“存在しないはずの謎コイン”最終章 「奇跡体験!アンビリバボー」との青森・むつ小川原取材で浮かび上がってきた新説とは(前編)(2/2 ページ)
「昭和56年に購入したのは間違いない」――大手製紙メーカーに勤めていた小岩征夫さん
続いてお話を伺ったのは、河村さんと同じ製紙メーカーの林材課に勤めていた小岩征夫さんです。
――謎コインをお持ちだと聞きました。
小岩:はい、1枚持っています。購入の経緯などは覚えていないのですが、もともとコイン集めが好きだったので購入したのだと思います。
――謎コインを購入した場所は覚えていますか。
小岩:会社で買ったのは間違いないです。ただ、当時から警備が厳しかったですから行商は出入りできませんし、保険の外交員ぐらいしかセールスには来ていなかったと思うんですよね。
――桐箱の「S56」という記載について教えてください。
小岩:このコインを購入した年が昭和56年であることを示しています。購入当時自分が書いたものに間違いありません。
――小岩さんはこのコインについて記念硬貨だと思っていましたか。
小岩:はい。1000円として使えるものだと思っていたのですが、4〜5年前に貴金属の買取店に記念硬貨を何枚か持って行った際に「これは買取できません」と言われてしまって、そこで初めて「記念硬貨ではなかったんだ」と気づきました。
――同じ会社で勤めていた河村さんもコインをお持ちなのですが、接点はありましたか。
小岩:総務課と林材課は部署としては遠い方なのですが、河村さんとは比較的親しかったので、もしかしたら声をかけてもらって購入したのかもしれませんね。それにしてもこのコインなんなんでしょうね。
次々に青森県内で見つかるコインーー浮かび上がったある説
また青森取材と並行して情報提供を求めたところ、新たにコインの持ち主が見つかりました。ここで一旦情報を整理してみましょう。
謎コインの持ち主と見つかった場所
- 青森県上北郡野辺地町の建築関係者:1枚(新)
- 青森県上北郡六ヶ所村の大工の棟梁:1枚(新)
- 青森県八戸市の製紙メーカー勤務だった河村さん:5枚(新)
- 青森県八戸市の製紙メーカー勤務だった小岩さん:1枚(新)
- 青森県八戸駐屯地業務隊所属の元自衛官Iさん:2枚(既報)
- 青森県八戸駐屯地第1中隊所属の元自衛官Sさん:1枚(新)
- 青森県内のドライブインでコインを譲ってもらったBさん(既報)
- 八戸市内の質店「この1年で5枚程度持ち込まれている」(新)
- ハリジャンぴらのさん(既報)
「この1年で5枚程度持ち込まれている」という八戸市内の質店によると、「謎コインは八戸市内の人たちが持ち込んでおり、現在は価値が高騰していることから1万数千円で買い取りするケースもある」とのことでした。
つまり、知人からコインを譲り受けたハリジャンぴらのさんを除き、新たにコインが見つかったのはすべて青森県内。1980年代に盛んだったことから有力視されていた、「むつ小川原地域での原野商法トークン説(※)」については、東京・大阪など青森県と離れた地域でなくては成立しないことからかなり可能性が薄まったといえます。
(※)原野などの価値の無い土地を価値のあるように見せかけて売りつける悪徳商法で使われたアイテムという説。
また地図の位置関係を確認すると、河村さん・小岩さんが勤めていた製紙メーカーと自衛隊八戸駐屯地は道路を一つ挟んだ向かい同士の立地ということも分かりました。
これを受けて謎コイン2枚を持つ青森県八戸駐屯地業務隊に所属していた元自衛官Iさんとその娘さんにあらためてお話を伺ったところ、「最近になって若干記憶がよみがえってきた。前回の取材で出たキーワード『行商人』は、もしかすると『保険外交員』だったかもしれない。前回の取材後に、当時の同僚だった元自衛官や思い当たる職場関係者に連絡を取ろうとしたもののほとんどが亡くなっており情報の収集が難しい状況だった。当時は記念硬貨だと思って購入したが、お金として使えるかどうかは二の次で、記念品として結構な人数の自衛官が購入していた」と話してくれました。
さらにねとらぼ編集部公式Twitter誤爆事件がきっかけで情報を寄せてくれた第1中隊所属の元自衛官Sさんについては、「八戸駐屯地で集団購入したもののようです。同僚とそれほど交流があるタイプでもなかったのに購入していたことみるに、謎コインを購入をせざるを得ない雰囲気があったのかもしれないと考えています」とSさんの家族が新証言を寄せました。
ねとらぼ誤爆事件(これをきっかけにコインの情報提供が寄せられた)
また複数の関係者の協力により、当時八戸駐屯地内に存在していた保険会社は、協栄生命保険・東邦生命保険・弘済企業など12社であったことが判明。協栄生命保険・東邦生命保険に関しては幹事会社だったため駐屯地内の厚生課に常駐していたものの、その他の企業について出入りという形で八戸駐屯地を訪れていたという話も寄せられました。
新たなキーワード「退官自衛官」と「徽章メーカー」
自衛隊関係の保険会社についての取材を進めるうちに、新たなキーワードも浮かび上がってきました。それは「退官自衛官」。
自衛官の多くは50代で定年を迎えることから再就職を希望する人が多く、地元の有名な企業に再就職することは少なくないとのこと。八戸駐屯地周りでは、河村さん・小岩さんが勤めていた製紙メーカーを始め、むつ小川原石油備蓄基地関係の企業、そして保険会社は再就職の有力企業として知られているといいます。
また退官自衛官は再就職後も自衛隊周りの営業を行う部署に就くことが多く、駐屯地によっては「顔パス」で出入りが可能だったとのこと。「当時の自衛隊の上下関係は今以上に厳しいものだった」という元自衛官Iさん、Sさんの家族の証言から推測すると、仮に退官自衛官が何らかの理由で謎コインを駐屯地に持ち込んだとすれば有無を言わせずに「買う雰囲気」が構築されていた可能性もあるといえます。
とはいえ残る謎は「誰が何のためにコインを作ったのか」。
Web上に書き込みのあった「昭和54年に石油備蓄基地立地決定してるので、その時に記念コインを発行したというニュースを青森ローカルTVで見た気がする。青森のローカル新聞、東奥日報の昭和54年を調べると判りそう」という情報をもとにアンビリスタッフが図書館に缶詰めになって調べている間、ねとらぼ編集部はコインの製造を依頼された可能性のある青森県内の徽章(きしょう)店を片っ端から調査。
すると複数の情報筋から昭和22年(1947年)創業の徽章店が名が挙がってきました。しかしその店は2017年に廃業していたのです。
現在の取材ステータス:新たな情報源からの新情報が寄せられ2023年2月現在鋭意取材中です。続報については青森県での再取材を経て掲載予定です。
(Kikka)
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