ここで言えない何かがある劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045』 田中敦子、大塚明夫、山寺宏一のオリジナルキャスト3人に聞く本音(1/3 ページ)
押井守版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』から四半世紀以上、作品世界をともに創り上げてきた3人の実像と本音に迫りました。
士郎正宗さんの漫画『攻殻機動隊』を原作としたアニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』の劇場版『攻殻機動隊SAC_2045 持続可能戦争』が、11月12日から2週間限定で上映されます。
2020年にNetflixで配信された『攻殻機動隊 SAC_2045』のシーズン1全12話を再構成した劇場作品。藤井道人さんが監督として編集などの構成を手掛け、映像もフルグレーディング処理(色味や階調の再調整)を施し、新たなシーンも加えています。
シーズン1をご覧になった方なら、約2時間の尺に再構成された同作は、おさらい以上でも以下でもないと感じるかもしれません。しかし、試写でみた限り、メリハリが効いて、かつシーズン作品とは異なる編集は、確かに別の視点を感じさせます。新たなシーンは全体からするとわずかですが、それでもシーズン1でもやもやした気持ちに一筋の光明が差し、2022年配信予定のシーズン2への期待をあおる内容となっています。
ねとらぼではこれまでに、神山健治、荒牧伸志両監督へのインタビューをお届けしましたが、今回は、長く続くシリーズを支えてきた草薙素子役の田中敦子さん、バトー役の大塚明夫さん トグサ役の山寺宏一さんの3人にインタビュー。押井守版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』から四半世紀以上、作品世界をともに創り上げてきた3人の実像と本音に迫りました。
田中敦子「私にとってとても幸せだったのは、オリジナルキャストで演じさせていただけたこと」
―― 『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン1を振り返って、皆さんがどこに魅力を感じたかをあらためて聞かせてください。
田中 私にとってとても幸せだったのは、オリジナルキャストで演じさせていただけたことです。神山監督の下でまた公安9課が一丸となって事件に挑んでいく、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)』や『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG(2nd GIG)』を踏襲しながらフル3DCGで描かれた世界観全てが『攻殻機動隊 SAC_2045』の魅力だと思います。
大塚 言われて気が付きましたが、オリジナルメンバーというのは大きいのかなと。それと、製作が発表されたとき、フル3DCGであることをやゆする声があって、僕も「とにかくまずは見てください、面白いから」とメッセージを出した覚えがありますが、配信後はそういう声も少なくなって。何より話が面白いと思うんです。だから、魅力は、面白いこと。
山寺 もう言うことなくなるじゃないですか(笑)。2人と重なりますが、まずはストーリー、そして世界観。それがやっぱり今回も面白いなと。
―― シーズン1で、印象的なものやお気に入りは?
田中 素子に関して言えば、第1話のオープニング。海外の開けた土地で明るい太陽の下、「ノイズがないって素晴らしいわ」というせりふが本当に象徴的で、あの明るく開放的なシーンがとても好きです。
それと、フル3DCGになったことで、風景などがリアルに描かれるのが作画(2D)と違っていました。シーズン1の後半ではトグサが京都に行くシーンがありますが、集落やケシが咲き乱れる風景、空挺さんが潜伏している小屋などがリアルに描かれています。
―― タカシの叔父の家のかやぶき屋根なども郷愁を感じました。
田中 そんな中で私が印象深いのは、タカシの従兄妹だったユズが亡くなるシーンの描かれ方。着ているワンピースの裾の揺れで被弾を表現しているのが、風景との対比もありつつとても印象的で。
大塚 それ言おうと思っていたら今出ちゃった(笑)。被弾したんだなと思ったときの切なさはちょっと忘れがたいよね。あとはバトーが日本に帰ってきたときに、年寄りたちが銀行強盗しようとするじゃないですか。あのじいさんたち元気かなって。
―― 日本で四半世紀ぶりに発生した銀行強盗も、全然サステナぶってないですが、レトロなレイドといえ、資本主義の負の側面が膨れた先にある超格差社会を色濃く感じました。
大塚 あと嫌だったのがね……タカシが学校で逃げようとしているときに、生活指導の数学教師(ヤマダ)が生徒指導室から出てくるところ。部屋の奥に誰かいる、それはきっとカナミだと感じたときのおぞましさ。そういう表現が2Dのときよりエグくなっている。そうやって“刺さっていく”ことはやっぱりすごいなと。
―― それまでどちらかといえば勇気がなく内向的だったタカシがポスト・ヒューマンに覚醒するきっかけとなったのが、同級生のカナミの事件でしたね。
大塚 そういう積み重ねで、今回のシリーズも非常に面白い。ただでさえ『攻殻機動隊』って普段アニメ見ない大人の方でも楽しめる作品ですけど、それに磨きが掛かっている感じがします。
山寺 僕は第8話かな。
トグサだけ別行動ってのはこれまでもよくあって、後に合流するのは今回もそう。合流したはいいけど、ポスト・ヒューマンの事件を追うのかどうかを自分たちで決めることになって、トグサはやりたいと少佐に言うけどテストされるじゃないですか。
―― 「トグサの死によってもたらされる事象」という第8話のタイトルは見進めるのをためらいました。あそこではバトーから「少佐並みの手際」だと褒められていましたね。
山寺 あの回、あんなことがあってトグサ死んだのかと思わせてテストをクリアし「もう一度、9課でいろいろやらかしませんか」というせりふ。良いせりふありがとうございますって思いました。その後、帝都総理に向かって荒巻が「新生9課の誕生です」と言ってみんなが前を向くのが、往年の刑事物のオープニングみたいにかっこよくてHooah!ってなりました。自分の出てるシーンばっかですみません。トグサにたくさん活躍の場を与えていただいたので。トグサは結局視聴者目線に一番近いんですよね。1人だけずっと青臭いと言われているけど、裏表ないし、素直な目線で見られるからなんでしょう。
山寺「その役が生きているように仕上げなきゃいけない」 芝居の変化
―― フル3DCGに加え、モーションアクターによるモーションキャプチャーを採用したことによる影響はありましたか?
山寺 モーションアクターを使ったフル3DCGアニメということで、シリーズをずっと好きでいてくれた人は少しとっつきにくい部分もあったかもしれません。ただ、近未来を描いたとてもリアルな物語なので、やはりこのやり方は素晴らしいなと。
モーションアクターの方々が大変だっただろうなとはすごく思います。われわれはその映像に合わせつつ自分たちの芝居をしなきゃならないので難しいところもありましたが、またやらせていただけることに本当に喜びを感じました。
大塚 モーションアクターの方々が演じているところにせりふを乗っけていったんですけど、出来上がってみると、CGにして正解という感じがしました。収録のときは分からなくて、配信を見て「すごい面白い」っていう。
田中 アフレコ自体は従来とそう変わっていませんが、モーションアクターの方が演技をされていてせりふの音声が入っているんです。それをアフレコで聞く人と聞かない人に別れましたが、私は聞きながらやっていました。口の動きやブレスが分かりやすかったりしましたので。CGであることも含め、海外ドラマや洋画の吹き替えに近い雰囲気がしていました。
大塚 長い間、絵しかない段階で声を入れていたので、自分の呼吸で好き勝手に芝居をしていた部分もありました。モーションアクターの方が入ることで、声とかせりふ回しを似せてきてくれるんですが、どうしても攻殻のせりふって日常使わないものが多い。あれを覚えて確認しながら紡いでいくと、機関銃みたいな言い方がなかなか成立しなくて口が合わなくなっちゃう。その微調整はやっかいでした。
せりふって呼吸が実はとても大事で、呼吸をシンクロさせるのはなかなか難しく、あまりそこに乗っかっちゃうとバトーらしくなくなっちゃうかなというところで苦労しましたね。
山寺 僕は練習のときは聞いて、ここでこういうせりふを言っているからこの口の動きなんだとチェックして、本番では聞かなかったです。2Dの作画にわれわれが声を入れるときもそうですが、本当にその役が生きているように仕上げなきゃいけない。当然ですが合わせただけの上っ面の芝居になっちゃ駄目。
それとキャラのデザインもどんどんかっこよくなって、トグサなんて最初のときと違う人みたいに見えたりするけど、声が入るとやっぱりトグサだなぁと思ってほしいとか、すっと物語に入れると感じてもらいたいってのはあります。そこがまた起用して頂いた理由なような気がしますし。
大塚 そこは意地だからね。
田中 従来と大きく違うのは、コロナになってからです。シーズン1のときはみんなで集合して、今までと同じように撮りましたが、コロナ後は分散収録でした。
「われわれは引っ張ってもらっていますよ、あっちゃんに」 素子としての田中敦子
―― 押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』から数えると26年がたちます。この時間の流れはお三方の今作における絆や向き合い方をどう強めましたか。
田中 『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の収録から数えると27年前になりますが、その前にも個別のオーディションや3人そろってのオーディションもあって。そこからご一緒させていただいていますので、私にとっては家族以上です。私が新人に近いときから大塚さん山寺さんとご一緒させていただいて「本当に夢みたい」と思った覚えがありますが、それは27年たった今でも変わりません。
ずっとお2人に守って、あるいは支えていただきながらのメスゴリラ、少佐だと、私、田中敦子的には思っています。もちろん、芝居の上ではあくまでも隊長として演じてきましたが。
山寺 いや、われわれは引っ張ってもらっていますよ、あっちゃんに。
大塚 逆にこんな素敵な女性とレギュラーで毎週会えるなんて夢みたい。
田中 ありがとうございます先輩。こういうところが本当に“家族以上”な感じです。
大塚 同じ時代をともに戦った友をよく“戦友”と言いますが、本当に僕にとって、田中敦子さんも山寺宏一さんも、戦友を越えて“きょうだい”みたいな気がします。
田中 (『攻殻機動隊 SAC_2045』の)キャラクターデザインが上がった段階では、(キャストは)私たちじゃないんじゃないかと、顔を会わせる度に話していましたから。
山寺 もし違ったらショックだから、「(キャスト)違うんじゃない。若手いっぱいいるからねー」なんて言っていましたけど、内心はね。
大塚 そんな思いをしていたところにまた集まれたので本当にもうすてきでしたね。学生時代、一緒に過ごした街にみんなで戻ってきたような。フル3DCGで多少様子が違っても、みんながしゃべりだしたら「昔住んでた懐かしい街だ」みたいな。それは感動すら覚えました。
田中 OPテーマ「Fly with me」を担当した「millennium parade」常田大希さんが主宰するクリエイティブチーム「PERIMETRON」のラジオ(PERIMETRON HUB)に神山さんが荒牧さんと一緒にゲスト出演されたとき、『攻殻機動隊 SAC_2045』を作るにあたり、オリジナルキャストでやることが条件だったというお話をしてらしたのを聞いて、本当に泣きました、私。
山寺 27年もたったのかという思いもありますね。しばらくやってないなと思いながらいざ集まるとすっと時間が戻るというか。でもね、あっちゃんはこんなふうに言ってくれていますけど、“素子としての田中敦子”がいるのが軸になっていますよ。
あっちゃんの芝居を聞くと、「おっ少佐」ってトグサの気持ちになっちゃって。トグサは最初から結構ひどいこと言っているんですよ。「あんなゴツいお姫様にエスコートなんているのかね」みたいなね。あれこれ言うけどトグサは少佐のことが大好きで、それは自分を本庁から引き上げてもらったこともあるからなんでしょうけど、その気持ちは何かすっと入るんです、このキャストでやると。
明夫さんは本当にアニキみたいな人なので、でも普段からそんなにベタベタしているわけじゃなく、だから“STAND ALONE COMPLEX”とはよく言ったもので、そんなに連絡とっているわけじゃなくても、それぞれが集まってやると「攻殻」チームだという感じがする。やっぱりいい作品で集まってると特にそういうのあるんですかね。作品に成長させてもらっている感じがします。
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