ブタさんがブヒブヒする日常ドキュメンタリー映画「GUNDA/グンダ」が新しい形の脳トレだった(1/3 ページ)
「ミッドサマー」の監督が絶賛する理由もよくわかる。
異色のドキュメンタリー映画「GUNDA/グンダ」の上映が12月10日から始まった。本作は名だたる映画監督から絶賛を浴びている。
鮮やかなマジックによって、日常的な瞬間が神話的でまったく奇妙なものになる。
――アリ・アスター監督(「ミッドサマー」「ヘレディタリー/継承」)
この映画に言語は必要ない。荘厳で親密なポートレートを通して、存在の神秘と力を体験するよう誘う。
――アルフォンソ・キュアロン監督(「ROMA/ローマ」「ゼロ・グラビティ」)
驚くべき映像と音響。本質だけが露わになり、 どっぷりと浸かるような映像体験が待ち受ける。 映画以上の、まるで妙薬のようだ。
――ポール・トーマス・アンダーソン監督(「マグノリア」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」)
おまけに、「ジョーカー」で主演を務めた俳優ホアキン・フェニックスまでもが「もっと多くの人に見てもらいたい」と惚れ込み、エグゼクティブ・プロデューサーを勤めている。そのような傑作が、「ブタさん親子がブヒブヒしている日常を淡々と映すドキュメンタリー」だった……と言うと信じられるだろうか。本当である。
実際に鑑賞すると、掛け値なしに素晴らしい、規格外の映画体験ができる作品だった。その「GUNDA/グンダ」(タイトルは劇中の母ブタの名前)の具体的な特徴や魅力を記していこう。
ホラーかと思うほどに気が抜けない理由
本作は作品のスタイルがまずとがりまくっている。何しろ、ナレーション、字幕、音楽は一切ナシ。しかも人間の姿すら出てこない。ガチでブタさん親子(プラスで後述する通りニワトリさんとウシさん) の日常を映していくシンプルな内容である。そんな映画の何が面白いのかと疑問に思う方もいるだろう。
だが、実際は93分の上映時間中、まったく飽きることはなかった。何しろモノクロームの映像がブタも含めてとてつもなく美麗で、そこかしこから聞こえる自然音(中でも良く聞こえるのはブヒブヒ)が不思議な雰囲気を醸し出していて、時折心底ギョッとする、ホラーかと思うほどにサスペンスフルなシーンも映し出されるので気が抜けない。
例えば、子ブタたちが母ブタのお乳を巡って激しく争う様が文字通りに骨肉の争い、いやデッドオアアライブな死闘と化している。「気まぐれ」で行動しているように見える母ブタに、子ブタたちが一生懸命について行こうとしている様はけなげだ。そして、小ブタの一匹が、母ブタにあわや踏んづけられそうになり「ブヒィッ…!ブヒブヒブヒブヒッ…!」とけたたましく絶叫する恐ろしいシーンもある。
筆者個人の解釈だが、ここで母ブタは、お乳の競走争いに負けた子ブタを「劣っているから」と認識したためか、「わざと」踏みつけて殺そうとしているようにすら見える。あまりにひどいし、かわいそうなのだが、そうした1つ1つの事象から、人間の価値観では計り知れない、ブタたちだけの「物語」や「感情」、いや「世界」があったと感じて、単なる恐怖とは違う感覚に身震いさえしたのだ。
さらには、なぜか「一本足」になったニワトリや、ウシの群れが駆け出すダイナミックな画から転じて、とある「対称的な位置」にウシがそれぞれが佇む意味深な画もある。
言うまでもなく、それらの動物は「どうにもコントロールできないもの」であり、作り手が何かのディレクションをしているわけでもない。繰り返しになるが、あくまで映し出されているのは、動物それぞれの自然体の日常だ。
動物たちの日常に意味はないのかもしれないし、深淵なる意味が込められているのかもしれない。どう感じるかも、見る人次第だ。だが、やはり筆者は1つ1つのシーンに「これはこういう意味なのか?」「ここでこう考えているのかもしれない」と熟考し、それこそが面白かった。動物たちの日常を見ているだけなのに、彼らの物語や感情を能動的に想像していくので、脳をフル稼働しているような感覚も得た。その意味で、「GUNDA/グンダ」は新しい形の脳トレだともいえる。
構想30年、しかし撮影時間は7時間
ヴィクトル・コサコフスキー監督は「彼ら(動物)を見下したり、擬人化したりすることはしない」「感傷的に表現するのは避ける」「ヴィーガンのプロパガンダにならないようにする」という信念をもって本作に取り組んだそうだ(ちなみにエグゼクティブ・プロデューサーのホアキン・フェニックスは徹底的なヴィーガンとして有名である)。
関連記事
- かなわぬ「夢」に価値はないのか? 「映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ」レビュー
「魔法では解決しない」「多様な夢の過程を肯定する」物語だった - 「キアヌ投げ飛ばした」「火だるまは得意」などパワーワード連発のドキュメンタリー 女性スタントの活躍描く映画「スタントウーマン」レビュー
公開中のドキュメンタリー映画「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」はパワーワード連発だった。 - 映画館の新しいコロナ対策、パーテーション付きシートが快適だった! イオンシネマの新座席を体験リポート
イオンシネマの一部で設置されている「アップグレードシート」をリポート。 - “外見至上主義”に切り込むトラウマ級サイコホラー アニメ映画「整形水」レビュー
「因果応報」のレベルが半端じゃなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
-
「口座や住居が……」 坂口杏里、SNSで“重要個人情報を垂れ流し” 「かなりまずい状態」「大丈夫じゃなさそう」心配の声
-
部屋中に“まさかの原因”で「虫が大量発生」 松井珠理奈「寝るのも怖い」と自宅で大パニック ファンから対処法募る
-
「価格崩壊ヤバい」 セカストで2150円で買った“破格の掘り出し物”に「やっす……」「こういう事あるんすね」
-
ニトリの“3990円デスク”が在宅ワークにぴったり 収納力抜群のコンパクト仕様に「サスガ、お値段以上」
-
「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
-
「どういう神経してるの」 有名音楽評論家、過去の“万引き”を告白…… 「盗んだレコードで評論とは」批判殺到
-
大谷翔平、“仲間たちとのショット”に反響 幸せそうな表情に「これはすごい!」 妻・真美子さんとの“家族ショット”も
-
ホロライブ・天音かなた、実母が“警察が動く犯罪に巻き込まれていた”ことを明かし視聴者騒然 「泣きながら電話かかってきた」
-
辻希美の高2長女・希空のデビューについて杉浦太陽が語り涙…… 赤ちゃん時代の姿や秘蔵エピソード明かす「そういう世界に入る気ない、と言われていた」
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
- 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
- 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
- パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
- アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
- 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
- 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
- PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」