“存在しないはずの謎コイン”最終章 「奇跡体験!アンビリバボー」との青森・むつ小川原取材で浮かび上がってきた新説とは(前編)(1/2 ページ)
青森で発覚した驚きの真実とは……。
「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念と書かれたコインを昭和56年(1981年)に会社で購入し、5枚持っています」――。2020年1月と5月に記事を掲載し、大反響を呼んだ“存在しないはずの記念コイン”。誰が何のためにこのコインを作ったのか……そのミステリーの真相を突き止めるため、ねとらぼがフジテレビ系「奇跡体験!アンビリバボー」とタッグを組んで青森県へと上陸。現地取材で新たな説が浮かび上がってきました。
「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」コインとは
「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」コイン(通称:謎コイン)は直径約40ミリ、厚さ約2ミリ、重さ25グラム程度のコイン。
金色に輝いているのが特徴で、表面には石油タンクや煙突などが、裏面には青森県の県鳥「白鳥」と青森県の形、そして「日本国」「千円」の文字がデザインされています。
2019年10月にTwitterユーザーのハリジャンぴらの(@harizyan_pirano)さんが「検索かけてもさっぱりひっかからない。正体不明」とコインの存在を明かしたところ「誰が何のために作ったのか」と注目を集めました。
これを受けてねとらぼ編集部では成分分析を含む本格的な調査を開始。これまでの取材で以下の状況が見えてきました。
謎コイン、これまでに分かっていること
- コイン自体には「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」との打刻
- 桐箱には「むつ小川原湖国家石油備蓄開発建築事業」のと打刻
- 財務省ではコインの存在は把握しているが記念貨幣として発行された記録がないので「いわゆる貨幣ではない」
- 造幣局では「発行の記録がない」
- 青森県では「発行の記録がない」
- 石油天然ガス・金属鉱物資源機構「JOGMEC」で発行したものではない
- 国・青森県・経団連と共に「むつ小川原国家石油備蓄基地」関連の事業に携わっている「新むつ小川原」社では「心当たりのある社員はいなかった」
- コインは真鍮製で金メッキ加工を施したものとみられる
「5枚持っています」――大手製紙メーカーに勤めていた河村さんの証言
2020年1月、2020年5月と2度にわたる記事化が大反響を呼んだ反面、東京での取材にそろそろ限界を感じていた筆者のもとに衝撃的な連絡が入ったのは2021年9月のこと。
フジテレビ系列で放送中の「奇跡体験!アンビリバボー」が謎コインについて調べており、会いたいというのです。
そこで「現地に行かなければわからないことがあるので近々青森県へ取材に行く予定がある」と伝えたところ、急きょ青森県での合同取材が決定し、2021年10月、ついに青森・三沢空港に降り立ちました。
まず行ったのは新たに見つかったコインの持ち主たちへの取材。八戸市内の大手製紙メーカーに勤めていた河村美保さんは「昭和56年(1981年)に会社で購入し、5枚持っています」と話します。
――謎コインを入手した経緯について詳しく教えてください。
河村:社外からコインが複数枚持ち込まれ、「欲しい人はいないか?」と私が所属していた総務課で取りまとめた記憶があります。2020年にデーリー東北に記事が出ていたことから、謎コインの存在を思い出しました。当時同じ職場で働いていた人たちに連絡を取り、会社で入手したものだと確信を持ちました。
――誰がどういう経緯でコインを持ち込んだかは覚えていますか。
河村:そこがどうしても思い出せないんです。当時会社にセールスの人たちが出入りしていたのは覚えているのですが、ガードマンもいますし、行商のような人たちが飛び込みで入れるわけがありません。となると生命保険関係のセールスの方ぐらいしか思い当たらないんですが……。
――河村さんは5枚保有されているとのことですが、なぜ5枚買ったのでしょうか。
河村:これも記憶が定かではないのですが、2つの可能性を考えています。1つは上司などに「将来価値が上がるかもしれないから買っておいたらどうか」と勧められたというパターン。もう1つは社内で取りまとめをしたけれども希望者が少なくてコインが余ってしまい、残ったコインをお返しするのも忍びないからと自分が全部買い取ったというパターンです。少なくとも1枚は自発的に「欲しい」と思った記憶があるのですが、なんでさらに4枚買い増したのか……正直よくわかりません。
――当時同じ職場で働いていた方々にも連絡を取ったとのことでしたが、皆さんどういう反応でしたか。
河村:正規の手続きを経て会社に謎コインが持ち込まれたのはほぼ間違いないことだと思いますが、会社として謎コインを仕入れて社員向けに販売したのだとしたら必ず会計課に売り上げを持っていくことになるので、まず会計課の主任(当時)に連絡を取りました。しかし、主任は謎コインの存在を全く知らないということで、ほかの会計課の方々も記憶にないということでした。
そこで私の上司だった総務課長代理のお宅にご連絡したところ、奥様がコインを発見してくださいました。残念ながら課長代理はお亡くなりになっており、ほかの記念コインなどと一緒に大事に保管されていたようです。
――謎コインを購入した当時の心境について覚えていることはありますか。
河村:「今度むつ小川原に石油備蓄基地ができるらしい」というウワサは八戸でも流れていましたから、「コインのようなデザインの建物ができるんだな」と思った記憶があります。そういえば課長代理から「このコインで酒は買えないよ」と言われたのを思い出しました。
――というと、河村さんはこれが記念硬貨ではないと把握していたということでしょうか。
河村:そうです。千円と書いてあるけれども、記念硬貨ではなくあくまでも記念のものだよと、そういう風に聞いて購入していました。
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