッドマークの掲出などを行っています」(名越さん)
2019年3月には京とれいんの2編成目として「京とれいん 雅洛(がらく)」がデビュー。京とれいんのイメージを継承しつつ「ご乗車されたときから京都気分」をコンセプトに、五感で京都を感じられるデザインにしました。
時速100キロで走る「和の庭」! 「京とれいん 雅洛」もかなりぶっ飛んだ仕様
京とれいん 雅洛も他にはなかなかないぶっ飛んだ仕様です。車体横にはでっかい扇、扇の真ん中には丸い窓があります。
「京とれいん 雅洛は、7000系の車両がベースです。1両に3つあった扉を2つにし、真ん中の1つを“丸窓”に改造しています」(名越さん)
そう、この窓を車内から見ると……。これもう電車じゃないでしょう。完全に和室。改造って軽く言いますが、車両担当の方、相当苦労されたはずです……。
「この雅洛は、もともと神戸線で走っていた車両を京都線の観光列車として運用しているところもポイントなんです。臨時の直通特急として、神戸線から京都線へ列車を走らせたこともあります」(名越さん)
雅洛には「前方映像配信サービス」も新たに取り入れました。スマホで車内の雅洛専用Wi-Fiにつなぐと、リアルタイムな「前面展望」を楽しめます。マニアックでうれしい!
そして、京とれいん 雅洛の最大のポイントは、何と車内に「坪庭」があること。時速100キロで走る枯山水の庭。いやもうこれ、やっぱりただの電車じゃないですよね。「運賃はそのまま」なのに。
車両デザインには、社内デザイナーを起用したそうです。きっと思いっきり遊んだのですね。
「京とれいん」「京とれいん 雅洛」は、2021年7月現在、感染症流行の影響で運休しています。早期の再開が待ち遠しい……。再開されたらまた、何度も乗りたくなる電車です。
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